上尾を歩く・ぐるり旅/北上尾駅から丸山公園へ


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上尾を歩く・ぐるり旅
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■1)北上尾駅から丸山公園へ

その時は不思議に思わなかったが、ぐるっとくんバスに乗車した時です。
一段高くなっている後部座席に同じ服を着た子供が二人で座っています。
日曜日だから、お出かけ用のお揃い服を着ているのだろう。と思います。
「こんにちは、また会えたね。」と声をかけると
「うん、今日は一緒に歩くよ。」変なことを言う子達だ。
「上尾市内の一周が終わるまで付いてゆきたいんだけどいいでしょう。」
「学校はどうするの、お家の方が心配するでしょう。」
「大丈夫だよ。日曜日だし、僕たちは小学生じゃあないから。」

北上尾駅でバスを降りて、ここから老夫婦と子供の四人旅が始まります。
駅前のベンチに座り
「君たちの名前を教えて。」
「僕がピトです。」「ユタです。」
「オジさんとオバさんはずーと前から知ってるよ。二人で沢山歩いているんだね。」
「そこの中山道を初めて歩いてたんだ。君たちは昔の人が造った五街道を知っているかな。」

「江戸幕府によって代表的な街道を整備して、江戸と京都の間をつなぐ東海道と中山道で、
そのほかに新宿から諏訪で中山道と合流する甲州街道だよ。
日光街道は徳川家康の墓参りとして使われた日光街道と、途中の宇都宮から分かれて青森に向かう
奥州街道で、街道の起点は全て日本橋で今でも道路の基準点だよ。
その多くは参勤交代に使われ、松並木が植えられ、旅の基準になる一里塚が整備されたんだ。
街道があったのでそれを利用して鉄道が走り、国道が整備され、自動車の時代になったんだ。
だけど所々に昔のままの街道が残ったり、宿場の名残があるよ。
昔は歩くのが当たり前だったので道は綺麗に整備されてワラジで歩けたので、今よりも早足で旅を
したかもしれないね。日陰や風を防ぐ松並木もあったり、一里塚の近くには茶店があって一休み
できたし、街道近くの農家では旅人相手に簡易トイレを用意して排泄物を利用してたよ。
宿場は1日で歩ける10里(40km)ごとにあって、途中にも相の宿もあって便利だったね。」

「街道歩きの前に四国巡礼をしたり、全部を合わせると2100kmにもなるんだ。」
ピトちゃんが「へー。上尾の周りが大体60kmだから35回も歩いたのと同じですか。」
「そうだよ。奥州街道は遠いのでまだ全部行ってないんだけど、もうすぐ青森で終わるんだ。」
「歩くと自動車や電車と違ってゆっくり見られるし、美味しいもの食べられるよ。」
「へえー。」
ユタちゃんから「じゃあさ、街道ならお城とか遺跡を見学するの。」
「全然みたことないね。ただ歩くだけの旅だから立ち寄りすると時間が勿体無いからね。
 大名が旅の途中で休んだ本陣跡を見るときぐらいかな。」

「さあ、今日は丸山公園まで行くけど、君たちも付いて来るの。」
ピトちゃんは「上尾市内を巡る人を待っていたんだ。いつもは駅や病院に行く人でつまんないよ。」
「ぐるっとくんバスを利用する人で、市の境目を歩いて回る人は全然いないよ。」

北上尾駅から高崎線に沿った道を桶川駅方向に向かうと問題の踏切です。
ここから左に見える富士山は道路いっぱいに広がって大きく見えます。
富士山を追いかけて進むとなぜか富士山はだんだん小さくなる不思議な道です。

踏切は引っ切り無しに来る車で向かい側に渡ることができません。踏切手前の一時停止で
左右の車が揃って止まる隙を見て急いで渡るか、踏み切りが閉まるのを待つしかありません。
電車行ったばかりなのでなかなか渡れません。
「しばらく待ちましょう。」
ユタちゃんが通過する車を見ています。
踏切の手前で止まらないで勢いよく渡る車もいます。交通違反ですよ。

ピトちゃんが話してくれました。
踏切を渡った車がすぐに止まって、その後ろの車が踏切内で出られなくなった時の話しです。

「降りてきた遮断棒に驚いてブレーキを踏んで車を止めて、慌てて隣に乗っているおばあさんに、
『すぐにあの棒を持ち上げてくれ。』と命令しました。
しぶしぶ車を降りて、棒を持ち上げようとしましたが動きません。
窓を開けて『早くしろ。』と叫んでいました。
次の瞬間、激しい警笛と急ブレーキの音が近づいてきたのです。
電車は数メートル手前で急停車して事故にはならなかったけど危なかったとか。」

「おじさんは踏切の遮断棒は、車で棒を押すと開くって知っている。」
「知らないよ。高齢者の運転講習にそんな話は出なかったと思うよ。そんなことしたら車が傷つく
のでやりたくないなあ。」
ユタちゃんが「じゃあさ、オジさんは命より車が大事なの。」
「命だよ。でも慌てるだろうからで電車が近づいてから車から逃げ出すはずだね。」

踏切が閉まりやっと渡ることができました。
境目の道路は(ブリジストンサイクル)の工場脇の道です。
ここからは住宅地の狭い道路で境目がはっきりしなくなりました。
ユタちゃんが「僕たちよく知っているから案内しようか。」
と言ってくれましたが境目が隣との垣根だったりするので、境目を探しての歩きでないことを
ピトちゃんとユタちゃんに言って、境目らしい道を見つけて進みました。

大きな道路に出る狭い坂道です。
車が通る大きな道路を右にゆくと桶川駅になります。
左の道は桶川市との境目になる県道(さいたま鴻巣線)です。
地図を見ると井戸木の地蔵公園が近くにあって、鴨川の水源もあるようだけど見えません。
ピトちゃんが「ちょっと待っててね。僕たちで見てくるから。」
ピトちゃんとユタちゃんが向かい合って手を繋ぐと二人はスーと浮き上がって南の方に飛んで
行って、すぐに戻ってきました。
ピトちゃんが教えてくれました。
「この道の下に川が流れていて、少し行くと外に出てます。」
「そこの出口に時計と大きなカブトムシのお尻から水が出ているよ。それを両側のカモが
眺めているんだ。」するとユタちゃんが「かぶと橋だって。」
「この旅が終わってから見に行くとわかるから。」
ピトちゃんは「鴨川は荒川に合流するらしいけど、僕たちは見たことないんだ。」
「鴨川だから鴨はいるのかな。」と聞くと
「鴨は居るよ。大きな鯉とかカメも。草がいっぱい生えていて見えないかもしれないや。」
ユタちゃんが
「この先で上尾市とさいたま市の境目に鴨川が流れていて、そこを歩くときに見られるよ。」

左に曲がってまっすぐな道を進みました。
左側が畑で柵があり、幅の狭いドブの蓋が歩道です。4人は一直線になって進みます。
道の右が桶川市で左が上尾市になります。
コンビニがあって一休みします。
ピトちゃんとユタちゃんはコンビニに入らないで外で遊んでいます。
「あの子たちは妖精かな。空を飛べたよな。わからない道を探してくれるかな。」
「歩き旅についてくるって言ったけど、楽しい旅になるかもね。」

歩き出しました。
道が下り坂になり消防署です。川があります。その川が市の境です。
この川は(江川用排水路)で流れによって削った場所が藤波団地の6mほどの崖になっています。
川に沿った道が見つかりません。
橋を渡り桶川市側も道はありません。
困っているとピトちゃんが「僕たちで見つけるから待っていて。」
ユタちゃんと向かい合わせて両手を繋ぐと、また二人は浮き上がりました。
上空から糸で吊るように電柱の高さまで登っていきました。
上から声がします。
「川の流れで丘が削られた崖になっていて、その下に道があるけど葉っぱで隠れてます。」
「時々車が通っているみたいです。団地前の右に下る道を行くと出られるよ。」
ピトちゃんとユタちゃんはいつの間にか地上に戻ってきます。

住宅の塀に沿って坂を下ります。
右側は草が茂り川になります、左側は住宅に登る階段があり、道路に面した家は
崖を利用して一階部分は駐車スペースでその上が住居になっているようです。
太い竹が茂った場所もあります。

十字路に出ました。
ピトちゃんが教えてくれました。
「左の坂道を登れば道路になって歩きやすくなるけど市の境からは外れてしまうよ。」
ユタちゃんは
「まっすぐにゆく道があるけど途中で通れないし、その先にオオタカがいる所もあるんだ。
自然が残る大事な場所で新しくできた上尾自動車道路は特別に橋をかけてるよ。」

市の境から離れて榎本牧場へ向かうことにしました。
「そこの橋を渡ると桶川市になるけど、君たちはついてきてくれるの。」
ピトちゃんとユタちゃんははちょっと困ったようです。
「上尾市を越すと僕たちは消えるけど、上尾市に入るとすぐに会えるから、またねえ。」
橋を渡るとそばにいた二人の姿は消えてしまいました。

川沿いに道がありましたが草が茂り、その先はコンクリート工場で行き止まりのようです。
時々車が来る交差点です。左に入るとわずかな上り坂で南に向かいました。上尾道路を超えて
熊野神社の森です。
道は荒川に近くで、畑があり遠くまで見渡せて高原を歩いているようです。
ピトちゃんとユタちゃんが手を振る姿がありました。
「さっき、上から見たら荒川に煽った細い道があるけどもう暗くなるし、雨が降って
きたので狭い道でなくここの道を行って(榎本牧場)に行こうよ。」
「あそこなら休めるし、牧場ジェラートがたべられるよ。」とピトちゃんが嬉しそうに話します。

榎本牧場の閉園の5時はすぐです。日曜日だから間に合うかも。
と急いだが小雨交じりの天気で誰もいなくなり、片付けも終わったようです。
子供達が「子豚を見よう。」ブヒブヒ啼く子豚を見ています。
雨に濡れたベンチに腰掛け休みです。
丸山公園のバス停まで1キロ程度だからすぐに着くからとゆっくり休みます。
休みすぎたのか体が冷えて、道標が示す道を急ぎ足で進みます。

「遠くに灯籠が点いているのが見える。あそこに大カヤがある東高野山徳星寺で弘法大師さん
が開創したお寺なのに真言宗でないよ。」と得意そうにユタちゃんが説明してくれます。

垣根に守られた住宅地で、林の中を歩いているようです。
荒川の土手です。
「この坂道を下ると公園に出られるよ。」トピちゃんとユタちゃんが駆け足で下って行きます。
暗くなり始めた。公園を横切れるか心配になった。もしダメだと遠回りすることになる。
坂の途中に照明がついているトイレがあった。そこに警備員姿のおじさんが来ました。
おじさんに尋ねると「橋を渡ると駐車場に出られます。鍵はないから通れますよ。」

橋のたもとで待っていたユタちゃんが突然早口で
「ここは心霊スポットで有名だから早く公園を出た方がいいよ。」
「幽霊が出るとか?」
「ブランコに乗った子供を見たとか、上半身だけの幽霊が出たとか。目撃情報は沢山あるよ。」
「自殺が多くあった所で霊が彷徨っているとか、中学生がマラソン途中で公園に入り口近く
で亡くなったのは本当の話だよ。」とユタちゃんが怖そうな顔をしている。
カッパも住めない池は汚いし、臭くてこんな池が公園にあると人気がなくなるようで、
池の水を入れ替える工事をするらしいです。
「テレビで(池の水を全部抜く大作戦)があるけどあそこに頼んでやれないのかなあ。」
30年以上も経っていて汚泥が積もっていてカイボリをして綺麗に蘇らせてほしいです。

ピトちゃんが突然に「上尾には心霊スポットが他にもあるよ。」
「中学校の体育館で扉をあけるとすぐにコンクリートの壁で塞がれていて、そこに何か
埋めているらしいよ。それとあそこの先生が飛び降り自殺したよ。」
「北上尾駅の近くに、自転車と人だけが通れる小さな踏切があって、近くに神社とお墓がある所で
数人死んでいて無縁仏の墓があるよ。」

幽霊に出会う前に急いで公園から離れたいが、(公園南口)のバスはもう来ない時間です。
「最終バスに間に合わないよ。」とユタちゃんが教えてくれた。
すかさずピトちゃんが「大丈夫だよ、丸山公園の近くにバス停が沢山あるから、
乗り遅れても心配ないよ。」
「ほらバスはもうないだろ。」「この先に(丸山公園入口)のバス停があるからそこならあるよ。」
また二人は駆け足だ。
二人を追いかけて登り道を行くと信号のある交差点に出ると二つのバス停が近くにあった。
30分待てば上尾駅行きのぐるっとくんバスとその後に東武バスがある。辺りは暗くなって来ました。

ユタちゃんが「ぐるっとくんバスだと駅まで40分で東武バスなら20分で行けるよ。」
ピトちゃんから「ここでお別れだけど、東武バスで駅まで行って、そこから桶川駅まで
電車でゆくとけんちゃんバスが待っているから帰れるよ。」

「今度はここのバス停で僕たち待ってます。」とユタちゃん
「今日は君たちを一緒で楽しかったよ。またお会いしましょう。」

「僕たちはぐるっとくんバスで帰るからね。それと咳が出る風邪をひくから気をつけてね。」
一足先に来た(ぐるっとくんバス)に二人は乗車しただろうか。
東武バスは3分後に来た。今日は不思議な子供達と一緒に13kmを三時間で歩いたようだ。

その後、ユタちゃんの予言は的中、熱は出なかったが、胃袋が飛び出るような咳が何日も続いた。
二人ともだ。
雨に濡れて歩いたためか。もしかすると丸山公園で地縛霊に取り憑かれたためなのかな。

(次は丸山公園から西貝塚を経由して花の丘公園へ)

1)北上尾駅から丸山公園へ・・・・・・・・・・・https://writening.net/page?PPXeJS
2)丸山公園から西貝塚を経由して花の丘公園へ・・https://writening.net/page?W4w6gk
3)花の丘公園から原市駅を経由して沼南駅へ・・・https://writening.net/page?cjS2dV
4)沼南駅から北上尾駅で旅は終わり・・・・・・・https://writening.net/page?XNrr25
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●● 五街道を歩く・・・https://aruko-kaido.jimdofree.com/ ●●
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