「まさか俺が艦長に……」~覚醒!シン・アスカ編(艦長適正的な意味で)~


※映画~5年後コンパス組織がどうなってるかわかんないので根拠ゼロの妄想で書いてます
※ていうかほぼ全編妄想だから細かいとこは許して欲しい
※シンルナは婚姻統制クリアーしてるか愛の力で押し通したかはご想像にお任せします

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 5ヶ月前
 コンパス本部
 会議室

「ええええっ!?」

 この日、総裁とマリュー、キラが立ち会いの下、シンの即席指揮官講習の合間にスクルドの部署長の最終決定が下されることになっていた。その冒頭、スクルド副長、つまりシンの補佐役に選ばれた人物が、椅子から転げ落ちるのではないかというほどに仰け反り、驚き、声を上げた。

「わ、私がスクルドの副長ぉっ!?」
「不満か? トライン少佐」
「は、はいぃぃっ?! ああっ、いいえっ!」

 カナーバ総裁が首を傾げたのを見て、アーサー・トライン少佐は悲鳴に近い驚きの声を上げた。同席していたシン、マリューはコンパスに着任してから最大のリアクションだったのではないかと後に語っている。

 なお、コンパス総裁の任をラクスから引き継いだことになっているアイリーン・カナーバ元議長だが、5年前に行なわれたこの人事はかなり難航し、一時はコノエとマリューが艦長職と兼任して対外折衝を行なうことまで考案された。

 ファウンデーション事変直後、ラクスが死亡扱いで隠棲したことから、表向きの代表として誰かを据えねばならず、ユニウス条約締結当時、国務副長官として事務方として接点があった大西洋連邦大統領のフォスターがカナーバ元議長ならばと言い、オーブのアスハ代表、プラントのワルター・ド・ラメント最高評議会議長の同意を経て実現した。

 それはともかく、驚いて口をあんぐりと開いたアーサーに、シンは真剣な目を向けた。

「副長に頼みたいんです」
「えっ……シン、それはホントに? 僕なんかでいいの?」
「はい!」

 確かにリアクションは無駄に大きいし、空気を読まない部分も時折あるとはいえ、アーサーはシンがミネルバ時代から知る士官であり、人間的にも、また副長としての能力も足りていないと想ったことはない。ミレニアム副長になってからも同様だ。

 ミネルバ時代から自分のような跳ねっ返りの若者に対しても、またアスランや戦死してしまったハイネのような外部から来た人間にも分け隔てなく接してきた。グラディス艦長からの評価も徐々に上がって、シンがミネルバを守り切れなかったとはいえ、ミネルバからの退艦指示は適切だったと聞いている。

 なにより、自分とルナマリアがコンパスへの参加を決めてすぐに付いてきてくれた――彼なりに平和への戦いなどは考えがあったのだ――ことも、シンの評価を上げるポイントだった。

「~~~~~っ! わかりました! 不肖アーサー・トライン少佐、喜んでスクルド副長の任、承ります! 至らない点があればご指導ください、艦長!!」

 指導して欲しいのはこっちなんだけどなあ、などとシンは苦笑した。
 感涙にむせび泣くといったアーサーが退室した後、今度は航海長、つまり主操舵士が呼ばれた。これはマリューの推薦だった。

「アーノルド・ノイマン大尉。どうか?」
「はっ。喜んでお引き受けいたします、総裁」

 総裁に問われたノイマンは、背筋を伸ばして答えた。

「ノイマン君はアークエンジェルの操舵士として、また我々のチームでミレニアムを動かす際も申し分のない働きをしてくれました。彼なら、あのじゃじゃ馬を御せるのではないかと」
「ノイマンさんなら、シンともうまくやれますよ。今までアークエンジェルやミレニアムをうまく動かしてもらって、皆を守って来られたのはノイマンさんのおかげでもありますし」
「ラミアス艦長……キラ君……ああいえ、准将! ご期待に添え得るよう、努力します」
「ノイマンさんがこれ以上努力したら、太陽系の外まで飛んでいっちゃいそうですね、スクルド」

 マリューとキラの柔らかな笑みを向けられて、ノイマンは若干涙ぐんでいたようにシンには見えた。

 シンはノイマンとそこまで親しく話したことはないが、あのアークエンジェルの異様な打たれ強さは、常にマリューの指揮に追随し、あるときは独断でも舵を切って致命傷を回避し続けた彼の存在が大きい。実際ファウンデーション事変以来、ミレニアムの操舵をしていても幾度も艦の危機を回避し続けていた。

 ミレニアムのデータが反映されたスクルドを動かすのに、彼は打って付けの人材、そして新米艦長に足りない経験を補うところを期待されていた。

「ノイマン大尉、よろしくお願いします」
「こちらこそ」

 さらに続いたのは整備班長の人事だ。士官ではなく下士官が統率し、艦内で一番人数が多い整備班を束ねるのは並の下士官では務まらない。それも出撃回数の多いコンパス所属艦で、ナチュラルもコーディネイターもまとめて雇用されるし、さらに言えば新型機――という名の試作機払い下げ――が回されるのだから、知識も豊富で無ければならない。これもマリューの推薦で、旧アークエンジェルでも整備班長を務めたコジロー・マードック曹長が選ばれた。

「いやあ、こっちの坊主が大佐で、坊主が准将。歳は取りたくねえもんだなあ」

 一応総裁の前に出るということで年に何度着るか分からない制服を引っ張り出してきた無精髭面に笑みを浮かべたマードック。技術一筋の彼だけに、階級差を気にしない姿は慣れない人間からは横柄に見えるかもしれないが、シンにとってはその方が何だか気が楽だった。顎に手を当て、値踏みするようにシンを見て、何かを思い出すようにキラも見ている。

「マードック曹長?」

 マリューがやんわり諫めると、着慣れない軍服姿の曹長は後ろ頭を照れ隠しのようにガシガシと掻いていた。

「おっと、こりゃ失礼。まさかあのアスカ大佐の下に付くたぁ思いませんでしたねえ。ラミアス艦長に頼まれちゃあ断るわけにもいかねえ。頼むぞ、坊主」
「坊主、はやめてください、曹長」

 この年になっても坊主呼ばわりは流石に恥ずかしい、とシンは抗議したが、百戦錬磨の下士官にはカワイイ抵抗だと思われただろう、とシンは感じていた。

「ははは! ま、よろしく頼むぜ、艦長さん!」

 バンッ、と背中を叩かれて、シンは若干咳き込んだ。

 さらに、搭載MS隊だが、とりあえず先行して2小隊の配備となったが、これは内示済み。ヒルダ・ハーケン中佐とルナマリア・ホーク少佐の部隊だ。これはコノエ艦長の提案で、やはりシンと長年戦ってきた間柄だということを重視した。

 またマリューも、コンパスという拘束時間が異様に長い職場という点を鑑み、ルナマリアと時間を作れるようにという点でもこの提案に賛成だった。

「まさかあの坊やが艦長とはねえ」

 眼帯をしたベテラン、MSパイロットとしてはミレニアム側のムウ・ラ・フラガ大佐に次ぐ階級。ややドスの効いた声で、シンを茶化すように笑う。

「ハーケン中佐……大佐ですよ、シンは」
「嫁さんは名前で呼んでも良いのかい?」
「あっ、いやその……」

 肘でヒルダを小突いたルナマリアだが、逆にヒルダに突っ込まれて回答に窮していた。困り顔のルナもかわいいななどとシンは眺めていた。

 ミレニアム隊の海賊的雰囲気を醸成するのは主にマリューの戦闘スタイルもさることながら、MS隊においてはヒルダ・ハーケン中佐の善し悪しあれこういう堂々とした態度が大きく作用しているのだろう……と、カナーバ総裁は苦笑した。

「まあいい。アスカ艦長、嫁さんガッカリさせるような指示出したら、アタシが寝取っちまうぞ」
「ハーケン中佐!」

 ヒルダがルナマリアの肩を抱いてキスするフリ――本当にフリなのか見ていたマリューは甚だ不安だったが――をしたところで、ガタッと椅子を倒すのではという勢いでシンが立ち上がり、ルナマリアを強引に、奪い取るように抱きしめた。

「ルナを取らないでくださいヒルダさん!」

 この日一番の大声を出したシンが、真剣な目をルナマリアに向けた。

「ルナ! 絶対俺、期待に応えてみせるから! ルナをガッカリなんかさせない!」
「ちょっとシン! 総裁とラミアス艦長見てる!」
「あっ……」
 
 顔を真っ赤にしたルナマリアに言われて、シンがルナマリアから離れて席に戻る。
 呆気にとられる総裁と、クスクスと笑うマリューを見て改めてシンは白皙の顔を赤らめた。

「まあ、あとの人事はトライン副長あたりに任せてもいいのではないかしら? コノエ艦長からは旧ミネルバクルーの適性を見て多めに移籍させればいいという話だったけど」

 マリューの提案に、シンは驚いた。

「いいんですか?」
「ミレニアムなら旧AAクルーでも十分動かせるわ。私が居ない間は、コノエ艦長が指揮して任務を行ないつつ、新人教育も並行して行なうそうよ」
「わかりました。アーs……副長と相談しておきます」
「では、これで決まりだな。ヤマト准将はなにか」
「ありません。頑張ってね、シン」

 カナーバ総裁とキラの笑みでもって、会議は終了となった。

 そしてここからが、いよいよ艦長シン・アスカの訓練の始まりでもあった。



 強襲機動揚陸艦スクルド
 ブリッジ

「えーと、右に舵を切るのが折り舵で、左が、共舵?」

 一通りの指揮官講習――二度の大戦時の大増員時に作成された超圧縮教育だが――を受けたシンだったが、まず、そもそも艦艇指揮の経験がズブの素人であることから、基本的な動作を見てもらうこととなった。アスランやルナマリアから事前にシンの傾向を聞いていたマリューが、実地で覚えさせる方が早いと考えたからだ。

「シン君? 面舵が右、左は取り舵ね……」

 産休前になんとかシンをものにしておきたかったマリューだったが、さすがに大丈夫なのだろうか、とオブザーバー席に座ってトンチンカンなことを言っているシンを見て、不安を覚えた。

「シン、大丈夫か? オハシを持つ方が左手でオチャワンを持つのが右手だぞ?」
「いや逆でしょそれ。俺右利きだよアーサー」
「え? オーブ式のテーブルマナーは僕にもよくわからないなあ」

(本当に大丈夫かしら?)

 今更ながら艦長シン、副長アーサーという若干間の抜けた空気感を持つコンビで大丈夫なのか、と不安を覚えたマリューは、初日の航行演習をヒヤヒヤしつつ見守った。

 が、そこは反復練習の鬼シン・アスカ。実際にマリューが教官としてノイマン、アーサーらに指示して行なう技法をあれよあれよという間に吸収していく。通常運航に必要な最低限の勘所を得るのに一週間、基本的な戦闘指揮なら三日と掛からない吸収力に、マリューはかつての自分よりも優秀なのでは? と驚いていた。

 そもそもインパルスなどというGATシリーズの開発担当チームにいたマリューですら驚くほど複雑なシステムを運用し、戦場に合わせてシルエット射出をしていたことから見て、マリューが思っていた以上に視野が広いのがシンの特徴だ。

 一ヶ月と経たずに、プラント-地球間の航海ならシンに指揮を委ねても問題ないとマリューは判断するほどだった。これは彼がコーディネイターだからというより、天性の吸収力の高さだ。

 ともかく、短距離の航海演習に加えてマリューらが内容を厳選し、キラとハインラインが実装したシミュレーションプログラムによる戦闘訓練を行ないはじめると、さらにその傾向は強まっていく。


 一ヶ月前

「ミサイル接近、距離1200、数12」
「迎撃! CIWS、ディスパール撃てっ!」
「水中からミサイル6! 敵MSです!」
「迎撃! フレア散布! 転進、取り舵20!」

 この日の演習プログラムはいわば卒業試験。かつてアークエンジェルが体験した戦闘でも特に絶望的だったアラスカ基地防衛戦を模したものだった。湾奥部にある都市――本来ならここはアラスカ基地があった――の都市からの撤退作戦だ。これは万が一都市を守り切れず、撤退する場合のケースを想定している。敵は都市制圧を目的に侵攻しており、自艦一隻に対して敵艦隊が半包囲して距離を詰めてくるというシチュエーション。

 オマケに今回は上空援護機はなし。マリューが体験した戦闘でも特に絶望的な戦況だったアラスカ戦をさらに難易度を上げている。単艦行動を強いられるコンパスの都合上、万が一MSが艦から引き離されていても戦場を切り抜けるくらいの能力を求めるのは異様とも思えた。

 しかし、マリューは自身の経験を信じることにした。少なくとも、現状当時のAAよりも持ちこたえているといっていい。スクルドの性能はもちろん、集めたクルーもミレニアムで鍛えられていた。

「艦長、このままだと敵の包囲に突っ込みますが」

 操舵を担当するノイマンが注意を促したが、シンの指示はマリューを驚嘆させた。

「敵中央を突破して離脱する! アーサー、全火力を前方に集中! 最大戦速、ノイマン大尉回避任せます!」
「……! 了解、艦長!」
「ええっ!? 艦長!?」
「大丈夫! こっちのほうが追撃を受けないはずだ! トリスタン照準手前のやつから順次! 近いやつから叩き潰していく! ミサイルで牽制!」
「は、はいぃ! トリスタン、照準敵潜水母艦。ランチャー3、5、7、パルジファル装填、敵洋上艦を狙え!」

(なんだか昔を思い出す……いやあんまり思い出したくはないのだけれど)

 荒削りだがシンの戦法はある意味理に適っている。今回の勝利条件は艦の損害を抑えつつ包囲網を突破して目標海域に到達するというものだった。

「あいつらは都市制圧が目的だ。両翼はもう都市についてるからこっちに引き返して来られない。正面が敵の旗艦を含む部隊なら、敵が混乱して追って来れなくできる!」

 一番戦力が集中している場所、司令艦を沈めるなり損傷させれば、敵は大混乱に陥る。両翼の部隊も都市制圧を優先するか、それとも中央部の援護に行くか迷いが出る。スクルドならば追撃を振り切ることも出来るだろう。

 シンは細かい回避はノイマンに任せ、自分は攻撃指示に専念することにしていた。ノイマンというコンパス、いやC.Eでも比類のない操舵士の扱い方を彼はすでに理解していた。

「水中から接近するMS!」
「艦長!」
「右ロール角40!トリスタンの射線確保でき次第撃つ!」
「りょ、了解!」
「ロール角40!」
「トリスタン、てえっ!」
「敵撃破!」
「高度20まで降下、魚雷撃て!今なら投下したのがバレない!」
「了解! ウォルフラム装填。アクティブソナー追尾にセット、ランチャー1、4射出!」

 ただ、マリューはシミュレーション上で動いているスクルドの動きを見ていたが、おおよそ全長350mはあるだろう艦が、まるで戦闘機のように動き回っている。これでは中にいる人間は大変だ……と、マリューは演習後に行なう公表でシン達にその辺りを伝えるべきか、と苦笑した。

「艦長!6時方向からMS接近。あと1600で射程に」
「もう遅い! アーサー、タンホイザー発射用意。正面敵艦隊を薙ぎ払って、敵陣を突破する!」
「りょ、了解! プライマリ兵装バンクコンタクト、出力定格。タンホイザー発射軸線に敵艦隊主力を捕捉。照準誤差修正、下げ舵2度」
「下げ舵2度」
「タンホイザー、てぇっ!」

 このシミュレーションプログラムにについては、マリューらも一度テストでこなしてはいた。しかしシンが叩き出した評価は最高ランクのSSS。このシミュレーション完了をもって、シンは晴れてマリュー・ラミアスの一番弟子として認められることとなる。


 某月某日
 コンパス本部
 総裁執務室

「では、スクルドの最終決定版の運用スタッフの編成を聞かせてもらえるか? ラミアス"教官"」
「はい。艦長シン・アスカ大佐、副長にアーサー・トライン少佐、航海長主操舵士、アーノルド・ノイマン大尉、副操舵士マーカス・マクダネル少尉、MS管制官アビー・ウィンザー中尉、火器管制官ドロシー・プリストル少尉、通信士オリビア・ラスカル少尉、整備班長、コジロー・マードック曹長――」

 そういえばカナーバ総裁ってオーブのアスハ代表と声が似てるななどと教官役のマリューの横で気をつけのまま立っているシンはぼんやりと考えていた。

「――艦長? シン・アスカ艦長?」

 カナーバ総裁の声にハッとして、シンは背筋を伸ばして敬礼した。この辺りは大尉の頃から変わっていない。

「は、はいっ!」
「MS隊についてはホーク少佐の隊、ハーケン中佐の隊はいいとして……本当に良いのか? ギーベンラート中尉を大尉に昇進させて小隊長に、とのことだが」

 カナーバ総裁も先のファウンデーション事変のなかで、アグネス・ギーベンラートが一時的にファウンデーション側に離反し、ルナマリアのインパルスと交戦したことは報告を聞いていた。ただ、キラのライジングフリーダムへの攻撃はクライン前総裁によるヤマト機制止命令後のことであり、またレクイエム破壊作戦時の行動はインパルスと交戦し大破した以外は、他勢力の機体を撃墜したわけでもなかったので黙認され、戦闘中遭難の末、ファウンデーション側に捕虜となり後に救出というシナリオで不問とされた。

 彼女自身の申し出もあり休職していたが、半年ほどで復帰。以降はヒルダ隊にて性根をたたき直し――直しきれていない部分もあるが――現在に至る。シンはここにきて、ヒルダ・ハーケン中佐の進言を反映して、復職後の勤務態度から大尉に昇進させた上でスクルドの三つめの小隊を任せることにした。

「アg、ギーベンラート中尉は操縦技術も申し分ありません。あいt、彼女もそろそろ指揮官として部隊を持つべきと考えました」

 所々まだまだ一兵士感覚が抜けきらないあたりがシンらしい、とマリューは表情には出さないまでも微笑ましく見ていた。

「大佐がそう言うならば、私に異論はない。スクルド、君ならばうまく使いこなしてくれるだろう。アーモリーワンの造船官達もスクルドの運用データを心待ちにしている。活躍を祈る」
「はっ!」

 カナーバ総裁に言われ、シンは敬礼をして退室した。

「ラミアス艦長、よく短期間で彼を仕上げてくれた。礼を言うぞ。今、何ヶ月だ?」
「丁度5ヶ月になります」

 シンがスクルド艦長を拝命した時点で、すでにマリューの妊娠は判明していた。コノエは母体の安全を鑑みて産休を薦めたが、そうするとシンの指導をする者がいない。少なくともザフトの教官ではシンとスクルドの特性を生かせないとマリューが判断し、念の為にカナーバ総裁の計らいで医務室に産婦人科医まで乗せての訓練だった。

「そうか……無理を頼んですまなかった。母子共々、ゆっくり休んでくれ」

 カナーバが深々と頭を下げる。シンの大佐昇進からまだ5ヶ月。しかし母体にとって5ヶ月の時間は長く、すでにマリューの下腹部は膨らみはじめていたので、マリュー自身も周囲も緊張を強いるものだった。

「まあ、いい胎教になったかと」
「さすが、聞きしに勝る大天使の艦長だった方はお強い」

 カナーバが呆れたような笑みを浮かべたのを見て、マリューも笑みを浮かべて敬礼してその場を辞した。
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