「まさか俺が艦長に……」~ハロ・出現~


※映画~5年後コンパス組織がどうなってるかわかんないので根拠ゼロの妄想で書いてます
※ていうかほぼ全編妄想だから細かいとこは許して欲しい
※シンルナは婚姻統制クリアーしてるか愛の力で押し通したかはご想像にお任せします

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 強襲機動揚陸艦スクルド
 ブリッジ

「艦長、変わります」

 地球へ向かうスクルドのブリッジに、休息を終えたアーサーが戻ってきた。艦長席にいたシンは寝ぼけ眼を見せるわけにはいかないと頸を振ってからアーサーに振り向いた。

 通常航行時、ブリッジは靜かだ。操舵も正操舵士のノイマン大尉、副操舵士のマグダネル少尉が交代で務め、穴が開いた部分は基本的に副長が舵を取る。

 とはいえ、それも長いことではない。巡航速度で二日、最大戦闘速度で突っ走れば、プラントから地球など一日と掛からない。道中演習などに費やしているから、今回オーブまでは二日半の航程だ。

「ああ、そうだった…じゃ、頼んだよ副長」
「艦長……分かってると思いますが――」
「分かってるよ、ちゃんと休むって」

 シンがふわりと艦長席を離れて出て行くのを、アーサーは不安げに見送った。

「どうしました? 副長」
「ああ、いや、なんでもないよ、なんでも」

 なんでもあるんだけどなあ、とも思うが、マグダネル少尉を不安にするわけにも行かないと、アーサーはそのまま副長席に収まった。


 艦長室

「……あ、そういえばそろそろ荷解きしないとな」

 部屋の片隅、元々ベッドが置かれていた部分に山積みされたコンテナ類は、シンの私物だ。一番上のものを開くと、衣料品の類いが出てくる。

 書籍、替えの軍服、ザフトの制服、そのほかいろいろと取り出して定められた箇所に収納して、最後のコンテナを開くと――

〈シン!ネロ!ヤスメ!〉
〈ウチーカータハジメー!〉
〈マモリタイセカイガアルンダッ!〉
〈ヌオオオオオオッ!〉

「わあっ!?」

 コンテナから飛び出してきたのは、キラやアスランが制作したペットロボット、通称ハロだ。丸い身体に開閉する翼のような構造、転がったり跳ねたりしながら移動し、甲高い鳴き声――どこかで聞き覚えがある――を発するのだが、艦長就任祝いと称して、キラとアスランから送られていたものだ。なんでもシンの健康管理機能があるという触れ込みだったが――

「スイッチ入れてないのに、勝手に動くのか……」

 さらに、コンテナの中からガサゴソと音がする。緩衝材をのけると、中から3体のロボットが飛び立った。

「わっ、わあっ!」

 トリィの姉妹機だ。最初はアスランがキラに頼まれて制作したマイクロユニットらしいが、ラクスにも同型で改良型?とされるブルーと呼ばれるものが、キラが作成して渡しているという。

 それを、シンは3体も受け取ってしまった。

 シンははじめ、1体送ると言い出したキラに丁重に断りを入れた。シンが見聞きした限り、自分がそんなもの――アスランとキラ、キラとラクスの間柄だからこそプレゼントされた者で、自分がそこに加わるのは申し訳がないと考えたからだ。

 しかしキラは

『シンは僕と一緒に歩いてくれるって、そう誓ってくれた、大事な人だから……!』

 といい、アスランは

『大人しく受け取れ』

 といい、ハロ達と共にキラとアスラン合作で一体が送られることになった。

 しかし、ここからがあの二人の真骨頂、というか子供っぽい部分と言おうか、ともかくキラは、自分で送ると言い出したのだから自分で一体、アスランはアスランで『俺の方がトリィを上手く作れる』などと張り合いだし、結果として数が増えた。

「いいのかなあ……これ、部屋の中だけにしとく……あれ?」

 パシュ、とドアが開いた音がした。コロコロと転がりながらハロ達が部屋を出て行く。

「わっ、マズいっ!?」

 シンは慌てて立ち上がるが、その瞬間、トリィ達も部屋をすい、と飛んで出て行ってしまう。

「ああもう! 言わんこっちゃ無い」

 艦長が休息時間にオモチャのロボットで遊んで、艦内を飛び回って回収なんてことがしれたらいい笑いものだ。

 シンは床を蹴って、ハロ達を追いかけた。


 融合炉室前

「はぁ……はぁ……やっと捕まえたぞ、この……!」
〈ミトメタクナイモノダナ……〉
〈パーペキッ!パーペキッ!〉

 何事か文句でも付けているのかハロ達が鳴いているが、シンはとりあえずそれらを抱え上げる。ようやく回収し終えたのは、艦の動力源である融合炉室前だった。

「新型炉心がどうとか言ってたなあ、ハインライン大尉」

 正直、シンには技術面の話はさっぱり分からない。MSのOSにしてもキラとハインラインのレクチャーを受けても半分も理解しきれなかった。シンとしては整備士を信頼して、専門職に任せる方が遙かに安心出来るというものだった。

 
 レクルーム

「あれ? これって――」

 乗組員憩いの場であるレクルームにいたルナマリアは、どこからともなく入ってきた鳥形ロボットに目がとまった。ロボットの方もルナマリアを認めたのか、翼を翻してルナマリアの差し出した指にとまる。

「なにそれ」
「シンが総司令達に貰ったロボット。なんでこんなところに」
「なあに、アンタの旦那、今度はオモチャ遊びぃ? ガキねえ」
「……オモチャなんかじゃないのよ。アンタが次変なことしたら、光の翼出しながら追いかけてくんじゃない?」
「冗談」
「作ったの、あの総司令達よ?」

 ルナマリアが真剣な顔をして言う。キラ、アスランは両方とも技術に秀でたエンジニアの才能を持つ。得意分野とは違うのにも関わらず、キラはこのサイズのロボットに量子通信デバイスを仕込んで、それがファウンデーション事変に際しても有効に使われたという。

 今度のこのロボットに何が仕込まれているのか……と、ルナマリアの顔を見たアグネスは顔を引きつらせた。

「……や、やあねえ、冗談に決まってるじゃない。あは、あははは」

 そんなアグネスから目線を外すと、ガンルームの入り口でシンがハロを抱きかかえてこちらを見ている。

「シ……艦長、どうなさったんです?」

 入り口まで行くと、シンがバツの悪そうな顔をして顔を逸らした。

「いや、逃げられちゃってこいつらに……」
〈キミハオレガマモルッ!〉
〈ツキニカワッテオシオキヨ!〉

 ルナマリアが持ってきたオレンジ色のロボットも、シンの顔を見るやちょこん、と頭に飛び乗り落ち着いた。

「入ってくればよかったのに……」
「いや、艦長がレクルームに来るの嫌がるだろ、皆……」

 ザフトでは元々士官や下士官といった階級はなく、レクルームというのはあくまで赤服、緑服の専用室だった。隊長、艦長クラスの白服や副長クラスの黒服はあまり顔を出さない。

 これはそもそも暇がないということもあったが、上官がいると休まるものも休まらないという、ごく基本的な風潮に基づくものだった。

 階級制が導入されて以降のザフト、元々階級があるオーブ軍でもその点はあまり変化はない。

「そんなに気にすることないのに……」

 もっとも、そういうことを気にしない士官や下士官も多い。シンのような艦長なら、多分皆あまり気にしないのでは? とルナマリアは考えていた。

「まあ、でもとりあえずしばらくは様子見かな。ありがとう、ルナ」

 両手一杯にハロ、頭には3羽の鳥型ロボットを載せたシンが通路の奥に消えるのを、ルナマリアは少し寂しげに見送った。

「あの、ルナマリアさん?」
「アビー、どうしたの?」

 アビー・ウィンザー中尉。彼女とルナマリアとはミネルバ時代からの付き合い――とはいえ、ルナマリアとしては思い出したくもないあのアスラン脱走事件の後の配属――で、ミレニアムのMS管制官、スクルドでも同じ担当を務めている。

「シン・アスカ艦長のことなんですが……少し気になる話が」
「え?」
「実は――」

 アビーの話はこうだ。MS隊、特にアグネスの指揮下に付けられた新人赤服や、オーブ組のクルーの中で、シンに不信感を抱いたり、嘲りの対象にしているものがいるとのことだった。

「告げ口することになってしまって……ちょっと気が引けたんですけど。ただ、実戦配備後に何か影響が出たら困るなあって……」
「そっか……ありがとう、アビー。ちょっと考えてみる」
「はいっ……それと、もう少しアスカ艦長とイチャイチャしてもいいんじゃないですか? できるだけ、クルーの目のないところで」
「なっ……!」
「顔に出てますよ? アスカ艦長ともっと話したいって」
「そそっ、そんなことないから!」

 見透かされていたということに慌てて、ルナマリアはその場をあとにした。
 その姿を見送りながら、レクルームに目線を移すアビー。こちらを見て、何やらこそこそと話す何人かのクルーが、アビーの目には飛び込んだ。


 艦長室

「はぁ……お前達、部屋から出るなよ。毎回拾い集めるの面倒だからな」

 ハロ達は何やらまた文句を言いながらシンの周りを跳ね回っていた。

「……何か名前くらいつけたほうがいいのかな」
『艦長、少しよろしいでしょうか?』
「え? ああ、えーと、どうぞ」

 ルナマリアが少し不安げな顔をして艦長室に入ってきた。

「どうしたの?」
「どうしたもこうしたもないでしょ……ていうか、これ、なに?」
「え? あ、いや、その……荷解きを」
「はぁ……だから荷物は減らしなさいって言ったのに」
「い、いいだろ、別に」

 ルナマリアは既にアーサーから、シンがベッドを撤去したいきさつを聞いていた。今ここでそれを追求してもシンは意固地になって答えないだろう。

 ただ、早い内になんとかしなければ……とは考えていた。

「それはそうと、このハロ、どうすんのこれ……」
「あっ! そうだルナぁ、手伝ってよ」
「え?」
「こいつらの名前を考えたい」
「はぁ?」
「あっ……そう、だよな……そんなことしてる場合じゃないよな」

 少し落ち込んだように項垂れたシンを見て、ルナマリアはまだ開けていないコンテナに腰掛けて頬を緩めた。

「いいわよ。考えてあげる」
「ホントに!? それじゃあ……こいつは……」

 シンが取り上げたのは〈キョシヌケガー〉などと叫んでいるハロだ。

「真っ白ね」
「んーじゃあダイフク!」
「ダイフクぅ!?」

 ルナマリアも聞き覚えがあった。オーブでもよく見かけるお菓子だ。

「えー、じゃあルナは何がいいの?」
「……ダイフクねえ……ダイフク、いいんじゃない?」
「そっか! それじゃ今度はこの緑色のやつ」
〈グゥレイトォ!〉
「さっきダイフクでしょ……じゃあズンダ」
「ズンダ、そうか、お前はズンダ、ずんだ餅だな!」
〈グゥレイトォ!〉
「お、気に入ったらしいぞ」
「ホントかしら……」
「じゃあじゃあ――」

 と、しばらく時間を使って名前が一通り付けられ、現状クロマメ、ダイフク、ズンダ、イチゴ、オハギ、ソーダとなった。

「で、こっちのトリィは?」
「三羽いて、三色いるから……カッコイイ名前にしよう。ソード、ブラスト、フォース!」
「インパルスのシルエットじゃない」
「でもカッコイイだろ?」
「まあ、かっこよくはあるわね……ホント、子供なんだから」
「え?」
「なんでもないわ」

 頭の上にはソード、ブラスト、フォース。
 膝の上にはハロ・スイーツシリーズ。
 これがザフトで大佐、ネビュラ二個持ちの姿かと思いつつ、無邪気な笑み浮かべている旦那は可愛いなあなどと、ルナマリアはしばらくシンとハロ達と戯れていた。
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