※映画~5年後コンパス組織がどうなってるかわかんないので根拠ゼロの妄想で書いてます
※ていうかほぼ全編妄想だから細かいとこは許して欲しい
※シンルナは婚姻統制クリアーしてるか愛の力で押し通したかはご想像にお任せします
参考スレ:
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前のやつ:
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アプリリウス・ワン
港湾区
強襲機動揚陸艦スクルド
食堂
スクルドは実戦配備に向けて準備を開始していた。物資の搬入、新規乗組員の受け入れなどの作業を指揮していたシンだったが『艦長は休んでいてください』というアーサーの強い要請を受けて艦橋を追い出されて、食堂に来ていた。
「あ゛あ゛あ゛~っ、肩が凝るなあ、艦長って」
今はどこの部署も慌ただしく動いていて、その中で一人ゆっくりしていていいんだろうかとシンは不安になっていた。
「あれ? シン、休憩?」
「うん、ルナは?」
「MSの整備が終わったから休憩……ほらコーヒー」
「ありがと、ルナぁ」
ルナマリアはドリンクボトルをシンに手渡すと、自分はシンの隣に座る。
「これから忙しくなりますね、アスカ艦長」
「……」
「どうしたの?」
「ルナからそうやって艦長、って言われるの慣れないなあ」
「しょうがないでしょ、艦長なんだから。それに他のクルーの手前、ねえ」
「そりゃそうだろうけど」
そんな二人の背後に人の気配。シンとルナマリアはそれに気づいて振り向いた。
「アグネス……驚かせないでよ、もう」
「すみませんでした少佐殿。艦長殿」
「アグネス……」
「……まさか、アンタから声を掛けられるなんて思わなかったわ」
ファウンデーション事変での一件を除いても、どうもアグネスとの反りが合わないことはシンも自覚していた。それでも、彼女にも汚名をそそぐ機会が必要だと考えた。そう、かつてメサイアが炎上して落下するあの時、月面から自分達を拾い上げてくれたアスランが自分を見下ろしていたときのことを思い出していた。
「アグネス、ハッキリ言っておく。この艦では俺が艦長で階級も大佐だ。俺の指示に従えないというなら、いつでも艦から放り出す」
「わ、わかってるわ。反省してるのよいろいろ……ま、よろしく頼むわ」
ぎこちない握手を交わした二人を、ルナマリアはまったく……とやや呆れ顔で眺めていた。
「素直じゃないのねえアグネス。あの山猿を見直させるチャンス、とか言ってたのはどこの誰でしたっけ」
「は、はぁ!? そんなことないから! あと、アンタ達今更取り繕ったって、イチャついてんのバレバレだからね!」
照れ隠しなのかそう言い残して出て行ったアグネスを見送り、二人は顔を見合わせた。
ブリッジ
「副長、最終便の物資および全乗組員の収容を完了しました」
「はぁ~、これでやっと一段落だなあ……とりあえず、これでスクルドがいよいよ実戦配備だ」
アーサーは感慨深げにブリッジを見渡した。これまで自分が配属されてきたミレニアムと見た目は似ていても、艦の空気はやや違う。艦長の人柄もそうだが、ナチュラル、コーディネイター問わず適正や希望を反映してごちゃ混ぜになっていることも影響しているのだろう。
「まあ、あとはトラブルがなければいいんだが」
「そういうことを言うと、大体何か起きるんですよ」
ミネルバ時代からアーサーを知るアビー・ウィンザーMS管制官は、チクリとアーサーに釘を刺した。そして、それは現実になる。
突如警報が鳴り響き、アーサーは鳩が豆鉄砲を食ったように立ちすくんだ。
「えっ、なに」
『艦長……はいねえのか。副長ぉ!』
「あー、マードック班長、どうしました?」
『格納庫で殴り合いだ!』
格納庫
「だぁぁ、もうおめえらなにやってるんだ!」
「止めないでください班長!」
「いってえ……ナチュラルのくせにいいパンチすんじゃねえか!」
「っせー! テメェらコーディネイターの腰が入ってねえんだよ! 宇宙人はこれだから……」
「やめろって!」
マードックは頭を抱えていた。整備班は艦内でも一番数が多い部署で、それだけに人員の思想的な質、といいうものが一番バラつきやすい。
コンパスに来ているのは基本的には個々人の志願によるものとはいえ、根付いている差別意識は中々すぐに消えるものでもない。コンパスでの活動が長い旧ミネルバクルーや、国内に多数のコーディネイターがいるオーブ出身の兵士でさえ、そうなのだ。反コーディネイター感情がオーブ以上に強い大西洋連邦兵をミレニアムやスクルドに配置せず、地上支援要員としているのはそれが理由だった。
「何やってるんだ!!」
「ああ!? 見て分からねえの……艦長!?」
コーディネイターの整備員が、キャットウォークから飛んでくる白の艦長服を認めて身体を強ばらせて敬礼した。一触即発の空気にあった格納庫が一気に引き締まったようで、マードックもホッとため息をついた。
「何があったんです、班長」
「いやあ、それが……」
「こいつがっ! ナチュラルのくせにアスカ艦長の指揮する艦でホントに働けるのかとか言うからっ!」
ナチュラルの――シンにはその顔に見覚えがあった。元アークエンジェルの整備員だ――整備員が、頬を張らした整備員を指さした。
「そうか……なんでそんなこと言ったんだ」
「こいつらじゃ艦長達の操艦に耐えられねえじゃないかって、そう言ってやっただけですよ」
コーディネイターの――こちらもシンには見覚えがある旧ミネルバ時代からの整備員だ――整備員が、バツが悪そうに言った。
「そうか……ともかく、ケンカなんかするな。手を出すのもけなすのも禁止。配属されたからには皆、同じクルー、仲間だ。俺の艦で差別は許さない。全員持ち場に戻れ! マードックさん」
「はっ」
「二人の処分はどうしましょう」
「え? まあこういうときは、ウチだったら……ま、便所掃除3日間ってとこですかねぇ」
無精髭の生えた顎を撫でながら、苦笑いしたマードック曹長にシンは安心感を覚えた。ミレニアムでもお世話になっていたエイブス班長とは違うタイプだが、この人なら整備班を任せても大丈夫と判断した。
「じゃ、それで! いいか、文句があるなら俺に言えよ!」
シンはそのまま、床を蹴って格納庫を出て行った。
「艦長が理解があってよかったな。お前ら! 独房の初利用者が整備班員なんてなったら承知しねえからな!」
マードックが拳を振り上げて怒鳴ると、整備員達は首をすくめて返事をするしかなかった。
艦長室
「コーディネイターとナチュラル、かあ……」
シンはコーディネイターとしては第2世代だった。両親がコーディネイターだから当然だ。病気への耐性はあるが、何かずば抜けて他人より優れた才能をあらかじめ授けられたわけではない。
ファーストコーディネイター、ジョージ・グレンが世界に自身の出生の秘密を明かして、この世に存在を示された遺伝子操作により高い能力を持つことが可能になったコーディネイターと、そうでないナチュラルは互いに互いの生存をかけた絶滅戦争を経て、現在に至る。戦争に至らない小さな事件は世界各地で起きていて、それにより起きた社会不安は、特にユーラシア西部やアフリカ北部では紛争という形で続いている。
シンはある人物の名を艦長室の端末で調べた。往事の彼の姿がすぐに見つけられる。
ギルバート・デュランダル。元最高評議会議長。
デスティニープランの提唱者、シンがザフト軍人としてのキャリアを歩み出してすぐ、自分のことを見いだした人。
戦争根絶、人類の恒久平和を目指したというそのプランは、シンの来歴にいやでも関わるものだ。
シンのアカデミーでの成績は、当時の同期達――ルナマリアやレイ、アグネス――と比べれば一段落ちる面もあった。そんな自分が、当時最新鋭艦だったミネルバに配属され、機体の新鋭機であるインパルスのパイロットを任された。
戦い、戦い、戦い続けて、いつの間にかネビュラ勲章は二つに増え、FAITHにまで任命された。最新鋭機であるデスティニーまで与えられた自分は、対ロゴス戦争の最前線で戦い、デスティニープランの守護者としての役割を与えられ――敗れた。
喪うだけの戦争だった。信じた理想も、大切な友達も、帰るべき家だった母艦も――危うく自分の手でルナマリアまで殺しかけた。レイは議長達と共に死を選んだ。
オーブ戦で両親を喪った、妹を喪った。引き出しの奥に仕舞いこんでいた携帯端末の電源を、久々に入れてみた。オーブのジャンク屋で見つけた充電器がなければ、とうに電源は入れられなくなっていただろう。
『はい、マユでーす! でもごめんなさい。いまマユはお話できません。 あとで連絡しますので、お名前を発信音の後に――』
再び電源を切り、引き出しの中に納める。
ステラを救い出せず、幼い考えで自分は彼女を死地へと戻してしまった。
キラやアスラン、メイリンも殺しかけた。
ハイネ。彼も死んだ。唐突だった。生きてミネルバに居てくれたら、どれだけ心強かっただろう。
ヨウランを喪った。気のいいやつだった。
ミネルバ、いい艦だった。艦長のタリア・グラディスは少し厳しい人だったが、今にして思えばやりづらかったことだろう。彼女が生きていたら、今頃大佐の階級にあっただろう。
自分もその階位に並んでしまった。彼女のように、自分は艦を預かる責任ある立場だ。
本当に務まるのだろうか……
遺伝子でその人の適性を見いだし、仕事、いや運命を定めるデスティニープランだったら、自分が艦長になどなったのだろうか。
5年前に起きたファウンデーション事変も、デスティニープランを使うファウンデーションのアウラ女帝の暴挙とも言えるものだった。アコードと呼ばれるコーディネイターの上位存在とデスティニープランによる人類支配を標榜した彼らの要求を、自分達は否定し、抗い、勝利はした。
人類はそんなものがなくても、自分達の手で平和な世界を選び取ろうとするだろう。そのためのコンパスではあるが、未だに戦いは続いている。もちろん、かつてに比べれば劇的に戦いで命を落とす人々の数は減った。しかしゼロにはならない。
人類は産まれたそのときから戦いを続けてきた。食糧を得るため、群れを守るため、縄張りを守るため。
それがいつしか国が出来て、宗教が出来て、財産を持ち、守るべきものも変質していった。
宗教、思想、政治の統治機構、利権、自らの望むものを守るための戦い。手元に置いていた人類史の本、その20世紀から21世紀の頁を捲るだけでも、ウンザリするほどの戦いが羅列されている。CEに入ってからも同様だ。現代の人類史は戦いで流された血で記されている、などと誰かの本に書いてあったが、シンはその通りだと痛感している。
人はいつも、綺麗に咲いた花を吹き飛ばす。
それでも吹き飛ばされた花を、また植える。
かつて故郷でそう語り、手を取ったキラの理想は未だ遠い理想郷のようなもので、シンにもその光景はまだ実感を持てない。それでも――
『――艦長、艦長? 入りますよ?』
出港準備が整い、カナーバ総裁らコンパスの幹部が揃ったささやかな就役式の時間が近づいてきた。アーサー・トライン副長は返事がない艦長室のドアを開いた。
目に飛び込んだのは、床に倒れ込んだ艦長の姿だった。
「え……えええええええええっ! 艦長ぉっ!」
「わっ、わっ!! びっくりした!? えっ!? 何!?」
突然耳に飛び込んできた聞き慣れた、それでいて大音量の悲鳴にシンは目を覚ました。いつの間にか眠っていたらしい、と気づいたのは、顔を青ざめさせていたアーサーの姿を認めてからだ。
「ビックリしたのはこっちだよシン!」
アーサーの悲鳴を聞きつけて、艦長室の外が騒がしくなってきた。開けっぱなしのドアからルナマリアが飛び込んできた。
「な、何の騒ぎ!?」
「あ、あははは、すまないなあルナマリア。あっはっは」
「あ、いや、なんでもないよ、なんでも」
実のところ、シンはここしばらく睡眠が浅い。前の大戦前から、時折夢を見て起きてしまうことがあった。ここしばらく、自宅ではゆっくり寝られていたのに……とシンは内心で思った。ルナマリアを外に追い出し、アーサーと共にシンは一度大きく溜息をついた。
「……艦長」
気遣わしげな目線をアーサーが向けてくる。シンは居心地悪く、その目線から逃げるように背を向けた。
「わかってるよ、アーサー」
「シン、君、さては寝てないんだな……」
見透かされていたか、とシンは小さく頷いた。
「ちょっとウトウトしただけだよ」
「あのなあ、シン。寝るときはベッドに寝てくれよ。見つけたのが僕だったからいいものの……ルナマリアは知ってるのか?」
「言えないですよ。言ったら心配するじゃないですか」
アーサーはそれとなく艦長室を見渡す。本来ベッドがあるべき位置には荷解きもしていないトランクケースやらコンテナが積まれていた。ベッドは一度取り外して保管されているらしいと、ヴィーノ経由でアーサーは聞いていた。どうもベッドで寝ると万が一のときに初動が遅れると言っているらしい。
強迫観念だな……とアーサーは呆れつつ、どこかのタイミングでベッドを再設置させようと心に誓った。艦長が睡眠不足で墜落、なんてことになったらしゃれにならない。
「それはそれで後で大変なことになると思うんだけどなぁ……奥さんに黙っておくってのは、あとが怖いらしいよ。僕独身だからよく分かんないけど」
「わかってるよ……!」
アーサーはシンの受け答えに、かつてミネルバに居た頃のことを思い出していた。あの頃もこうして子供のような――いや、実際子供だったのだが――苛立ちを隠さずに声に出すことが彼にはあった。
「薬は?」
「飲んだらすぐに出られなくなるだろ」
「うーん……ストレスかなあ。艦長になって気疲れしてるんだろう。もう少し、力を抜いて。さ、カナーバ総裁らがお待ちだ」
艦長は乗組員の体調を含む管理も職務の内。しかし艦長自身の体調管理は? とアーサーは、それとなく軍医やルナマリアなどに知らせるべきか考えながら、シンに続いて舷門へと向かった。
管理ブース
「総裁登壇、総員注目!」
アーサーの号令に、スクルドの全乗組員が演台に顔を向けた。
「この数ヶ月、皆、新しい環境での訓練などに勤しんで貰ったことで、いよいよスクルドが正式にコンパス所属艦として就役する――」
カナーバ総裁の挨拶を、シンは総裁の背後で聞いていた。急ごしらえの演壇から見下ろすクルーの表情は緊張やら自信に満ちた笑みなどいろいろだった。
「――情勢は落ち着きつつあるが、未だ不安定な地域も多い。諸君らの活躍で、少しでも戦火に灼かれる人々を救い、世界に安定がもたらされる日が1日でも近づくことを祈る。私からは以上」
カナーバ総裁の挨拶が終わり、続いて艦長挨拶とアーサーが言う。
しまった、何も考えていない――と、シンは頭が真っ白になりかけつつ、演台に手をついた。アーサーはニコニコとこちらを見ている。まさか挨拶を何も考えていないなどとは考えていないのだろう。
「改めて――強襲機動揚陸艦スクルド艦長のシン・アスカ大佐だ」
ともかく、何を言うべきかと考えながらシンは第一声を放った。声は震えていなかっただろうか。演壇の下にいるルナマリアが、興味深そうにシンのことを見つめていた。彼女はまだ、シンはが原稿も無しで挨拶していることにまだ気づいていない。
「……俺は、ほんの5ヶ月前に大佐になったばかり。艦の指揮を執るのも、まだ演習でのみの新米だ」
「ザフトの皆は、俺のような若い指揮官も慣れているだろうが、オーブ軍から出向してきた皆は、慣れないこともあると思う。不安もある、と思う」
「だけど、俺は皆の命を預かる! 絶対に死なせやしない! でもそのためには、皆が一丸となって働いてもらう必要がある! 俺の命も、皆に預ける!」
「ナチュラル、コーディネイター、所属を問わず、互いに命を預ける者同士、平和の守護者としてこのスクルドで働いて貰いたい。スクルドは北欧神話で未来を司る女神とされている。多くの者の命で紡がれた明日を、未来を守るため、皆には艦名に違わない活躍を期待する!」
「一同、敬礼!」
シンが一息に言い切ると、アーサーが号令し乗組員一同が一斉に敬礼した。
シンは答礼を返し一同を見渡しつつ、小さく息を吐いた。
以前、艦名の由来を調べていた助かった……と。
「では、総員乗艦。直ちに出港準備に掛かれ!」
アーサーが命じて、乗組員一同が駆け足で乗艦していくのをシンは見送っていた。
「アスカ艦長」
カナーバ総裁に呼び止められ、シンは反射的に敬礼していた。
「君らしい荒削りだが、いい挨拶だった」
「はっ! ありがとうございます」
まさか即興だったと言うわけにもいかない。シンは殊更胸を張った。
「いやあ、驚いたよシン。君のことだから何にも考えてませんでしたー、なんて言ったらどうしようかと」
アーサーが笑いながら言うのを、シンはやや引きつった笑みで受け流した。
「ところで、君達にはまだどこヘ向かって貰うか伝えていなかったな」
総裁がキラに頷いた。
「シン、スクルドにはまずオーブに向かって貰いたいんだ」
「オーブ、ですか?」
「うん。大気圏突入や大気圏内での実操艦訓練もかねてね。ついでに僕の機体をメーカー整備に持って行って欲しいんだ」
今のところ、スクルドは宇宙空間での演習しか行っていない。尤も、ミレニアムで勤務経験があるスタッフ、それもいずれもアークエンジェルやミネルバでも経験済みとなれば大きな問題にはならない。
本格的な大気圏内での任務遂行へ向けての最終確認程度のものだとシンは捉えた。
「わかりました」
「それと、同乗者二人」
「同乗者?」
「うん、僕とマリューさんも同乗させて貰うよ」
「よろしくね、アスカ艦長」
これは本当に卒業試験なのではないか、とシンは緊張した面持ちで頷いた。
「はっ! 無事、オーブまでお送りいたします」
「オーブに着いた後のことは、また現地で話そう。では、総裁、行ってきます」
「ヤマト総司令、よろしく。アスカ艦長と君達スクルドの活躍を期待する」
総裁が秘書と共に離れ、シン達はスクルドへの舷門に向かった。
ブリッジ
「機関、定格起動中。コンジットおよびFCSオンライン、パワーフロー正常。磁場チェンバー、ペレットディスペンサーアイドリング正常」
「外装衝撃ダンパー、出力全開でホールド」
『コントロールよりSCC-1-03スクルドへ。出港を許可。貴艦の航海の安全と武運を祈る』
すでにブリッジではノイマン以下ブリッジ士官達が出港準備を進めていた。
「主動力コンタクト。システムオールグリーン。スクルド、発進準備完了」
艦橋内のモニターの一つは艦の運用状況をまとめて表示している。全てのチェックリストが準備完了のグリーンへと切り替わっていた。ノイマンがアーサーに顔を向けると、アーサーは頷いて答えた。
「艦長、全ハッチ閉鎖を確認。いつでもいけます」
アーサーが自信に満ちた笑みをシンに向けている。アーサーやアビーといった他の士官も同様だ。艦長席に収まったシンは、チラとオブザーバー席に座るキラとマリューを見たが、二人とも小さく頷くだけ。当然だ、いまこのスクルドの艦長であり、指揮官は自分なのだ。
コンパス所属艦として、任務として初めての出港だ。シンは気合いを込めて、命じた。
「機関、前進微速。スクルド、発進!」
アプリリウス・ワンの港湾ブロックから、淡いグレーの艦体が滑るようにして出て行く。
「針路を地球へ。最終目的地はオーブ連合首長国、オノゴロ軍港」
「はっ!」
果たしてこのスクルドがどのような活躍をたどるのかは、神のみぞ知るところだろう、とシンは漆黒の宇宙空間を見据えて、今後の責任を痛感するところだった。