吾輩は猫である。飼い主は春日未来。


吾輩は猫である。名前はまだない。
そんな吾輩は今、春日未来なる少女の膝の上で弄ばれている。「うわぁー!やっぱりPさん可愛いな~」
Pとは彼女が吾輩に付けた呼び名である。
アイドルである彼女にはプロデューサーというのは身近な存在らしく、その頭文字をとってPなのだそうだ。彼女の持ち歌では『素敵なキセキ』という曲があるのだが、まさにそれを地でいっているような少女だと言えるだろう。いやこの喩えはあまり適切ではないかもしれないが……まあいいではないか。
彼女と出逢った経緯について話すには、まずあの忌まわしき事件から説明しなければならないだろう。吾輩はその日もいつものように昼寝をしていたわけだが、そこに少女が現れたのだ。最初は餌でも貰えるのかと思ったものだがそうではなかった。彼女はあろうことか吾輩を家に連れて帰ろうとしたのだ。当然吾輩はそれを拒否したし抵抗した。しかし所詮人間と野良猫との体格差など歴然であり、力負けしてしまったのだった。
ただこのことも後から思えば悪いことではなかったのかもしれない。その相手というのが先ほど述べた件の春日未来であったからだ。この時の吾輩は完全に油断していたこともありあっさり捕まってしまいそのまま抱き上げられてしまったのだったが……。この時初めて気付いたことがある。それは人間の体温というものが温かいということ。そして人肌に触れていることで感じる安心感というものだ。それからどうなったかというと……なんだかんだと丸め込まれて結局家に上げられてしまった次第であるが、そこに至るまでの道程は決して不快なものでは無かったように思う。そこでしばらく暮らす内に情のようなものが生まれたのだろうか、いつの間にか彼女に対して警戒心を解くようになっていたのだから不思議なものである。もしそれがなければ今の自分はいなかったかもしれぬと思うくらいだ。ちなみに言うまでもないことではあるが名前は自分でつけたものではない。最初の頃は何度呼んでもらってもその名前が自分のことだという認識すら無かったため覚えられなかっただけのことである。
ともかくそのような経緯からしてみれば今日の出来事は喜ばしくもあり悲しくもある出来事であったという他は無い。何故ならこれは一度きりのことではなくこれからもずっと続くであろうということを理解せざるを得なかったからである。
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