君はおいてゆく


今日は、いい天気だ。
青々とした木々の隙間から日の光が差し込み、小鳥は囀っている。
こんな気持ちの良い日には、紅茶でも飲んで優雅に過ごしたいものだが。
「よーうエルファバ!今日も気持ちのいい決闘日和だな!」
ああ、また彼女が来た。
その理由が決闘でなければ、どんなに良いことだろうね。
そんな「もしも」を夢想しても、彼女が僕と闘いに来たという事実は変わりはしないのだ。
僕は渋々出迎える。
「また君か、イハラ。今日は僕はまったりと過ごしたいんだ。決闘じゃないなら上がっておいで。」
「はぁ!?話聞いてねーのかよ!決闘しに来たって言ってんだろー!?」
深紅の髪を振り乱し、ぎゃあぎゃあとそう喚く。
「頼むから騒ぐのはやめてくれないか。鳥たちが逃げる。君は本当にそればかりだな。」
そういうところが好きでもあるのだが。
君と戦いたくはないのだ。
君はきっと老いて行く。老いて弱くなって行く。どんどん、どんどん。オークは人より長命だが、エルフにはとうに及ばない。
君の傍には居たくないのだ。
君は僕を置いて逝く。僕を置いて天の国へ逝く。君が僕と同じエルフなら、こうも悩まずともよかったのかもしれない。
君を好いてしまったのだ。君が僕を置いて逝くのが、老いて行くのが、たまらなく怖いのだ。
このままではいけないと思い、けれどもこのままに甘んじる。
この決闘をしあう仲という、言葉で形容しがたいものに。
お知らせ
実務でも趣味でも役に立つ多機能Webツールサイト【無限ツールズ】で、日常をちょっと便利にしちゃいましょう!
無限ツールズ

 
writening