【閲覧注意】 アレクセイ・コノエ×アーサー・トライン


「…アーサー、来てくれるかい?」
「ぁ…は、はい。今行きます」
低く、それでいて冷たい声。けど、その声が心臓を早め締め付けるくらいに、ざわざわと落ち着かない。
こうやって低く、冷たい声を出すのは大抵、腹の虫がおさまらないか本当に突然のどちらか。理由もわからず、アレクセイさんが僕の手に手錠をかけられ、さらには艦長室に閉じ込められる。出してほしいと懇願するも、その声は届かない。
依然理由が分からないまま。
最初は何かミスでも犯したのかと思ったが、そういうのではなくただ…艦長室に入るや否や手錠をかけられ艦長室に閉じ込められた。有無を言わずただ黙々と手際よく手錠をかけるアレクセイさんが怖いと思ったが、理由もなくする人ではないと知っていた。それでも、理由を聞いてものらりくらりとかわされ、まともな返答を聞かされていない。
この日も、また艦長室へと通され手錠を付けられる。
今日こそは、とアレクセイさんに声を上げる。
「か、艦長。なんでこんな」
「…いい子で待っていなさい」
「何か、その…ミスでも犯しましたか?僕は、…要らないですか?」
「ちがう」
「なら…んぅっ?!…ぇぅ…んちゅ、ん、ん…ぅうー…」
顎を強制的にアレクセイさんに向けさせられ、口をいきなりふさがれる。唇をついばまれ、舌でじっとりと舐めとり、口の中へと無理矢理侵入させられた。口の中がひどく熱く、息が苦しい…乱暴で嫌なはずなのに舌が過敏となり、パチパチと頭がはじける感じが止まらない。生理現象で目から涙が流れ、頬が湿っぽい。
「あれふ…ぁ…ちゅ、ちゅ…ぇろ…ぁむ…ん、ぅうー…ぇ、っほ…っはぁ…ちゅうぅ」
腰が砕け、足が震えもはや立っていられるのも時間の問題。こうされるたびに、アレクセイさんは腰を抱いて僕を無理矢理立たせた。なすがままの状態が続き、自由の利かない両手を力強くこぶしを作り、アレクセイさんに体を預け耐え忍ぶ。
たまに握りしめすぎて、血が出ることもある。同時に、時々アレクセイさんの視線が冷たく感じる。
いやなら、こんなこと…。
そんな気持ちを抱えながら毎回、言葉を続ける前に長いディープキスで黙らせられ腰が抜けてしまう。まともに取り合ってもらえない事が、何より嫌で悲しい。
「ぷぁ…アレクセ、イさん…ぁっ…いっちゃ、ゃだ…」
どうにか、息を取り込みとっさに声を出す。取り合ってもらえないだろうけど、せめて理由が欲しい。
何でこうするのか、知りたいだけなのに。
「いい子で待っていられるね。アーサー」
にこり、と目が笑っていない笑みを向け語り掛ける。最近、この人の笑みが怖いと感じ始めてきた。好きであるはずなのに、どこか遠い存在になったかのよう。
「…ぁ、……は、ぃ。わかり、ました…」
僕は聞き分けの良い子供のように、そう言うしかなかった。
扉の向こうへと言ってしまう背中を見送り、うなだれ床を見つめる…パタリ、と何かが顔から垂れた。
…あぁ、僕泣いているのか。それを理解した途端、涙があふれ…止まらなかった。

「艦長、副長を見ませんでした?」
艦長室を後に、廊下を進みブリッジへ戻る途中…オペレーターのウィンザーがキョロキョロとだれかを探している。こちらに気付き、アーサーを見なかったかと問われた…私はとっさにすでに彼に振り終わらせた仕事を、さも今しがた与えたかのようにほのめかす。
「あぁ、彼なら少し仕事を頼んだ。何か用か?」
「え、はい…この問題なんですけど」
ウィンザーは少したじろぎながら、問題部分をこちらに伺いかけてきた。…この問題なら、急ぎでもないし後で別の者を向かわせられるな。
彼を向かわせるほどでもない。
「これなら急ぎではないから、あとで別の者を向かわせる。他に何かあるかい?」
「いえ、艦長…忙しいところすいません」
「かまわないよ、何かあったら言いなさい」
「は、はい」
短い返事と共にウィンザーは元来た道を戻っていく。反応からして、怯えさせてしまったな。

「劇薬を飲み干した気分だ…」

アーサーを他の者に見せたくない、触れさせたくない、さらには戦場に向かわせたくない。独占欲がひどく強まっていくばかり。もはや、他がどうでもいいとばかりに自分が余裕が無いと実感できてしまう。
長い付き合いのハインラインも何も言わないが、無言の圧がいやでも解ってしまう。おそらく、こっちの気持ちを理解しているからか…落ちつけ、冷静になれ、と言い聞かされているかのよう。
日に日に情勢がせわしなく戦火に塗れるばかりな毎日。ナチュラルとコーディネイターの溝は一向に少しも埋まらず、かえって広がるばかりだ。さらに言えば、国同士の醜い暗躍も目に見えてきている。
キラくんたちが隠れてしまったこの世界、彼らばかりに負担を背負わせたくはない。今でも、そう言い切れるが…私はこの情勢に、ひどく落胆していた。
なんせ、変わらなさすぎるのだ。それに、学習しない。
私たちはいつまでこんなことを続けるのだろうか、いっそのことザフトに戻って…いや退役も考えてしまう。
まだ、私はこの世界で立てる。行動できる、指揮ができ戦える。
それでも、限界は来てしまうのだ…こんな醜い世界、早く滅んでしまえ、と。
こんな世界からさっさと抜け出し、アーサーと慎ましい生活を、小さな当たり前を謳歌したい。アーサーをこんな汚い世界に置いておきたくない、そんな馬鹿な考えまで湧きあがらせていた。当のアーサーはとっくに覚悟が出来ているのに、だ。
コンパスへの出向は師であり、友のワルターの頼みだから引き受けたものの…流石に、どうしようもない感情が湧いてきている。
…アーサーには酷いことをしている、解っている。解っているが、もう…辛いのだ。
こんな醜い世界、早く……。
「いかんな…」
弱音を吐きたい思いをぐっと飲み干し、軍帽をかぶり直し軍服を整える。
「泣いている、な。ははは…すまない、アーサー」
艦長室で私の行動に責任を感じているのか、恐れを抱いているのだろう…涙を流しているアーサーが思い浮かべられた。乾いた笑いしか出てこない。本当はもっと、彼と共に過ごしたいのだ。その声を聴いていたいし、手を握り、愛を確かめ合って、それで…。
あぁ傲慢だ。
解ってくれとは言わない、解ってほしいなんて言えない。

「愛している、これだけは本心だ」

言うべきはずの存在が隣に、そばに居ない中で、そんな言葉を口にした。
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