nmmn注意【 6 人 の 異 能 力 者. 】


【side 赤】

赤「紙飛行、機、……」

久しぶりに声が出た。

そもそもこんな都会に紙飛行機なんて飛んでくるのか。

目の前まで飛んで来た紙飛行機に恐る恐る手を伸ばす。

幻覚だ、きっと。

赤「えっ……」

触れる。

幻覚じゃない。



怖くなり手を離すも、先端が自分の額(ひたい)に直撃しようと向きを変えてきたため、震える手で掴み取る。

一瞬ただの紙かとおもったが、窓にかざすと薄っすらなんらかの文字が透けて見えた。

赤「怖ッ……」

丁寧に広げると、紙がパッ、とにじむように赤色に染まる。

なに、これ…。




苺咲 赤 様
今から異能力者の集いが行われます。

東京都苺区、苺王子駅の正面入り口付近

にて必ずお待ちください。
携帯・財布・日常での必需品を持ち、駅まで徒歩でお越しください。

薔薇(バラ)の異能力者
向日葵(ヒマワリ)の異能力者
紫陽花(アジサイ)の異能力者
桜(サクラ)の異能力者
金木犀(キンモクセイ)の異能力者
朝顔(アサガオ)の異能力者

の6人が、集まります。
会場にてお待ちしております。

            差出人より





赤「噓…」

小走りで家の中を走り回る。

赤「…筆箱…ノート、教科書ッ…」

勉強道具を沢山抱えて、膝をつく。

持ち物をリュックサックに詰めながらふと思う。



自分は、異能力者に会ってもうまく話せないのだと。

赤「…っ、無理だなぁw」

少し話すと、
小学生の頃、担任に「おどおどしている」と言われるほど、誰かと話すのが苦手だった。

それから中学になり、人間関係がうまくいかなくなって不登校になることをきっかけに人と話す機会も減り、口数が少ないキャラに置きかわって今になる。

名前も顔も声も知らない人に会えばもっと自分が嫌いになるのかもしれない。

でも、会ってみたいとは思う。

会って仲良くなれたらな、なんて。





頭の中にうるさいぐらい鼓動が響く。

そもそもほんとに会えるのかな。

だって世界に6人なのに東京に6人居る。これって奇跡?


リュックサックがいっぱいになったところで、家を出ようと靴を履く。

玄関の鍵をしめて、坂道を駆け上る。

上を見上げると、空には満面の青空が広がっていた。







なんとなく最近よんだ小説や映画の内容を思い出しながら歩いていると、後ろから誰かの走るような足跡が聞こえた。

「あのッ…!!!」

突然の大声にビクッと肩を揺らして、ゆっくり振り返ると紫髪の男性が目を見開く。

赤「…へっ…」

びっくりするぐらい、顔がかっこよかった。

きりっとした輪郭に、優しい目と紫の瞳。


まさか、この人異能力者…?


?「その、…異能力、使えますか…?」


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【side 黄】

一限目の休み時間、担任の背中に向かってはっきりと言う。

黄「先生、頭が痛いので保健室に行ってきます。」

担任は顔をしかめて、「苺咲、お前今日おかしいぞ」と言うと、少し早口で続けた。

担任「ぼーっとしすぎだし、謎の幻覚は見えるし…」

担任「入学式の日はあんなに無愛想だったのに…なんかきちきちしだしたと言うか…」

担任「性格変わんの早すぎるて」

担任「それと、授業中なんか下向いてただろ」

背が高く、体格のいい体と鋭い目で見降ろされてゆっくり言葉を頭で理解していく。

セイカクカワンノハヤスギルテ…シタムイテタダロ…

あー、紙飛行機広げて文章読んでたことか…。

黄「…そうですかね」

担任は「はぁ…」とため息をつくと、だるそうに言う。

担任「早退したらどうだ」
担任「保健の先生に伝えておく」

黄「…じゃあそうします」

ロッカーの中のスクールバッグを引きずり出して、担任に一例をすると急ぎ目にで階段を駆け下りた。



自分が仮病を使っているのには、ちゃんとした理由があるわけでもない。

紙飛行機を広げたとき、今すぐ、と書かれていたから早退しようとした。ただそれだけ。





家に帰って準備を済ませ、時計を見ると駅まで丁度いい時間だった。

家を出ようと、黒マスクと黒キャップを深くかぶりドアに手をかける。

凄く、緊張していた。

大きく深呼吸をしてーーークスッと笑う。

黄「…どうせ、ダメなんだからW」

我ながら乾いた笑いだった。


歩きながら少しずつ過去を振り返る。



昔から人とコミュニケーションを取るのが苦手だから、なるべく目立たないように、自分で勝手に生きていた。

小学生の頃は、クラスメイトに話しかけられても言葉がうまく受け取れなくて、毎回バランスを崩してあきれられた。

それが怖くて、次第に口数も減っていって、人と会話を交わすのがもっと怖くなって。

教師や大人とならうまく話せるけど、同級生とは展開がどこへ行くか分からないというか…。

でも、まぁーーーー。



黄「…すぐ、終わる」

黄「暑いし、朝だし、…すぐ終わるよねw」

そう、自分に言い聞かせるように呟いて、天を仰いだーーーーーーーー。




その言葉が噓になるとは知らずに。
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