適度に悩んだ訳で
作成日時: 2024-03-14 20:41:44
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偶々目に入ったカレンダーのバツ印は13日までを潰していて、今日が14日だという事を分かり易く教えてくれる。
3月14日。巷は「ホワイトデー」と呼ばれる行事で賑わい、学園内もきゃらきゃらと楽しそうな音が溢れかえっていた。
ホワイトデー。何かあたしも行動した方が良いのかと思ったが、一ヶ月前の行事をナチュラルに無視してしまった故にあまりにも突飛過ぎて大丈夫かと変な心配に襲われる。
「……でもまぁ、こんな機会でもないと“サンキュー”の一言を言うのも照れ臭いからな……」
ふむ。と、考えて、今日が奇跡的にトレーニングの入っていない日だった事に感謝しながら財布をバッグに入れる。
何が良いのだろうか。
マシュマロ……は、本来「柔らかいマシュマロに包んで感謝を渡す」という意味があった筈だけど、今では悪い意味がメジャーとなっていて今日という日に渡すには少し後ろ髪を引かれてしまう。なんだか、教科書に載ってる悪者の人生がよく調べると案外良い奴だったみたいな気持ちだ。
「というか、甘い物食べられるかな?」
大人の食べる物はよく分からない。
昼食を一緒に食べる訳でも無ければ、一緒に暮らしている訳でも無い。
長い間、仲良しで過ごしていたとしても、案外知らない事も多い。
それならば、ガッツリ甘い!というお菓子は買わない方が良いのかもしれない。
もし、駄目そうだな〜ってなった時自分で消費、もしくは友人に横流しをしても大丈夫そうな物。
「うん。焼き菓子でいこう」
適度に安価で気負わせず、100人に渡したら80人は美味しく食べてくれるであろう安全牌。
贈り物の有名所だとフィナンシェかマドレーヌか。
「あっ……靴下売ってるじゃん。新しいの買おうかな」
横目に映った色とりどりに興味を惹かれ立ち止まる。セット売りでいつもより安く手に入るそれの肌触りを確かめる為に軽く触れる。
というか、靴下で良いのでは?
靴下なら変な柄を選ばない限り、人前では履けなくてもプライベートでぷらっと使えたりする。
「って、サイズ知らないわ」
お菓子の好みよりも難しい問題に当たり、靴下を飾ってあった棚に戻す。
確かに目の前の物は欲しいけれど、今はお菓子を買うのが最優先なのだ。靴下はまた次の機会という事で。
「世の中のヒト、世の中のウマ娘はこんな難しい事をしてるなんてすご……」
少なからず人を喜ばせようとする行動はどんな時も正解が難しい。
あたしのホワイトデー、喜んで貰えるだろうか。
まぁ、相手を不快にしたととしても、その人が配慮してくれてあたしの見えない所でゴミ箱に流すのなら別に良い。悪口と同じ様に、知らなければ全く傷付かない。勿体無いけど。
どうか、嫌な顔はされません様に。
恐らく、きっと、多分、しないけど。
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