バックドロップ・ギア 5話


バックドロップ・ギア 5話

■比率 ♂3:2♀※ or ♂7:2

※比率は目安です。全員の負担が少なくなる比率を記載しております。



□役表□

〇斉藤玲児♂(さいとうれいじ)20代後半
 元暴力団担当の刑事。過去に闇を抱えているタイプの主人公。
 高身長のイケメンをイメージして演技してもらえると。
 時々熱血。


〇白塚 澪♀(しらつかみお)20代前半
 ふわふわしたOL。素直で穏やか。
 清楚系王道ヒロイン。
 綺麗で可愛い私立大学のテニサーにいる感じをイメージして演技してもらえると。


〇安藤♂20歳から23歳くらい ※兼可
 ネオン街のキャッチ。態度と口調が軽い。
 玲児とは昔から仲が良い

〇大場♂or♀40代後半から50歳くらい ※兼可
 玲児の親変わり。とにかく優しい。
 かつてはバーテン、今は喫茶店のマスター

〇白金♂60代 ※兼可
 「白金組」の組長。
  義理と人情を重んじる昔ながらのヤクザ。関西弁
  普段は優しいが怒ると怖い

〇橋本哲司♂(はしもと てつじ) ※兼可
 斉藤の元同僚

〇橋本桃子♀(はしもと とうこ) ※兼可
 橋本の妻

〇瀬良♂50代
 ベテラン刑事。玲児の元上司。

・宗司♂
 斉藤の父、刑事



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OP

◆墓地
◇花を手向け、線香をあげる斉藤
◇後ろから登場する桃子

桃子 またいらしてたんですか?
斉藤 桃子さん・・・
桃子 二人の月命日・・・
斉藤 ・・・
桃子 主人もあの子も。もちろん私も、あなたを恨んでなんかいません
   もし恨むとしたらこの世界全部を恨まないといけないもの・・・
斉藤 ・・・
桃子 あんな事件、誰だって防ぐことはできません。
斉藤 でも・・・
桃子 私が怖いのは、あの事件を忘れられることです。世間にとっては2人の一般人が死んだ1つの事件だって思うのでしょうけど
   私にとっては、大切な人が1人死んだ2つの事件が同時に起きたんです。
斉藤 ・・・
桃子 瀬良さんから聞きました、刑事辞めるんですか?
斉藤 ・・・。はい。
桃子 あの人も実は元々警察になりたかったわけじゃないんです。
斉藤 そうだったんですか。
桃子 あの人、小さいころから車が好きでレーサーになりたかったんですって。
斉藤 初めて聞きました
桃子 でもね、ある日映画のカーチェイスを見てパトカーを運転したいって思ったらしいんです。
   車も運転できて、人も助けられるなら。レーサーよりかっこいいかもって。
   現実でカーチェイスなんか滅多に起こらないのに。
斉藤 子供の夢なんて、そんなもんです。
桃子 レーサーは無理かもしれないけど、車の整備士にでもなってたら、こんなことにはならなかったのかなって
   主人が好きで集めていた車のカタログやミニカーを見るたびに思うんです。
   形見です。よかったら。

◇斉藤にミニカーを渡す桃子

斉藤 ・・・
桃子 最新式の外車だそうです。鍵がなくてもエンジンが掛かるんだって嬉しそうに話してました。
   変な思い出ばっかり頭に残ってしまうのはなぜなんでしょうか?

5話

◆車内
◇運転する瀬良
◇助手席の斉藤はタバコに火を点け、ミニカーを眺める

瀬良 やめたんじゃなかったか?
斉藤 この車に乗ったら吸わないといけない体になってるみたいです。
瀬良 そうか・・・
斉藤 白金さんの容態は?
瀬良 安心しろ、あそこの連中は全員無事だ。
斉藤 そうっすか
瀬良 あのな、斉藤。
   俺は無理にでもお前に刑事を続けてほしいわけじゃねーんだ。
   でもな、お前がこれからどんな道に進むにしてもこの事件だけは終わらせないといけない。
斉藤 ・・・
瀬良 逃げちゃいけねーと思うんだ。
斉藤 はい。



瀬良 さて、どうなるかわかんねーが。お前の刑事最後の仕事だ。

◇車から降りる斉藤は一人で病院に入る



◆喫茶「大場」
◇カウンターで新聞を読む大場
◇白塚登場

大場 いらっしゃい。あれ?佐山ちゃんとこの・・・
白塚 こんにちは。
大場 深刻な顔・・・
白塚 斉藤さんと3日も連絡が取れません。何か知ってますよね?
大場 ・・・。ふぅ。そこ、座って。



大場 なんで、レイジくんが刑事を辞めたか。知ってる?
白塚 わかりません
大場 君にも言ってなかったんだ・・・
白塚 あまり昔のことは話さなくて
大場 去年起きたアーケード銃乱射事件。覚えてる?
白塚 はい・・・
大場 当時からレイジくんは捜査2課、いわゆる暴力団担当だった

◇回想◇
◆5年前

斉藤 今日から配属になった斉藤です。よろしくお願いします。
瀬良 おぉ、お前か。よし、行くぞ。
斉藤 え?
瀬良 課長!ちょっと出てきます。



瀬良 国分町には2つの大きな暴力団事務所がある「白金組」と「石堂会」だ
斉藤 聞いたことがあります
瀬良 このでかい2つの組があるからチンピラも小さな組も目立った悪さができねーんだ。
斉藤 だからってその2つは放置してていいんですか?
瀬良 ははは、会いに行ってみるか?
斉藤 へ?
瀬良 組長に会いに行ってみるか?
斉藤 そんなに簡単に会えるんですか!?
瀬良 行くぞ



斉藤 あんな人が組長だなんて・・・
瀬良 ははは

◇回想の回想◇

白金 まーた若いのが入って来たもんやな・・・
   なぁ、若い婦警もおるやろ?今度紹介してや。瀬良のあほは全然紹介してくれへんねん。

◇回想の回想終了◇

瀬良 まぁ、あんなもんだ。
斉藤 もうひとつの「石堂会」もですか?
瀬良 そっちはちょっと違う。白金のおっさんのとこが老舗の商店街だとしたら、石堂会は・・・イオンだな
斉藤 イオン・・・
瀬良 ちょっとたとえが悪かったが、あっちは利益の為ならなんでもする。だから昔ながらのシノギをする白金組が目障りみたいだ。
   そのせいか今、白金組と石堂会の間はかなり緊張しててな。
橋本 瀬良さーん!
瀬良 おう、お前も外周りか?
橋本 はい!そっちは今日来るって言ってた新人くんですか?
斉藤 斉藤です、よろしくおねがいします
橋本 橋本です、よろしくね。


大場 よく3人でここにも飲みに来たんだ。


◇回想再開◇

大場 ちょっと、飲みすぎじゃない?

◇桃子登場

桃子 やっぱりここにいた・・・
白金 お、桃子ちゃん。今日も可愛いなー。
大場 ほら、橋本君。奥さん迎えにきたよー?
瀬良 おい、橋本。お迎えだ。
橋本 あ?桃子・・・。
斉藤 ずいぶんお腹。大きくなりましたね。
瀬良 予定日はいつだった?
桃子 来月ですよー。ほら帰るよ?
橋本 うー
白金 生まれたら、ぎょーさん包まんとあかんなー
斉藤 ヤクザが警察にですか?
白金 出入り業者みたいなもんやろ
瀬良 たしかに


大場 橋本君の子供も無事に生まれて、みんな順調だった・・・。


◇回想再開◇
◆1年前

橋本 石堂会に動きがありました。代替わりによって過激派志向が加速しています。白金組との関係も更に緊張するかと・・・
瀬良 ・・・
斉藤 白金組には目立った動きはありませんでしたが、FAXが届いたそうです。
橋本 やっぱりそっちにも行ったか
瀬良 「曖昧だった縄張りを明確にする」か
橋本 事実上の宣戦布告です
瀬良 二人とも自分の身の安全を第一に考えて動けよ
斉藤 はい
橋本 ・・・


大場 そして、あの事件は起きてしまう


◇回想再開◇

瀬良 悪いな、非番だってのに
斉藤 大丈夫っす。橋本さんの息子さんが幼稚園の卒園式ですからね、仕方ないっす。
瀬良 そんな時くらいは仕事のことを忘れさせてやりたいしな。引き続き頼む。
斉藤 はい

◇瀬良退場



◇電話の音

白金 おぉ、レイジ。
斉藤 お疲れ様です、どうかしましたか?
白金 うちの若いもんの情報でな。石堂の連中がカチコミかけるらしい。
斉藤 白金さんのとこにですか?
白金 いや、2つ候補があるらしくてな。ひとつは国分町の大沢組。
   もうひとつがアーケードにある新興の組や。
   ワシらとしても無駄な動きは取れなくてな、お前らでなんとかしてくれ。
斉藤 それは、今日ですか?
白金 すまんの、そこまでの情報は掴めてないんや。
斉藤 わかりました、ありがとうございます。

◇電話が切れる

斉藤 大沢組は仙台のナンバー3。潰すとしたら間違いなくそっちだ。





◆大沢組事務所前

斉藤 事務所に来たところで何も情報が掴めない・・・。瀬良さんに伝えたほうが良かったか?

◇電話の音

瀬良 おい!斉藤!アーケードで抗争が起きた!!今すぐ来てくれ!!
斉藤 えっ!?

◇回想終了◇

大場 アーケード銃乱射事件の負傷者は16人。ほとんどは暴力団構成員だったけど、その中には2人だけ一般人もいた。
   幼稚園の卒園式帰りにレストランで食事をしていた親子・・・。
白塚 それって・・・
大場 橋本くんとその子供。
白塚 それに責任を感じて斉藤さんは・・・
大場 ・・・
白塚 でも今更またこの事件で斉藤さんが呼ばれなくちゃいけないんですか?
大場 実行犯は捕まったんだけど、取り調べでしばらく拘留されていた石堂会の組長が先週釈放されたみたいでね。
白塚 ・・・
大場 レイジくんは当事者だから。
白塚 刑事を辞めたなら関係ないじゃないですか!どうして斉藤さんが・・・
大場 ・・・
白塚 私、斉藤さんに会ってきます。警察に行けば会えますよね?




◆病院
◇ベッドに横になる白金

斉藤 白金さん・・・
白金 おぉ、レイジか。
斉藤 大丈夫ですか?
白金 年甲斐もなく暴れるもんちゃうな。全身バキバキや。
斉藤 大丈夫、そうですね・・・
白金 あいつら。爆弾、ポストにいれよって遠くから無線のスイッチ押してドーンや。
   カチコミも随分ハイテクになったもんやで。なんやレイジ、刑事やめたんやなかったんか。
斉藤 ・・・
白金 ははは、まぁええわ。ったくあいつらは極道っちゅーもんがわかっとらんわ。
斉藤 すみません。俺が中途半端なせいで。
白金 あん?お前なんや勘違いしとるんちゃうか?
斉藤 ?
白金 ワシも瀬良もな。自分で決めて自分で動いとんのや。その結果で起きたことに誰がお前を攻めんねや。
斉藤 ・・・
白金 それはな、橋本もそうやったと思うで。
斉藤 くっ・・・
白金 でもな、お前が刑事を辞めようが続けようが。ケジメをつけなあかんことなんやろ。
   だったらこの胸くそ悪い事件はお前が決めてお前で終わらせ。
斉藤 はい・・・



◆車内
◇乗り込む斉藤、運転席に座っている瀬良

瀬良 どうだった?
斉藤 元気そうでした。

◇走り出す車



◇深夜のアーケード、人通りはほとんどない。道端には花が手向けてある。
◇停車して煙草に火を点ける瀬良

瀬良 お前の父さん。
斉藤 ?
瀬良 俺が刑事になったときの先輩でな・・・
斉藤 その話。何回も聞きましたよ?
瀬良 まぁ、久しぶりに聞けよ。
斉藤 そうですね。久しぶりに。
瀬良 「前に進む時はまず後ろを振り返れ。捜査もそうだが人生もな。」よく言われたもんだ。
斉藤 ・・・
瀬良 お前を補導したときに斉藤さんの息子だって知ったときはびっくりしたなー。
   警察になるって決めた時は素直に嬉しかった。お前と仕事ができて本当に良かった。ありがとな。
斉藤 どうしたんですか?急に(軽く笑って)
瀬良 よし!もういいだろ。お前の最期の仕事はここまでだ。退職願は上に提出しておく、あとのことは任せろ。
斉藤 ・・・。瀬良さん。
瀬良 ん?
斉藤 俺の退職願はまだ上に出さないでください。
瀬良 なに?
斉藤 ケジメを付けようと思います。石堂会にも、自分にも。
瀬良 そうか。
斉藤 もう一度後ろを振り返ります。前に進むために。



◆喫茶大場 前 朝
◇喫茶店を見つめながらタバコを消して歩き出そうとする斉藤

安藤 おはようございます
斉藤 初めて正しい時間におはようって言われたな
安藤 ふざけてる場合っすか・・・。なにしてたんすか?白塚さんほったらかして・・・
斉藤 また店の名前変なのに変わったのな。オーナーが中国人だからか?
安藤 なんのつもりなんすか?急にいなくなって、なんの説明も無しにまたフラフラ戻ってきて!
斉藤 ・・・
安藤 そんなに俺らのこと信用できないですか?俺はレイジさんのこと信用してんのに!
斉藤 すまん・・・
安藤 なんもわかってねーんすよ。白塚さんなんかレイジさんがいなくなってから毎日探してんすよ!?
斉藤 悪かった。でも、頭の中がごちゃごちゃしてて。そんな状態でみんなに会ってもうまく話せる気がしなくて・・・
安藤 ・・・あっ(何かに気付く)
斉藤 でも今は違う。ハッキリわかったんだ。自分がどうしたいのか、どうなりたいのか。
   もし、許されるなら。許されるなら、一つ事件を解決したらまたここに戻りたい。だから白塚さんに伝えてくれ。
安藤 その先は本人に言うべきなんじゃないですか?
斉藤 え?

◇斉藤の後ろに立つ白塚、無表情。

斉藤 白塚さん・・・
白塚 ・・・
斉藤 すみませんでした
白塚 ・・・許しません(つぶやく)
斉藤 くっ・・・
白塚 絶対許しません
斉藤 そう、ですか
白塚 ちゃんと戻ってこないと、絶対許しませんから。
斉藤 白塚さん・・・
白塚 斉藤さんはちゃんとここに戻って来て、就職も決めて、毎日を平和に過ごして!
   私と結婚して、一姫二太郎で!老後は二人でいろんなところに旅行して!
   孫に囲まれながら幸せな最期を迎えるんです!!だから!
斉藤 ・・・
白塚 だから、ちゃんと戻ってこないと。許しませんから。
斉藤 ・・・。はい。

◇斉藤の電話が鳴る

斉藤 もしもし
瀬良 斉藤。若いのから情報が入った。またあの時と同じFAXが県内ほとんどの組に流されたらしい。
   それに石堂の構成員が最新の自動車を用意しているのが分かってな。
   今時車で突っ込むとは・・・。やつらも必死だな。
斉藤 それだけじゃない気がします。白金さんのとこを襲った時は手の込んだ攻撃をしたのに・・・。
   きっと、何か仕掛けてくるはずです。
瀬良 斉藤。時間がない。またあの時と同じようなことが起きたら・・・
斉藤 分かってますよ!
瀬良 ・・・
斉藤 すみません
瀬良 いや、俺も悪かった。
斉藤 奴等が用意しているのは最新の車なんですよね?
瀬良 あぁ、足がつかないようになのか輸入車を数台・・・
斉藤 ダンプカーやトラックじゃなくてですか?
瀬良 ?
斉藤 突っ込むなら大型の車にしませんか?
瀬良 たしかに、おかしいな。
斉藤 奴らが白金組を襲った方法は爆弾を使ったやり方です。狙いはきっとバッテリーやエンジンです。
   俺たちが警戒してるから材料を手に入れることができずに、材料を変えたんですよ。
   最新の車なら電波を使いキーレスでエンジンをかける車もあります。遠隔での爆破には必要なものがそろってるんです!
瀬良 車をまるごと爆弾にしようってのか。
斉藤 今すぐ家宅捜査です!違法改造車の所持で奴らを逮捕できます!


◆石堂会 事務所前
◇たくさんの警察官が事務所を取り囲む

瀬良 これで全部終わる。
斉藤 はい。

◇令状を持ち時計を確認した捜査員が他の捜査員に耳打ちをする複数の捜査員が段ボールを抱え重装備の警察官とともに事務所へ入る、
しかし車にはなんの改造もされていない

斉藤 どうして・・・
瀬良 情報が漏れたのか?
斉藤 そうならないために一部の人間以外は当日まで知らされていなかったはずです。
瀬良 もしかして・・・
斉藤 ?
瀬良 桃子さん・・・
斉藤 話したんですか?
瀬良 昨日の夕方に橋本の墓参りに行ったんだ。その時偶然会って。


◇回想◇

桃子 この世界全部を恨まないといけないもの・・・

◇回想終了◇

斉藤 くそ、これじゃ前と同じじゃないか!

◇走り出す斉藤


◆アーケード
◇花を手向ける桃子、駆け付ける斉藤

斉藤 桃子さん・・・
桃子 斉藤さん
斉藤 両手を挙げてください
桃子 ・・・
斉藤 桃子さん、あなたが石堂会の連中に渡されてたものは持っているだけで犯罪になるものです。
桃子 なんでもお見通しですね。
斉藤 あなたが報復しようとしているこの事務所はもう石堂会の系列じゃありません。
   石堂会に情報を提供する代わりに凶器を渡されたんですよね?
桃子 ・・・
斉藤 今すぐあなたを逮捕することだってできます。だからそれを渡してください。
桃子 ごめんなさいね。斉藤さん。

◇コートの前を開く桃子、爆弾が巻き付けられた桃子の身体が現れる。通行人が悲鳴を上げて逃げ惑う。

斉藤 !?
桃子 私にはもう大切なものがありません。だったらこの命を使って事件を世間に忘れられないために、もう一度ここで事件を起こします。
斉藤 バカなことを言わないでください、それで二人が喜ぶと思いますか?
桃子 黙って!!あなただって逃げたじゃない!!ここのヤクザもそうよ!くだらない抗争に一般人を巻き込んだくせにいまだに残ってる!!
斉藤 落ち着いてください桃子さん!
桃子 私はね、この世界を恨んでるの。だから仕返しする、このどうしようもない世界に。
斉藤 たしかに、この世界はどうしようもない程にくだらない。
桃子 ・・・
斉藤 それこそ、恨む価値のないほどに。
   シスターの癖に出会い系のサクラをやってる女もいれば、自分の子供を質にいれるバカ親。
   人のアイデアを盗む糞みたいなデザイナーもいれば、弱ってる人に付け込む詐欺師。
桃子 何が言いたいの!
斉藤 どうせ死ぬんだろ?じゃあ最後まで聴けよ。
桃子 ・・・
斉藤 そんな女に惚れるバカもいるし、そんなバカ親をずっと待ってたガキ。
   騙されてもデザインを描き続ける女々しい男、何回も騙されるバカ正直な女。
   みんなこのくだらない世界を必死に生きてんだよ!
   あんたの息子も旦那も必死に生きて、生きようとしてここで死んだんだよ!!
   だから、後ろに下がってもいい、落っこちてもいい!あんたも俺も、あの二人の分までこのくだらない世界を生きなくちゃいけねーんだよ!!
桃子 ふふふ。
斉藤 ?
桃子 あの人があなたに期待してた理由。わかった気がした。

◇スイッチに手を掛ける桃子

斉藤 やめろ・・・
桃子 ありがとう。

◇手向けた花を見つめる桃子

桃子 今行くわ。あなた・・・
斉藤 やめろ!!

◇スイッチを押す桃子、通行人が悲鳴を上げる。



◆病院 過去
◇ベッドに横わたる宗司。隣に座る斉藤

宗司 レイジ。
斉藤 お父さん!?
宗司 お前に教えたいことがたくさんあったんだけど・・・。
斉藤 え?
宗司 この町にはお父さんのお友達がいっぱいいるからな。そいつらが全部お前に教えてくれるはずだ。
   ごめんな、お父さん、もうダメみたいだ。
斉藤 お父さん!?お父さん!
宗司 レイジ、大きくなったな・・・
斉藤 俺、絶対お父さんを刺した奴捕まえるから!だから死なないで!!お父さん!!
宗司 そんなくだらないことしなくていい。お前はお前が決めた道を・・・歩いてくれ。
斉藤 ・・・。お父さん?お父さん!?お父さん!!

◇回想終了◇

◇爆弾は爆発していない。力が抜けて倒れこむ桃子。
◇「確保!!」と叫び警察官が桃子を押さえる。

斉藤 どうして・・・
白金 よう、レイジ。
斉藤 白金さん?
白金 うちが襲われたのも同じ手口やった。同じ仕掛け使っとったみたいやな。
   あいつらがカチコミに来てから系列の組事務所、全部で妨害電波流してるんや。

◇窓を見上げる白金、窓から頭を下げる櫻田が見える

斉藤 よかった・・・

◇倒れる斉藤、佐山が運転するバイクが停まる、後ろから降りた白塚が駆け寄る

白塚 斉藤さん!
白金 大丈夫、寝てるだけみたいや


ED

◆車内
◇運転席に座る瀬良、助手席に座る斉藤
◇ラジオ「アーケードで起きた爆破未遂事件の容疑者は容疑を認めており・・・」

瀬良 ほんとにやめるんだな
斉藤 はい。お世話になりました。
瀬良 これからどうすんだ?
斉藤 十分後ろは振り返ったつもりです、だから前に進もうかと。
瀬良 そうか・・・。まぁ転職活動、頑張れよ。



※ここからテンポ良く
◆面接会場

男 次の方は・・・、内藤さん!内藤レイジさーん。
斉藤N 転職とは地獄の道を進むようなものだと言う。
    まさにその通りだ。なんとか履歴書が通っても、面接官には名前を間違えられるし。

◆喫茶大場

大場 また・・・ダメだったの?
斉藤 はい、落ちました・・・。
白塚 さぁさぁ切り替えて!今回の面接の振り返りと反省をしましょう!

斉藤N 後退しても、落ちたとしても、俺はこのくだらない世の中を前に進んでいこうと思う

◇ミニカーが就活用の鞄の中でハンカチとおまもりに挟まれている


5話「バック・ドロップ・ギア」

END
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