【閲覧注意】アレクセイ・コノエ×アーサー・トライン


(最高の社交ダンスなコノアサを見せてもらったから自分が書く必要はなくなったんですが言い出しっぺということで一応……。肝心のダンスシーンはそれっぽく書いてますが知識0奴が書いたので笑って流してください。割合も少ないです。神が成立済万年新婚夫婦verでしたのでこちらは無自覚両片想い夫婦(概念)verでお送りします)


 コノエとアーサーは揃って首を傾げた。傾く方向も角度も同じだったのでそういった玩具の人形を彷彿とさせる。

「いやまぁ踊れなくはないが。どうだい?」
「僕もですよ。長いことやってませんねぇ……」
「えっ二人共社交ダンスできるんですか?」
「私の世代はなんというか……できることが必須みたいなところがあったからね」
「同じですね。とは言っても僕達の代はだいぶ下火だったですけど」

 僕より下は趣味でやってる人しかいないんじゃない? と笑うアーサーにルナマリアは首肯を返す。
 プラント生まれのルナマリアでさえ授業で社交ダンスをすることはなく、卒業パーティーも各人のパッションを表現するような、つまるところルールも何もない皆が楽しいダンスの時間が流れただけだった。アスランやラクスのような上流階級出身者が通う学校はしっかりとやっていたとは思うが。

「俺なんてアカデミーに入ってから聞きましたよ」
「へぇ〜地球ではやらないのかな?」
「いや、今もしている筈だな。一般人は社交ダンスといえば競技ダンス、という捉え方になっているらしいが」
「社交ダンスが競技に? そういえば聞いたことあったかも」
「はぇ〜……確かに映えますもんねぇ。フィギュアスケートみたいってことですよね?」
「あぁ。息のあったタイミング、華美さ、難易度、アクシデントの対応の旨さ……他にもあるが、そういった条件で点数をつけて順位を決める」

 指を一本ずつ立てながら説明している姿は志願前が教師だったというのも納得がいく板のつきようだ。

「そういえばなんで社交ダンスの話になったんだい?」
「今度オーブでコンパス主催という体の催しがあるじゃないですか」
「あぁ、アレね」
「隊長が正式に総裁のパートナーとして参加するってことになったんですけど……」
「……あぁ成程。だからソファーに倒れ込んでいるのか」
「ふぇ? ……おァ、」
「副長シーーッ!」

 コノエの視線がアーサーの背後へ滑るのを追ってみれば、そこには死に体のようにソファーに横になっているキラの姿があった。
 叫びだす寸前にシンがアーサーの口を抑えてなんとか留めさせる。

「20分前までアスランが鬼教官みたいに隊長に叩き込んでたんですよ」
「あんなんしなくちゃいけないなら俺達は社交ダンスやらなくていいや……って話をしてたという訳です」
「全然気にしてなかったけどそういえば居たなぁ」
「ついさっき呼び出しがかかって消えましたけどね」

 顔だけ見れば華麗な、だがやると決めたら確実に叩き込むまで追撃してくる青年を思い返す。あのザラ家の嫡男なのだから社交ダンスも完璧にこなせるだろう。
 多忙な身の上なのに態々キラに教える為に来たのだろうから彼の世話焼きぶりには恐れ入る。単純に様子を見に来たついでかもしれないが。

「じゃあ二人で踊ってくださいよ」
「……あのさシン。僕達男同士なんだけど?」
「? 社交ダンスって二人でするやつなんですよね?」
「そこからか……。社交ダンスは基本的に男女のペアで踊るものなんだよ」
「……まぁ僕は女役もできるけどね」
「えっできるんですか?」
「流れでね……。当時は女性に格好悪いところは見せたくないってことで男同士で練習してたんだけど、僕って成長期が遅かったから女役をやらされてたんだよ」
「あー断れなさそうですもんね」
「そうだけどさぁ……」
 
 どストレートな物言いに肩を落とす。確かに頼まれたら断れない性質ではあるがここまで率直に言われると少々凹むものがある。

「……やっても構わないがここではぶつかる危険があるからお断りさせてもらおうかな」
「確かにスペースが足りないですもんね」
「……そういえば第2レク使って特訓してたな。そういうことだったのか……」
「うん。結構大股で移動するからねぇ」
「残念。じゃあ機会があったら見せてくださいねー」
「やー無いことを祈っておくよ……恥ずかしいし……」

 結局起きないままだったキラを放置して去るのは忍びなかったが、今動かしてもゾンビのように歩きだすのが目に見えたので大人しくシンとルナマリアに託して談話室を後にした。


「どのくらい小さかったんだね?」
「……その話続けます?」
「一番気になったのはそこだったからなぁ」
「えーっ」

 酷いですよぉという台詞とは裏腹に表情は明るい。今は平均身長だからか気にする話ではないのだろう。
 談話室から1ブロック離れたところからそれぞれ違うルートで見回りをしてこうして合流した後、一面に宇宙が見える第3レクリエーションルームで報告がてら他愛ない話を続けていた。
 今は二人の他に誰もいない。ただ話すだけだからと天井灯はつけていないので部屋の中まで宇宙が広がっている。
 コノエは余暇を一人で過ごす方を好んでいるが、いつでも一人きりがいい訳ではない。こうやって明るく楽しく話してくれる相手の聞き役をするのも気に入っている。
 対するアーサーは人の輪に加わることが好きである。鬱憤が溜まった時を除けば誰彼構わず話すより少人数で話し役と聞き役を切り替えたいタイプだ。
 つまるところ、軍人としてのスタンスを除外しても二人の相性はとても良かった。

「成長期が来るまでは160cm前半でしたよ。163……だったかなぁ……」
「では大分伸びたなぁ」
「もー伸びなかったらどうしようとずっと不安でしたよ」
「ははっ」
「笑い事じゃないですよー!」

 希望を言うならあと数cm欲しかったですけどねぇとボヤくのを聞きながら、ふと周りを見て気づく。

「おや」
「ん? どうかしましたか?」
「ここならできそうじゃないか?」
「はい? ……もしかしてさっきの『アレ』ですか……?」
「あぁ。行けそうだろう?」
「いやまぁできそうですけど……」

 せっかく終わった話なのに掘り返します? と言いたげな視線を無視してコノエは寄りかかっていた壁から背中を離せば、優しい副官は一つ溜め息をついてその背に倣った。


 コノエとアーサーは軽く準備運動をした後視線をヒタ、と合わせる。
 差し出された手に手を乗せれば軽く握られる。引き寄せられる力に呼ばれるまま3歩進み、礼を取る。そのまま腕の中に収まり、右手をコノエの左手に絡め、もう片方の手を二の腕の下の方に乗せて相手の呼吸を測る。

「久しぶりだから大目に見てくれよ」
「こちらこそ。……ではお願いします」
「あぁ」

 予備足を踏み出し、続いて視線の方向へ同時に移動する。
 ナチュラルターン。アウトサイドチェンジ。……。
 限られたスペースを器用に回りながらステップを踏んでいく。
 初めてペアを組んだとは思えない程息のあった足の進みにコノエもアーサーも内心驚いていた。ここまで上手くいくとは。
 コンパスの制服は両脇に膝上までの長い裾がある為、二人がくるりくるりと回る度に白地と黒地がヒラ、ヒラと舞うように翻る。
 途中、背中に添えられた右腕に力が籠るのを感じ、アーサーは敢えてコノエの方へ更に体を寄せて了承の合図をする。お互いの息で呼吸してしまいそうなくらい、よりコノエの体温を感じて……少し気恥かしくなるのを抑えながら。
 一方のコノエも意図が正しく伝わったのを感じる。自分の方が若干ながら上背がある為、緑青色の睫毛が震える様子すらよく見える。
 それに、表に出すのをなんとか抑えてはいるがこの歳になって同性同士で踊るとは思わなかったのだろう、暗がりでも目元が紅く染まっていた。
 よく笑いよく驚く姿ばかり見てきたのでそういった表情はとても新鮮で……なんとなく気分が良い。

(……さて、やるか)

 アーサーの背中を支えながら左足へ軸を移す。そのまま床側へと上半身を寄せれば、彼もコノエへ自らを預けつつ右足に力を込めて体を反らした。
 僅か数秒の停止時間。見下ろし、見下される。反らした所為で髪が後ろに流れてアーサーの額がいつもよりよく見える。
 全身に星を纏う姿が、互いの目に焼き付いた。

「あは……」
「ふ……」

 つい、二人して笑ってしまった。全く何をしているんだか。
 黒いキャンバスの上に星々を盛大にまぶしたかのような風景をバックに男二人が踊っている。なんて笑える光景だろうか。
 誰かに見られたら恥ずかしいことこの上ないのに、何故かは分からないけど、辞められない。
 腰をやらないように慎重かつリズミカルに姿勢を戻して再びステップを踏む。ナチュラルスピンターン。リバースターン。……。
 体を離して再び礼を取り、あっという間の時間が終わりを告げた。

「うぁ……! 久しぶりに回ったからか腰が微妙な感じ……!」
「やってはいないと思うが大丈夫か?」
「あ、はい。大丈夫ですけど暫くはやらなくていいですねぇ……」
「僕もだ。意外と疲れるのを忘れていたよ」

 大袈裟に息を吐いて体を伸ばすアーサーに苦笑しながらコノエも襟元を開けて空気を入れる。
 競技になるくらい体を動かすので軍人とはいえ1曲分を踊れば体が温まるくらいの運動量にはなるのだから、社交ダンスというのは侮れない。

「リードしてくれてありがとうございます。少し不安なところがあったので」
「それを言ったら僕もだよ」
「ふへへ……。しっかし何してるんでしょうね、僕達」
「本当になぁ……。まぁ、」
「まぁ?」
「思いの外楽しかった」
「……僕もです」

 部屋の端に退避されておいた軍帽を回収して被り直し、襟元を正せばいつもの格好だ。
 それじゃあ戻りましょうかぁと、いつもの少しだけ間延びした声掛けに頷き部屋を後にした。
 残されたのは煌めく星空が敷き詰められたレクリエーションルームだけだった。
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