月強奪駆け落ち未遂事件


事が起こったのは二十世紀後半、一組の真祖の逢引の発覚が始まりだった。
片方は新しき真祖、デモンテリー。もう片方は古き真祖、クウァエレ・V・ブリュンスタッド。
ただでさえ古き真祖への無断接触は禁止されているが、この二人は特に問題があった。
簡潔に言えばデモンテリーは無自覚に内海中の神秘を解体する問題児で、クウァエレは最古の真祖にして最後のブリュンスタッドという存在からして色々問題であり、この二人がくっ付いたらどんな被害が出るか予測出来ないからだ。
頭を抱えたルージュはとりあえず二人に接触禁止(破ったらぶっ◯す)を言い渡し、アースとアルクェイドを呼んで二人をどうするか考える事にした。
事が起こったのはその日の晩だった。二人の反応が地球内外から消失したのだ。慌てて彷徨海、霊墓アルビオン、ラナの古城など世界から外れた場所すら虱潰しに探したが見つからず、アースが何となしに空に意識を向けてみると月に妙な力場を感じ、そこに瞬間移動してみると月から魔力を吸い上げているクウァエレと球状の何かを作っているデモンテリーを発見した。
即座に捕縛し内海に連れ帰り、どうやって月へ行き何をしようとしたのか尋問して聞き出した話によると、月を目指した方法は何とアポロ11号の通った場所をなぞり、月面に刺さった星条旗ーーー人理を縫い止める錨を目印に無理矢理転移したと言う(新しき真祖は人理要素が少し混ざっている為に地球以外では人類が到達した月面にしか行けず、古き真祖は朱い月が混ざっている為に月なら問題なく暮らせる)。
そして、洗脳くん0号で「無駄が出来ない」という制限を解放されたクウァエレは月から吸えるだけ魔力を吸い神代紋様を繋げてデモンテリーに流し、強引に霊格を上げたデモンテリーは天体に見立てた宇宙船を作っていた。
そう、二人がやろうとした事は疑似天体と化した宇宙船を使った太陽系からの駆け落ちだった。
宇宙船を作成した後は自身達を地球から独立した小惑星(宇宙船を星の地殻、自身を星の内核)と再定義し、小惑星帯へ向かい足りない質量を確保。冥王星に到着後は霊子筐体と天体宇宙船の最終調整を行い彗星に新生し、木星や太陽の重力を使って加速し太陽系を飛び出す。それが二人の考えた逃亡計画の全容であった。
言いつけを破った挙げ句に仮にも月の王たる自分に無断で月を私物化した事にルージュはキレた。デモンテリーの弁解という名の惚気にアルクは盛り上がった。地球と人類に大した影響は無いと判断したアースは逃亡計画の精度を確認するために二人の判決をルージュに任せた。
悪いとは思っているが反省も後悔もしていないクウァエレ、そもそも地球に悪影響はないし月は仮想敵なんだから良いじゃんと悪いとは大して思ってないデモンテリー、擁護という名の野次を飛ばすアルクェイドとトランジスタ、怒りが振り切れて冷静に全員死刑執行する事にしたアルトルージュ、突如現れた弁護士を名乗る謎の花のお兄さん(ペット泥棒疑惑)と裁判は荒れに荒れ、被告と野次を飛ばした奴は全員アルトルージュに箱状のミンチにされた。アルトルージュの怒りはどうにか収まり、最終的には懲役千年の刑になった。
(余談だが懲役内容はアースが課した「吸血衝動の完全克服の研究」となった。アルトルージュは「罰になってない」とまたキレた)


・キャラ紹介
デモンテリー(女性型)
憧れが止まらないヤバい奴。
デモンテリーはノルウェー語で「分解(Demontering)」
未知が大好き。謎だらけな人間の文化も特に好きで、科学も魔術もよく勉強している。そこに効率や合理などなく、ただ知る事こそを喜び楽しむ。
生まれてまだ五百年も経っていない若者で年下に負ける程戦い下手であるが、新しき真祖が可能とする人工物の空想具現化が得意で、何より知識欲と好奇心とコミュ力と行動力が飛び抜けていた。
簡潔に言えばエルメロイ二世の様な観察眼を持ちオデュッセウスの様に一直線でなぎこさん並にハイテンションでパラケルススの様に善良、そんな放浪好きの学者である。あとモードレッド並に口が悪いが似非お嬢様口調で誤魔化している。
未熟故に地上にまだ出れない彼女は上陸許可を得る為に内海を渡り歩き、暇を持て余していた花の魔術師に弟子入りを申し込んだ。そして魔術と幻術を学んだ後は一人で行き詰まっていたトランジスタに「共に主を黙らせてしまう様な物を作って見ないか」と共同研究の誘いをした。科学と魔術の違いは有れど外に出たいという思いは共通しており、何より初めて自身の研究に理解を示してくれた同族を気に入ったトランジスタは開発中の吸血衝動を抑える道具の共通開発の依頼をした。
研究は難航したが、アルトルージュが持っていた死徒アインナッシュの原理を解析し、真祖の王族の記憶すら改変する催眠魔術を軸に幻術と科学を組み合わせ、遂に試作精神調整器具「洗脳くん0号」の開発に成功した。トランジスタは多重の制約と厳重な監視を受けつつも地上への上陸許可を得たが、原理の無断複製がアルトルージュにバレたデモンテリーは上陸許可を取り消されてしまった。

非常に諦めが悪く好奇心が強い彼女はその内勝手に地上へ抜け出し、彷徨海やアトラス院辺りに辿り着き、その最奥の秘術を悪意なく解析しようとして、その代償を受けて消えていく事だろう。
———月の様に静かに佇む、気が狂いそうな程強い目をした男に会わなければ。


クウァエレ・V・ブリュンスタッド
何処までもストイックな求道者。
クウァエレはラテン語で「探す(Quaerere
)」Vは(viaとかvisとか)好きな言葉を入れて下ちい。
西暦以前から生きているかなり古い真祖。
本来彼は一般的な真祖だった。星の分霊として生まれ、星の触覚としての意識が強い為に文明には興味がなく、生物の調停者として生きてきた。
それが変わったのは教会の戦士ーーーまだ聖堂教会すらない頃の異端狩りに襲われた時だった。人智を遥かに超えた力と濃い神秘を宿す武装を振るう超人にクウァエレは死闘の末に自爆に近い形で何とか勝った。その時、彼は死闘と勝利に確かな愉悦を感じた。戦いの際に何かが壊れたのか、或いは生まれ持った業に気付いただけなのか、それ以来強くなる事に非常に高い意欲を持つ様になり、その為に自身の能力の魔眼や空想具現化の精度をひたすらに上げて、世界中の英雄や神と戦い己を高め、強さの為なら人の武術や魔術すらも学び、そもそも強さとは何なのかと迷走して様々な命を観察した末に施しの英雄と同域の見識に至った。
要はカルナの様に寛容で李書文の様に闘争心が強い、そんな修羅である。言葉もカルナ並に足りなくなる時もある。
その強さは真祖の中でも飛び抜けている。三千年近く生きているだけでも王族に相応しい規模の霊格になるだろうが、そこに天人合一の思想を取り入れて瞑想し、地球との繋がりを深めて内包する神秘をより大きく濃いものにした。更に磨き上げた異能の精度も非常に高く、そこに真祖の能力を十全に発揮する為に体得した真祖の為の武術を使うので近距離も隙がない。基礎を磨き、異能を極め、短所を減らし、専用の武術を作り、全能力を余す事なく使うその戦い方は真祖として堅実で理想的と言える。ちなみに魔術は効率が悪いと判断したため戦いでは使わない。
彼の最たる所はその精神力である。どれ程強く成ろうとも吸血衝動は無くならない。そこで彼は瞑想で己の精神を鍛え続けた。心頭滅却火もまた涼し言うが、人がその境地に至れるならば無心の果てに無我の境地に至れば自身も衝動を和らげる事も出来るのでは、と考えて稽古や闘争の合間に瞑想し続けた。そして圏境を空想具現化無しで発動出来る程になった頃には吸血衝動に耐え続けられる強靭な精神を得た。
しかしそれも痩せ我慢が上手くなったに過ぎず、限界を先延ばしただけだった。アースに下った後は殆どの時間を瞑想に費やしたが、彼は悟りの域には至れなかった。闘争の愉悦と強さへの渇望を、彼は最後まで捨てられなかった。
一人の限界を感じた彼は、「光体化によって死徒の王の様に吸血を欠陥としない真祖への新生」という方法を思い付き、その方法を知る為にアースを頼った。アースも自身の研究の参考にもなると判断し、研究の実験台になる事を条件に手伝い、そして「これなら欠陥のない真祖に新生出来る」と太鼓判を押す程の方法を開発した。
だが根本的な問題として光体化での新生とは別人に生まれ変わるのと同義であり、それは事実上の自死である。正に狂気の沙汰のそれを他の四人の古き真祖は誰もやりたがらなかった。トランジスタなどは「それは自殺だ!」と止めようとした。
だが、クウァエレには最早自我の連続性すら些細であり、次の自分がより強くなるならそれで良しと受け入れていた。

———太陽の様に豪快に笑い飛ばす、全霊が喜悦に満ちた女に会うまでは。


・他のキャラについてコメント
アース
デモンテリー「地球全部を詰め込んだみたいなすごい主様ですわ〜〜!超リスペクトですわ〜〜!
……解剖してみてえなぁ」
クウァエレ「少々歪だが実に効率的に出来ている。地球があの者を王と定めたのであれば、俺はそれに従おう。(とても合理的で誠実な方なんですね。納得です)
———あれが頂か、超え甲斐がある」

アルトルージュ
デモンテリー「怖いですわ!それはそれとしてお目目が綺麗ですわ〜〜!一つくれねえかな…」
クウァエレ「その嫉妬を他者に向けてもお前は何も変わらない。意味があるのか?(その思いは本人に直接言った方がいいと思いますよ)」

アルクェイド
デモンテリー「話がとても合いますわ!恋バナで超盛り上がるし女子会に良く誘ってださいますの!
…主様の複製サンプルを近くで見るいい機会ですし、とっても楽しいですわ〜!」
クウァエレ「驚いたな、お前もある意味では星の王と同じ(作られた唯一の種)か。
是非とも手合わせしてみたい」

アルヴィシア
デモンテリー「すっげー!何これすげー!何この本!?あのちょっと貸してくれない?!本当にちょっとだけ!1ページでいいから!」
クウァエレ「返ってこないと分かりながらあれだけの情念を向けるとはな。凄まじい愛執だ、俺には真似できん(愛情が強いんですね。尊敬します)」

トランジスタ
デモンテリー「喧嘩友達ですわ〜!科学系の話は楽しいけど魔術系の話で一々アンチしてくるのが本気で腹立ちますわ〜〜〜!
————だから人の術(わざ)に貴賤も糞もねえって言ってんだろうが!!テメェの発明品全部分子単位でバラしてやろうかぁ!?!」
クウァエレ「例え誰からも理解を得ずとも、お前はその道を選ぶのか。そうか、それはきっと、とても辛く、素晴らしいことだ。
いや、お前の道は俺と違って、多くの人に認められるだろう」

真祖エレイシア
デモンテリー「あの剣の最終形態に辿り着いた二人目の人…!ちょっとお話宜しくて!?」
クウァエレ「ほう、内海に辿り着いても未だ諦めていないのか。素晴らしい、これ程の戦士にまた会えるとはな。
——俺の名はクウァエレ。さあ、名乗れ、そして俺と戦え。
…嫌なのか?そうか…」

お互い
デモンテリー「ヤベー!すげー!カッケー!きれー!(語彙力喪失)
一緒に旅したーい!」
クウァエレ「見てて飽きないか弱い生き物。とても楽しい」
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