EPOCALC‘s Hidden Basement 3


初音ミクと結婚した人の話を見た。
この方は精神的に辛い状況下において初音ミクの歌に救われ
以来『彼女』に恋していたらしい。
彼は初音ミクの人形と今でも一緒に歩いているそうな。

しかし、これに対しては好意見も多いながらも、
否定するような意見もそれなりにある。
実際の所、彼の家族は認めてないようだ。
仮に僕がそんな事をしたら、僕の親も認めないだろう。

そういう批判に対して「個人の自由だ!」と言ってボコボコにするのがTwitter民のお仕事だが、
今回は何故批判が起こるのか、考えてみる。

そもそも、何故「男が女と結婚しなければならないか」である。
子孫を増やすというのはまず置いといて、
それ以上の文化的な意味づけがある。
レヴィ=ストロースが示した通り、「女性の交換」である。

ここで「女性の」、と言っているものの、これは人類学が男視点から記述するため。
つまり一般に言えば「異性の交換」である。
あなたが女性なら男女が逆転するのに注意。

閑話休題。
女性の交換とはどういうことかというと、
結婚を親族による女性の交換とみなす、としたわけ。
A家からB家へ、B家からC家へ、...X家からまたA家へ女性が移動する、という具合。
その交換によって各親族間の関係が良好に保たれ、
特定の親族が女性不足になることもない。

これによって何十すくみにもわたる親族の繋がり=社会が発生するわけだが
これが発生するには「近親相姦の否定」がないといけない、という。
自分のところの女性は無価値だとしなければ
他の親族の女性に価値を持たせられず、
交換が発生しない、すなわち社会が回らない。
よって自分の親族の女性と結婚してはならない。
こうやってレヴィ=ストロースは近親相姦が何故否定されるのか説明した。

同様の議論で初音ミクと結婚するのに批判が加えられるのも説明できよう。
初音ミクとはどの親族にも属さない、いわば「社会の外部」から供給される存在であり、
さらに初音ミクと結婚した方が「うちのミクさん」と形容している通り
そこから供給される初音ミクという女性は十人十色で尽きることはない。
また初音ミクに限らず、二次元には多くのキャラクターがおり
しかもそれへの解釈もまた、無限大である。
これは女性の無価値化を引き起こす。
婚姻において、交換される女性は──人に対して使うのにあまり好きな言い方じゃないが──ある種の資産とみなされる。
それが外部から無尽蔵に生産されるとあっては、WW1後のドイツの紙幣と同様、無価値になる。

よって初音ミクと結婚するというのは原理的に婚姻のシステム、ひいては社会を崩壊させうるものであり
それを直感的に悟った旧世代の人たちが拒絶するのである。

しかし、人間たちを長らく支えてきた社会というシステムは、
この個人主義の世の中で、もう要らなくなってきたのかもしれない。
「誰も困らないからとやかく言うな」という批判にそれが如実に現れている気がする。
初音ミクとの結婚というのは、実は社会の消失の第一歩であるかもしれない。
僕はその消失に、大賛成である。




追記
同性婚についても同様に考えられないか?と思ったが無理がありそうだ。
まあ同性婚は古来から否定されているのはキリスト・イスラム教圏くらい、
日本でも男色が普通に流行ったというから
天動説のように聖書の価値観による偏見で
社会秩序に関わるほど本質的なものではないかもしれない。



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