「双子と星と天の川」


題名:双子と星と天の川 作者:草壁ツノ

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<登場人物>
双子兄:不問 双子の男の子。兄。しっかり者。夜空の星を捕まえるため夢の世界に訪れた。
双子弟:不問 双子の男の子。弟。怖がり。兄と一緒に星を捕まえるため夢の世界を訪れる。
アマノガワ:不問 夢の中の星空に現れた大きな龍。お爺ちゃんのような喋り方。星空を守っている。
旅人:不問 夢の中の星空に現れたコレクター。珍しいものを探して夜空を旅している。子供達の星のような心を手にしようと近付く。
N:不問 ナレーション
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<役表-5人用>
双子兄:不問
双子弟:不問
アマノガワ:不問
旅人:不問
N:不問
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<役表-4人用>
双子兄:不問
双子弟:不問
アマノガワ:不問+N:不問
旅人:不問
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■注意点
特に無し
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■利用規約
・過度なアドリブはご遠慮下さい。
・作中のキャラクターの性別変更はご遠慮下さい。
・設定した人数以下、人数以上で使用はご遠慮下さい。(5人用台本を1人で行うなど)
・不問役は演者の性別を問わず使っていただけます。
・両声の方で、「男性が女性役」「女性が男性役」を演じても構いません。
 その際は他の参加者の方に許可を取った上でお願いします。
・営利目的での無許可での利用は禁止しております。希望される場合は事前にご連絡下さい。
・台本の感想、ご意見は Twitter:https://twitter.com/1119ds 草壁ツノまで
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双子弟:「お兄ちゃん、あの星の場所まで、あとどのぐらいあるの?」
双子兄:「うーん......もうちょっとかな」

N:双子の兄弟は、一面夜空の空間にいました。
  二人は遠くに見える大きな星のある場所を目指し、星空の道を進んでいます。
  すると、突如大きな風の音と、何か生き物の声が、二人のそばを横切りました。
 
双子兄:「うわっ!」

N:巨大な影はやがてゆっくりと、双子の兄弟の前に姿を見せます。

アマノガワ:「――こんなところに......人間の子供が、一体何の用だ?」

N:双子の弟はその姿を見て、興奮気味に言いました。

双子弟:「わ。す、すごい。龍だ」
双子兄:「で、でっけぇ......」

N:双子の兄も同じように驚いていると、龍と呼ばれた生き物は二人に穏やかな声で話し始めます。

アマノガワ:「――あぁ。驚かせてしまったか。私はアマノガワ。この星空を管理しているものだ。
       ところでお前たち人間は何をしにこんなところまで来たのだ?」

双子兄:「あ、あの。俺たち。あの星を持って帰りたくて」

N:双子の兄が指さした先にあるのは、ひと際強く輝く夜空の星でした。

アマノガワ:「おお、あの星か? 星なら、なんでも好きな物を持って行くといい。これだけたくさんあるからな。
       少し減ったところで全く困らない」
双子弟:「ほんと? やったぁ!」
アマノガワ:「あぁ――だがな。この星ひとつひとつがとても大きなものだ。
       とてもじゃないが、お前たち子供が持って帰れるようなものではないぞ」
双子弟:「えっ......ど、どうしよう。お兄ちゃん」
双子兄:「そうだなぁ......どうするか......」
旅人:「やぁ。君たち、何かお困りごとかい?」

N:双子のそばで、突然誰かが声をかけました。

双子弟:「わ、びっくりした」
双子兄:「えっと、あなたは?」
旅人:「僕は旅人さ。綺麗なものを集めるためにこの夜空を旅しているんだ」

N:旅人と名乗った人物は、実体が黒い影のようにもやもやとして、かろうじて人型と分かる、不思議な存在でした。

双子弟:「へぇ。旅かぁ。すごいね!」
旅人:「いやいや、そんな大したものでは無いよ」
双子兄:「きれいなもの......あ、もしかして、星とかも持ってるんですか?」
旅人:「星かい? ああ、たくさん持ってるよ!――もしかして、君たちは、あの星を手に入れたいと思っているのかい?」
双子弟:「そうです!」
旅人:「そうかい! いやぁ、あの星はどれも綺麗だものねぇ。君たちの気持ちはよぉく分かるよ。
    ......どうだい?もし、君たちが僕の欲しい物をくれたら、僕が持っている星を譲ってあげてもいいよ?」
双子兄:「ほんとですか?」
旅人:「あぁ、ほんとだとも」
双子弟:「え、それで......おじさんは何が欲しいんですか?」
旅人:「僕かい? ふふふ、僕はね......」

N:そう呟きながら、旅人の口元がにっこりと笑みを形作りました。

旅人:「君たちのその星のように輝く、《心》が欲しいのさ!」



N:夜空の道を、双子が走っていました。その後ろを、実体がおぼろげな人影が追いかけてきます。

旅人「ま~て~子供達ぃ。どこへ行くんだぁい?」
双子弟:「はぁはぁ。お、お兄ちゃん!あいつ、追いかけてくるよ!」
双子兄:「はぁはぁ。いいから、早く走れ!」
旅人「子供達ぃ。僕のコレクションになってくれぇ。僕のコレクションとして、これから一緒に過ごそうよぉ」
双子弟:「お、お兄ちゃん......怖いよ!」
双子兄:「ハッハッ。大丈夫だ、俺が、守ってやる」

N:すると、夜空に響き渡る唸り声をあげて、巨大な龍が浮かび上がりました。

旅人:「おお、びっくりした。アマノガワか......これは厄介な奴に見つかったな」
アマノガワ:「貴様はこんなところで何をしている。ここは私の領域だ、お前がうろついていい場所ではない」
旅人:「あっはっは。いやすまないね。昔から欲しいものがあるとすぐ遠出したくなる性分でね」
アマノガワ:「早く帰らないと貴様を流れ星にしてしまうぞ。大気圏まで落ちて燃え尽きる。
       それでも良ければ私が貴様を星に変えてやろう。どうだ?本望だろう」
旅人:「いやいや恐ろしい。僕はまだまだ生きていたい。人間の子供達!実に残念だぁ。
    君たちをコレクションに加えてあげたかったぁ。もしまた君たちの夢で会う事が出来たら、その時は仲良くしてくれぇ。それじゃあ、またねぇ」

N:そう言うと、旅人は煙のようにふっとその場所から居なくなりました。

アマノガワ:「......すまないな子供たち。あれはこの夜空に住まう厄介なならず者の一人だ。
       あぁやって迷い人を見つけるとこの星のように自分のコレクションにしたがる。なんとも困ったやつだ。
       だが私が今回こうしてきつく叱っておいてやったから、しばらくは君たちの夢には現れないだろう」
双子弟:「ありがとう、アマノガワさん!」
アマノガワ:「良いということだ。時期に夜が明ける。君たちの眠りも明けるだろう。
       さあ、良い子たちはもう帰る時間だよ。この先の星の階段を下って、君たちの元いた世界に帰るといい」
双子兄:「アマノガワさん......」
アマノガワ:「夜空を見上げるたび、たまにでいいから私のことを思い出しておくれ。
       私はまた次の夏の夜に、星の川となって君たちの前に現れるだろう。
       そのとき、私の名前を呼んで欲しい。そうしたら、私は君たちの呼びかけに、体の鱗を光らせて応えよう」
双子弟:「うん、きっとまた、夏に!アマノガワさんのこと、ぜったい思い出すから」
アマノガワ:「あぁそれは嬉しいな。ではな、気を付けて帰るんだぞ坊やたち」
双子兄:「うん、ありがとう!アマノガワさん!」
アマノガワ:「おっと、そうだ。これは餞別だ!」

N:アマノガワは自身の尾をしならせて勢いよく振るうと、二つ、光る小さな何かを双子に向けて寄こしました。
  それは軌跡を残しながら二人の衣服のポケットに吸い込まれ、それに気づかないまま二人は夜の世界を後にしました。

シーン切り替え

双子兄:「......あー......?」
双子弟:「......くー、すぴー」 

N:窓から指す朝日で目を覚ました双子の兄は、ベッドから放り出され、頭から床に落ちた状態でむにゃむにゃと目を覚ましました。
  弟は兄に続くように、ベッドの上で「ん......?」と体を起こし、眠そうに瞼をこすっています。

双子兄:「......あえ。俺たち......。二人で夜空に冒険に行って......あれ?」
双子弟:「んん。......お兄ちゃんも、覚えてるの? さっき見てた夢のこと......」
双子兄:「あぁ、でも最終的においかけられて、それで......」

双子弟:「いたっ。なに? なんかポケットに入ってる」
双子兄:「え?」
双子弟:「これ、なんだろう」

N:そういって少年が手に取ったのは金平糖のように小さな石でした。
 しかしその石は内側で白く光が明滅しており、ほのかな熱を発していました。

双子兄:「もしかして、星?」
双子弟:「そうだよ!あの時、アマノガワさんがくれたんだ!」
双子兄:「あ、俺にもある......すげぇ。俺たち、星を持って帰ってこれたんだよ」
双子弟:「うん、すごいねお兄ちゃん!これ、僕たちの星だよ!」
双子兄:「あぁ......大事にしないとな」

N:そういって、二人はその星を大事そうに手の中に握りしめました。
 温かなその星はまるで二人の将来を祝福するように、二人の体をじわりじわりと温めるのでした。

<完>
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