姫様VSビーストヌオー戦の前口上


 それとの戦いは大きな禍根を残す。
そう直感したバーヴァン・シーは単身、ビーストのいる場所に先行した
オーロラを黒髪にしたような、絶世の美女。
それが、ビーストの真の姿だった。
『……覚悟はしていた。 でも、実際にその事実を受け入れるのは、キツイな』

 バーヴァンシーの苦渋に満ちた声に、そのビーストは悲しげに応える。
『やはり、貴女ならすぐに気が付くのね。 そう、私たちは、こことは違う世界で”ビースト”に堕ちたヌオーの始祖”はじまりの六ヌオー”だったものよ』
 ビーストは、うつむくバーヴァン・シーを気遣いながらも、話を続ける。

『貴女が、あの世界で、私たちの過ちを終わらせてくれたことは感謝しています。
でも、私たちは”ビースト”としての責務を果たさなければいけない。
私たちは、『人が滅ぼす悪』。それを成すことで、ビーストであり、人理保証天球であるカルデアスの打倒は大きく前進するでしょう。
ゆえに、私たちはヒトに打倒されなければいけない。
ですから、貴女は彼/彼女(藤丸のこと)と共に、もう一度ここに来なさい』

 バーヴァン・シーはうつむくのをやめると、決然とビーストに向かって聖剣を突き付ける
『わるいが、アイツにもお母さまたちにも、カルデアの誰にも、あなたを倒させたりしない。
アイツは、ただでさえ私たちの國のことを、引き摺っているんだ!
もうこれ以上、アイツには傷つく余地なんてないんだよ!
そもそもだ。アイツがあなたを倒せば、どうしてカルデアスの打倒に近づくんだよ!』

 バーヴァン・シーが叫ぶと、ビーストは虚空より剣を取り出す。
それは見るだけで、肉体も精神も魂さえも侵し破壊する、呪詛で黒く染まった聖剣の成れの果てだった。
『この剣は、かってセファールを討った聖剣にして、私たちの友人であった“朱い月”を葬った魔剣。
この魔剣には“原理血戒”という彼の作った呪詛が27個封印されているわ。
そして、“原理血戒”が成立するような世界において、マリスビリーはカルデアスを完成させられない。
また“原理血戒”は人理特攻の呪詛だから、カルデアスが人理保証天球である以上は致命的なモノになる。
最後のマスターである彼が、私たちを討つことで、情報としてその事実は残り、カルデアスは概念的に傷つくでしょう。
カルデアスとの彼我の戦力差を考えれば、有効な手立てだとは思わない?』

 その言葉に、バーヴァン・シーは
『ごめんなさい。やはり、その案は受け入れられない。
そもそも、あなたは大切なことを言っていないでしょう。

……さきほどの話は、アイツがあなたに勝てたら、でしょう?
ただ単純に強大な敵には、アイツなら勝てるとは思う。
でも、あなたと一緒にいると、もう二度と戻れない妖精國での日々が鮮やかに甦る。
搦手を使っているわけではなく、あなたがただ存在するだけで、そうなるのでしょう?
しかも、魔術とかではないときた。

 そういうのに、アイツはめっぽう弱いからな。
だから、罪を背負うのは、私だけでいい』

 戦闘の一時的な回避は不可能だと悟ったビーストは、最後の言葉を告げる。
『ならば、獣(ビースト)を見事、討ち取ってみせなさい!
妖精國女王バーヴァン・シー!』
『……妖精國女王の名において、獣(ビースト)ではなく、敬愛すべき始祖としてあなたを討つ! お覚悟!』

 たがいの口上が終わると同時に、聖剣と魔剣は衝突し、死闘が始まった。
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