アーパダー=カラミティ 5-2


目の前に広がるのは白と青の2色。
空は太陽が登っているものの半分程雲に覆われている。白い地面は雪に覆われ不安定にゆらゆら揺れており、亀裂が生じているところもあれば大地が途切れる所もある。下を見ると寒々しい海を視界に納める事ができる。そして、ひゅおおと時折身が凍るような程冷たい風が体に当たる寒々しい。周囲を見渡すとまるで北極のような景色が広がっていた。
「さっっっっっっっむ!!!」
「ふわ〜。大きな氷が海に浮いてるのだ〜。」
「足元をよく見ろ、醜態をさらすぞ。」
「絶対色々と省いているだろ、お前。」
「危ないと思っているのなら、心配だと言ったほうがちゃんと伝わりますよ、カルナ。」
「‥‥‥んも〜〜〜!ちゃんと話せ〜〜〜!伝わらないぞ〜〜〜〜!!」
「‥‥‥む。すまない。」
「‥‥‥‥私の上着で良ければ羽織ってくれんか?大丈夫なのはわかっているが、見ているだけで寒いし心配だ。他の者の上着だと『わし様』が嫉妬してしまうかもしれんが、『私』のならば辛うじて問題ないであろう。」
「あら。‥‥‥ありがとう、スヨーダナ・オルタ。」
「‥‥先程から何だ、ジロジロ見て。貴様も羽織るものが必要なのか?」
「いえいえ。何でも無いですよ、別に。それに、上着は必要ありません。このボディスーツは万能ですので!」
景色が変わるのはこれで3度目ではあるし、礼装で緩和出来てはいるものの急な気温の変化に思わず体を縮こませながら叫んでしまった。
皆は大丈夫なのか周りを見渡すと、太歳星君は今立っている白い地面の先にある崖をキラキラ目を輝かせながらも興味津々な様子で見つめており、カルナリリィは肩をすくめながら言葉を呟いた。ビーマは半眼になりながらも彼に言葉をかけ、ユユツがフォローするように言葉を続けるとムッとしたような顔をしていた太歳星君がポカポカと軽くカルナ・リリィの事を拳で叩く。申し訳ないと思っているのかカルナ・リリィはされるがままの状態になっていた。
スヨーダナ・オルタは呆れたように彼らを見た後、何処から取り出したのかは不明だが暖かそうな上着をバーヌマティーに差し出した。彼女は驚いたように目を見開いたがふわりと微笑み返しながらもその上着を受け取り羽織る。そのやり取りをじっと見つめているXXにスヨーダナ・オルタは目線をむけ苦言を呈するが彼女は意味深に微笑みながらも答えは返さずに彼から距離を取った。
「当機構は浮いているから大丈夫だが、皆は滑らないように足元に気をつつ歩いてくれ。」
「また変なのが居るかもしれないから、先行せずに慎重に進もう。」
「「「「「「了解。」したわ。」したのだ〜。」だ。」だぜ。」しました。」
ハタヨーダナがフワフワ僅かに浮きながらも声を掛けてくる。そのアドバイスに頷きながらも皆に声を掛けると揃って返事が返ってくる。何処をみても同じ景色しか無いため方角が分かりずらいが、藤丸は正面を見据えながらも足を踏み出した。

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ーー・ー・ー・ー

「‥‥‥なあ、人影のような物が動いてないか?」
「カルデアからレイシフトしたっていうサーヴァントではないか?」
「‥‥‥あの動きは‥‥‥もしかして‥‥‥?」
「もしかしたら、何かと戦っているかもしれませんね。私が先行しましょうか?」
「マスマス!吾輩も連れて行って欲しいのだ!!」
「‥‥‥え?‥‥XXのそれ、一人用だったよね。‥‥‥ハタヨーダナ、一人なら抱えて行ける?」
「そうですね。残念ですが一人用です。」
「一人抱える位なら、造作も無いな。任せてくれ。」
黙々と歩いているとふとビーマが不思議そうな声音で問いかけてくる。スヨーダナ・オルタが1度チラリと此方を見た後、ビーマへと返事を返す。藤丸には全く見えないが太歳星君はビーマ指さした先を見据えて目を見開き、小さく言葉を漏らした。
XXがふわりと浮かびながらもこちらに問いかけた後に、太歳星君も彼女と同じようにして此方に目線を向けてくる。必死そうな表情をした太歳星君を見て、直ぐに考えを切り替えXXへと問いかけるとコクリと頷いたため直ぐにハタヨーダナへ問いかける。彼は任せろとでも言うようにどんと手で胸を叩きヒョイと太歳星君を抱えあげてビーマの指さした方向へと風を切るようにして滑るように移動していった。
「私達も急ぎましょう。」
「………引き続き、足元を注意しろ。」
「そうだね。滑りやすいので足元に気を付けましょう。」
バーヌマティーとカルナ・リリィの声を聴き、しっかりと氷の大地を滑らないように気を付けながら彼らに追いつけるように足を踏み進めていった。

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ーー・ー・ー・ー

ぐんぐんとマスター達を置いて氷の上を風を切るようにして進んでいく。ハタヨーダナが進むたびにビーマ言っていたとおりに人がくるくるとまるで踊るようにしながら何かと戦っているのが見える。その人物は太歳星君が予想したとおりの馴染み深い人物であった。
「ハタハタ!吾輩を思いっ切り投げてくれ!」
「安全は保証出来ないぞ!」
「それでもいい!やってほしいのだ!!」
風を切る音に負けないように太歳星君は声を張り上げる。ハタヨーダナは心配しているのか眉根を寄せながら大声で返事を返すのを聞きながらも肯定し、飛び出しやすいように体の向きを調整する。
彼は自分が意見を曲げないと感じたのか、溜息を吐きながらも思いっ切り戦っている人物ー美しいプリマドンナーの元へと弾丸のようにして飛ぶ。
「ラムラム!」
「貴方どうしてここ!?いえ‥‥。ありがとう、助かったわ。それと、私の名前はメルトリリスよ。間違えないで頂戴。」
「それじゃあ……メルメルって呼んでもいーい?」
「二人共怪我はないか。」
「全然問題ないのだ!」
「……。傷はないわよ、さっきのやつに決定打を与えられなくてタイミングを見計らうしかなかったけど、マスター達も来てるのでしょう?あなた達が来たのなら、なんとかなりそうね。」
氷を割って背後から彼女ーラムダ……否、メルトリリスーを襲おうとしている敵性体ーダゴンのように見えるーへと殴りかかる。ギャアと悲鳴を上げたように見える敵性体は出できた場所へとバシャンと音を立てて戻っていった。
コクリとメルトリリスが頷くと同時に、ハタヨーダナが此方へと追いつき問いかけてくる。笑顔でビシリと額に手を当てて敬礼のポーズを取ると、メルトリリスは此方を見てホッとしたような息を吐いた後直ぐに澄ました顔をしながらも状況確認をし始めた。
心配してくれたのだろうと思うと状況も忘れてほんのりと赤くなっている彼女の頬をくふくふ笑いながら気が付かれないようにマスターが合流するまで太歳星君はじっと目に映し続けていた。
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