雪に散る花


「君の肌は雪みたいだな」
ひやりとした白い頬に触れる。
これが情事の時は熱くなり薄紅に染まるのを、知っているのは俺だけだ。
「なんだ?唐突に」
脹相はそう言いながら俺の手に手を重ね、小首を傾げる。
相変わらず可愛らしい事だ。
「俺は子供の頃、誰の靴跡も無い真っ更な雪の上に足跡をつけるのが好きだったんだ。大人になってからはやらなくなったが、君を見ているとその気持ちを思い出す」
「………よくわからんな…」
脹相は目線を上にやって少し考えると、ポツリとそう言った。
それもそうだ、と思った。
彼はまだ受肉して数ヶ月。雪なんてものは見た事がないだろう。理解できないのも仕方がない。
「俺はもうお前が付けた痕だらけなのに、これ以上痕を付けたいのか?」
空いた手で首元の服をぐいと引っ張り、晒された白い鎖骨周りには何片もの赤い花弁が散っている。
「……誘っているのか?」
と問えば、
「誘ったのはお前だろう?」
と悪戯っぽく笑んで唇を重ねてくる。
全く敵わないな。
そう思いながら、何度も付いては離れる唇を逃がさぬように彼の項に手を添えた。
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