二組の双子と、 第一話「壊れる音」


 その日は特に何かあるわけでもなく、普通に学校に行って、部活をして、ちょっと買い物して、帰ってきた。双子はもう先に帰っていたらしく玄関に靴が脱ぎっぱなしで転がっていた。一緒に帰ってきた照史が怒りながらそれを整える。そして気づいた。見知らぬ靴があることに。俺はただ、また友達連れてきてんのかなって思っただけだったけど、照史はそれが半透明であることに気づいた。俺と照史は折角整えた玄関の靴が散らばるのも気にせずに急いでリビングの扉を開ける。
「邑!津!」
「おかえり〜」
そこには呑気にアイスを食べてる邑と津がいた。ほっと胸を下ろそうとした俺の目に見覚えのある青年の姿がうつった。見覚えのある、というか、そいつは、
「俺?」
「え、暉仁分身できるの?」
照史が動揺して良くわからないことを言っている。
「ほらやっぱり本物の暉仁じゃなかったじゃん。」
津が邑に言っているが俺の頭には全く入ってこない。え?ドッペルゲンガー?あの、会ったら死ぬっていう?え、俺死ぬの?
「いやまだ洗濯物も取り込んでないし夕飯も作ってないから死ねないんだが。」
思わず俺も変なことを口走ってしまった。
「やっぱりこれってドッペルゲンガーかな?」
なんとものんびりしている双子である。自分事じゃないからって酷い奴らだな。
「…とりあえず洗濯物取り込もう。一応天気予報じゃそろそろ雨が降るらしいからな。」
俺よりも先に平常心を取り戻した照史がいい、みんなで洗濯物を取り込むことになった。そして俺のドッペルさんだがなんだが知らないが、そいつも一緒に洗濯物を取り込もうとして、洗濯物に触れないことに気づくとしょんぼりと大人しく椅子に腰掛けていた。さわれない事にあまり慣れてない様子からして成り立ての幽霊なのだろうか?だとしても俺の姿というのは意味がわからない。

 ドッペルさん、ーーそう呼ぶことにしたーーはどことなくぼんやりとしているように見える。なるほど、ぼんやりしている時俺はこんな顔をしているのか。
「ドッペルさんはどこから連れて来たんだ?」
「…連れてきたって俺らが悪いみたいじゃん。今回は別に連れてきたわけじゃねえぞ。」
「そうだよ。勝手にドッペルさんがついてきたんだ。」
それを連れてきたっていうんだろうが。
「で?どこでドッペルさんに会ったんだよ」
双子の抗議は軽く無視して、話を進める。
「駅。いっつも暉仁と照史が使ってる。スーパーの近くの。」
ああ。あそこか。人気が少ないから幽霊にとっては過ごしやすいだろうな。ていうか幽霊なのか?うっすら透けてるし、物にも触れないから実体がないのはわかるんだけど。さっきからドッペルさんは喋ることができないのか口をぱくぱくさせている。俺らに声が届いてないことに気づくとペンを探してうろうろし出したがすぐにペンを見つけ、それで何か書こうとするもーーやはり持てなかった。何か伝えたいことでもあるのか?頷くことぐらいならできそうだ。
「ドッペルさんは幽霊なのか?」
こくこくとドッペルさんが頷く。それを見て双子もドッペルさんに質問を投げかける。
「なんで暉仁の姿なの?」
「バカ。喋れねーんだぞ。」
「あ、そっか。……暉仁のこと知ってた?」
ドッペルさんは少し考えた後ゆっくりと頷いた。
「俺らのことも知ってるのか?」
今度は照史も質問する。これにはドッペルさんは迷うことなく頷く。もしかして……いや、考えすぎか。俺と同じ姿だからといって同じ思考をしているわけではないし。頭に浮かんだ仮説をすぐに追い出す。が、やはり気になったので、聞いといて損はないし聞くことにした。
「お前は俺の幽霊か…?」
ドッペルさんはそれだよと言わんばかりに嬉々として頷いた。
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