嘘つき魔女のお話-エリスの分岐点


『私は魔女なんかじゃないよ……?』

鞭打たれずたずたになった肌、
酷く膿み手当もされていない傷跡、
打ち付けられた枷。
万人が見て万人が罪人だろうと思う魔女がそこに居た。

「魔女と認めてたとしても嘘をつき人を誑かす貴様に恩赦などはない!
血が汚れているのだ貴様は!」

魔女の生活は地獄そのものだった。
ただ耐えていた、耐えられてしまっていた。
いくら堅牢な水門でも無限に耐えられるわけにはないのに。

数週間経ったある日のことだった。
いつもの加虐、カビパンやよく分からない臭い何か、強制懺悔文、その他もろもろ。
今日も三人の審問官が覗き込んで惨な魔女を笑っていた。

「嘘をつき続け魂が、血が汚れているんだ。
現に病すら貴様の身体を拒絶している。
手を止めるな、鞭打ちをされたくなければな」

決壊するのはそう時間の問題でもなかった。

「懺悔すらしようとしないのか、邪悪な魔女が
貴様の母親もそうだ!黒い血を持った悪魔!
腑を直接切ったから知っ--」

ぐさり

魔女の羽ペンは三人のうち一人の目を貫いた。
溜め込まれていた分の感情や人殺しの興奮、後悔の大洪水は一人の人間を壊すに十分なものだった。

「遂に正体を表したな!この極悪人めが!」

確かに私は悪い子だ。

「お前は今自分が何をしたか分か--」

ぐさり 

それでも、間違いなく皆にも、
私と同じ色の血が流れているじゃないか。
あと一人もそうであれば確実にそうだ。

「な、やめ--」

ぐさり 

そうだ、間違いない。
魔女は自分の仮説が証明されたことに喜んだ。
本当に悪人になってしまったことなどは隅に置かれ、初めて蝉を取った子供のような笑みを浮かべて喜んだ。

「もう後には戻れんぞ……未来永劫救われる事はない……この……魔女め……!!」

『魔女……確かにそうかも』

「今更……否定できんぞ……人殺しの……魔女め……」

『大丈夫、皆生きてる
それにここには沢山人が居るから』


少女は懺悔室の燭台を椅子に当て火を焚いた。
燃え落ちた教会から消えていく少女の影を追う者は何故か一人も居なかった。
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嘘つき魔女エリス
刑務所に行っているときに先生に会わず、そのまま教会に護送されていた場合に分岐。
C棟で貰った首飾りがないため、彼女の言った事の"逆の事象が発生する"と言う状態になっている。
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