たくてんのいない日々


この記事は、Kumano dorm. #2 Advent Calendar 2020の14日目の記事です。

作:NMB 2020.12.14

※かつて就活に失敗したたくてんに捧げる。

■たくてんとの別れ
 学校の課題以外で、自分の考えたことを書くのは高校卒業以来。それまで毎年5人ほどしか京大合格者のいない高校にも拘らず、僕の学年では約20人受験し、約10人が受かるという、前年から比べると凄まじい飛躍を遂げ、一大京都ブームが巻き起こった。よほど修学旅行が楽しかったに違いない。その一員となった僕は急に自信が湧いてきたのか、自分では読みもしない後輩に向けた“合格体験記”を自ら書くことを志願したものの、いざ書こうとすると大して伝えたいこともない。一生懸命考えた挙句、「受験には根拠のない自信を持つことが大事」とスピリチュアルな言葉を後輩に残し、海を越え京都へと旅立った。
 なぜ27歳にもなって、10年近くも前の地元高校の話から書き始めたのかと自分に問えば、それは大学院卒業後に地元へ戻り就職をした、その話を書きたかったからだろう。地元に戻った僕は地域では比較的給料の良い会社に就職し、現在3年目である。そんな僕がよく話題にするのが会社の悪口だ。僕の寮の友達からすれば、「また始まった…」と思うだろう。(A4の皆さん、すみません)共感するところはあっても、聞いていて楽しくなることは少なく、「そんな会社は早く辞めればいいのに…」、でしかない。だが、学生からすれば、今後の就職活動のために会社というものがどんなものか知りたいという希望があるかもしれないし、ないかもしれない。何の役にも立たないかもしれないけど、14日に投稿を間に合わせるために筆を進めることにする。

■たくてんのいない日々
「そんな会社は早く辞めればいいのに…」。まったくその通りである。女性にお茶くみをさせ、紙は無限に印刷し、あらゆる書類にハンコを押す。有給休暇をとれば、休み前日の終業時に「明日お休みをいただきます」と上司に言い、休暇明けには「お休みをいただきありがとうございます」と言う(とくに後者を言いたくない僕は「お休み…ました」と意味不明な日本語をごにょごにょ言っている)。言い出せば切りがないが、これらはすべて会社のシステムの話だ。システムは変えればいいだけである。最近会社の資本関係が変わったため(お線香のようにかすかにではあるが)今後は悪いところが改善されていきそうな気配があるとかないとか。何よりもこの駄文を読んでいる方に誤解してほしくないのは、おそらく弊社は稀なケースであり、色んな会社の悪いところをつまみ食いした結果、それでフルコースを作ることを思い立ったシェフのもとで作り上げた地方の中流レストラン的なものである。僕の友人でこれほどまで会社の悪口を言っている人はおらず、またそういう会社があるとしてもネットニュースでしか聞いたことがないので、ひとまず安心してほしい。
そんな会社に勤めて約2年半。最近ふと思うことが、なぜ僕はここに入社したのだろうか、ということだ。今日の発達した情報社会においては、一つ就職掲示板を開けば、その会社の良い/悪い評判を確認することができる。就活のコンシェルジュみたいな人が、その会社を第三者目線で評価してくれることもある。それなのに、なぜ僕は自分の会社の悪いところに気が付かず、他社の内定を断り、今の会社に就職したのか。うーん、思い出せない。どうやら過去の失敗を認めたくないようで、記憶が不鮮明だ。
じゃあ自分のことは棚に上げて、先の“合格体験記”のように後輩に会社選びのアドバイスをすることとすればどうだろうか。1つ、2つ……、結構思いつく。どうやら“失敗体験記”の方が向いているようだ。ということで、いくつか自分なりの「怪しい企業の見抜き方」を紹介したい。明らかに偏見にまみれた僕の意見は、却って就活生の混乱を招くだけかもしれないが、今の僕にはそのリスクマネジメントをする余裕がない。ここにコメント欄があれば、ぜひ就職経験者の意見も聞かせてほしいところだ。

①会社の自慢できるところを聞いてみる
 合同説明会に行けば、同じように黒いリクルートスーツに身を包んだ誰かさんが尋ねてくれそうなよくある質問だ。似たような質問に「御社の長所はどこですか?」や「他社と比べて御社の優れているところは何だと思われますか?」のようなものがあると思う。ここで相手の答えが、業界内での優位性やその業種の働き甲斐だけだった場合、別の答えも引き出したいところだ。僕の時も「○○という施設の運営に携われる貴重な職場」や「その地域でも比較的賃金が高い」のような回答ばかりだったと思う。本当はそうではなくて、「日々社員として働く者として」の視点から、働きやすさや社風を教えてほしかったと思う(僕の場合は相手がそういう答えを持ち合わせていなかっただけだと思われる)。ちなみに今の僕には「紙をどれだけ無駄に印刷しても怒られないこと」という回答ができる。

②社内で尊敬している人を聞いてみる
 おじさん・おばさんに聞くと変な雰囲気になる気がするので、1年目の若手社員に聞くのがいいと思う。今の僕が同じ質問をされた場合には、2,3個年齢が上の先輩の名を挙げることになるが、ここで重要なのはその先輩は上司ではないということだ。僕の場合は、古臭い慣習にまみれた職場をなんとか改善しようとするその先輩を尊敬できるのであり、その陰には何か別のものに対する不満がある。僕の寮時代の友達のN日くんに言わせれば、そこからアウフヘーベンされて何かが生まれるべきなのだろうが、アンチテーゼが大きすぎては期待できない。話を戻すと、相手が自分の部署でない人や、自分の部署でも上司以外の人を挙げた場合、何らかの部署やチームに対する不満が隠れている可能性がある。そこに嗅覚を研ぎ澄ませたい。

③若手のうちに退職した社員がいる場合、なぜ辞めたのかを聞いてみる
非常にわかりやすい質問である。就職後に自分がそうならないように質問するのだ、という大義名分もたつ。これだけストレートなことを聞く勇気は必要なのかもしれないが、「もし御社に内定をもらえた場合、私は長い期間働き続けたいという考えをもっているので、ミスマッチを防ぐためにも是非聞かせていただきたい…」だとか適当な前口上を付け加えれば理解してもらえるはずだし、そこに不快感を示すような企業はそれこそ怪しいと思われる。もし今の僕がこの質問をされた場合、何と答えるか。実は僕を含めて5人の同期のうち既に2人が退社したが、その退社理由を明確には知らない。なので、1割の同期の退社理由に9割の自分の不満を織り交ぜて話すことになるが、それでも必要な情報が揃うことになるので、いいじゃないか。

■たくてんにまた会う日まで
 さて、普通の感性の持ち主であれば「よくも祭りというポジティブな企画の中で、これほどネガティブな話をするな」と思われたかもしれない。ネガティブな感情は、周りにも伝播するという。だが、僕は自分のこの話を笑い話にできるようになればいいなと思っている。嫌なときは昨日のカレンダーにあったように「やってられっか」と退職すればいいわけだし、僕もその日が近い。
 つい先日、忙しくなってきた先輩から新しい仕事を引き継がれそうになり、「いや~実は年度末で転職しそうでして…」と言い、遠回しに遠慮した。勢いづいた僕は同日中に上司にも「転職は3月末ぐらいですかね~」と軽めのトークで伝えておいた。あとはちゃんと転職活動をするだけである。なので、上述の「怪しい企業の見抜き方」を早速自分で実践することになるので、それを以ってこれまでの僕の無責任な偏見でまみれた“失敗体験記”の責任を負うことにしたい。振り返れば、寮のドラフト会議で「音楽をやってる人は協調性がある」と楽譜の読めない僕が言い出し、バイオリンができる子を1巡目でとった記憶があるが、成功だったはずなのでよしとしたい。
さて話が逸れたが、コロナ禍の転職となることを誰かに心配されそうだが、まあなんとかなるだろう。受験の時と同様、「根拠のない自信」を持ってとりあえず転職サイトに登録してみればいいと思っている。寮の友人にはいい報告ができればいいなと思う。

 やっぱり「根拠のない自信」で転職する先は東京がいいかなと思う。
 なんで東京かって?
 陸続き(理屈付き)じゃない方がいいんだよ。
 おあとがよろしいようで。

おしまい