サメ忍者VSサイボーグ魔法少女


 新・真・人類歴コズミックⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩ年。
 宇宙という宇宙を開拓し平らげ、瞬く間にすべてを貪り尽くした、我われ新宇宙人類の発展は目覚ましい。

 しかし、そんな宇宙の野蛮人どもにとっても外宇宙は未知なる危険に満ち満ちている。

 宇宙外宇宙ポイント375-64宙区、超かに座星雲銀河上空。
 多数の旅行者を乗せた、3776mの超小型ロケット・シャトルが暗黒の星空を切り裂いていた。

「ぐはははは! 死ねい!」

 ザキン! 恐ろしい金属音が宇宙空間に響き渡り、シャトルが一撃で三枚におろされた。
 爆発、そして炎上。黒煙が噴き上がり、無数の旅行者がめいめい悲鳴をあげながら星の海へと投げ出される。

「オレは宇宙・人食いザメだ。人間どもは皆殺しだあっ!」

 下手人は得意げにがなり声をふるわせ、灰色のヒレを太陽光にきらめかせた。
 日本刀超えの黒ビレ、ずらりと生え揃ったキバがひかる。おお、彼こそ恐るべき宇宙のプテラノドン、宇宙上忍・鮫ニンジャーグ!

 ニンジャーグは任務や目的があって殺戮してるのではない。
 己の力を誇示し、弱者を斬り散らばせる悦びを見いだす、邪悪なクラヤミ・ニンジャなのだ!

「むっ? 何やつ!」

 背ビレに搭載されたラム・ジェットエンジン機構を用い、宇宙を気持ちよく爆進していた鮫ニンジャーグ。
 巨大な惑星を三つほど切り裂いた(文字通り!)頃、彼は星の海にぽっかりと浮かぶ小さな人影を※ニンジャ・横長・アイにとらえ、長い尾ビレをしならせた。

※宇宙ザメ特有のニンジャ的機構を持つ眼球。瞳孔が横に長く、二万光年先の針でも見わける。

「何ものだ、きさま」

 鮫ニンジャーグは人影をよく観察した。人間のように見える。メスの、成体にもならないかもしれない。
 しかし、普通の人間ではない。

 異常に長い、ボリュームのある髪。フリフリのドレス、露出した肩。
 手に持つステッキの先端には、ハート・カットのピンクダイアモンドが金剛石のようにキラついている。

 どこからどう見ても、典型的魔法少女だ。しかも宇宙空間に存在するもんだから、典型的宇宙魔法少女だ。
 典型的宇宙魔法少女は、かたく結ばれた小さな口を、わずかに開いて声を発する。鈴が転がるような音が出て、空気を震わせ、はしゃがせた。

「わたくし、宇宙魔法少女、まじかる★ミラクルと申します。早速ですが、死んでください」
「ウヌ、唐突に何を言わすか。きさまこそ、死んでしまえい」

 突然の果たし合い、決闘の申し出にうろたえる鮫ニンジャーグ。
 彼に構わず、あるいは嘲笑うかのように、ピンクダイアモンドに恐るべき魔法光がチャージされ始めた。

「ダイアモンド★シューティングスター・キャノンッ!」

 ピンクダイアモンドから放たれた光が、名にたがわぬ流星の威力をまとい闇を切り裂き、ニンジャーグの顔にモロにヒットする。
 宇宙ザメの黒い三角顔が、怒りに紅潮した。

「おのれ~。下手に出れば、つけあがりよって! 殺してくれるわ、宇宙魔法少女」

 宇宙ザメが本気を出した。前傾姿勢の、凶悪疾速体と化し、さながら暴走機関車のようにミラクルの元へと突進したのだ。
 ミラクルは慌てず、次の魔法技を放つ。

「ミラクル★クレッセントエッジ!」

 振り下ろされたステッキから三日月状の斬撃光が撃ち出され、宇宙突撃邪悪ザメの肌に命中。
 しかし、魔法はミラクルの思った通りには効かず、泡となって宇宙のチリへと消えた。

「ぐははは! 我が"サメ肌"に、魔法の光など効かん!」
「なにっ。クッ!」

 すんでのところで突進をかわしたミラクルは、ステッキを前に出し、さらに多くのパワーを集める。
 そして、ステッキを光速で振り回し、無数の魔法光を撃ち放った。

「クレッセントエッジ・フォレスト!」

 ザキンザキンザキン!
 流星群、あるいは隕石、槍あられ。だが、最強生物・鮫ニンジャーグの肌は、あらゆる魔法光を弾いた。

 ぐはははは! がなり声が爆発のように響き渡り、ニンジャーグは火山の勢いでミラクルに肉薄。ミラクルの頬に汗が流れる。

「おうりゃあ! "サメ刃ダ"エッジ!」

 ズブッ! 鮫の腕ビレが、ミラクルのこめかみを、ガードした細い腕ごと貫いた。
 勝ち誇りながら雄叫びをあげるニンジャーグ。

「ふははは! ギロチン処刑だっ」

 そのまま腕を振り抜き、黒ビレが血に塗れる。
 あわれ魔法少女の肢体は千切れとび、宇宙中に爆風が吹き荒れ、滴る脳しょうが邪悪極まりないサメニンジャに降りかかる……はずだった。

「メモリー損傷チェック、軽微。CPU動作、問題なし。ボーイン・キャノン、チャージ続行」
「ううっ……何だ? ばかに硬いぞ。し、しかも……」

 魔法少女の頭を貫いた。脳しょうが飛び散り、血肉が宇宙空間にまかれるべきだ。
 しかし、今鮫ビレにまとわりつくのは、金属ネジだ。とりどりのカラフル・コードだ。目を焼くような、電気スパークだ。

 ミラクルの無事なもう片手が伸び、ニンジャ鮫の体をつかまえた。おお、この怪力!

「グウッ、何て馬鹿力! き、きさま! キサマまさか!」
「フルチャージ、完了。最終セーフティ・ロック解除……承認。システムオールイエロー」

 ミラクルが柔らかな、しかし平らな胸をニンジャーグの体に押しつける。熱い! 激熱い、爆熱だ。

「カタストロフ・ナイスバースト……ファイヤー!」

 太陽が、その場に弾けた。

 爆風が吹き荒れ、太陽フレア熱波が宇宙を荒らし、あらゆる星ぼしが焼かれ焦げる。鮫ニンジャが吐血し、黒いサメ体に穴があいた。

「ま、魔法少女! ではなく……"ブリキ人形"だったというわけか……。し、しまった……」

 爆発。うめく鮫ニンジャの体は爆炎に包まれ、その五体は四散した。
 熱波が辺りへと拡散し、轟音とニンジャ残響が宇宙を揺るがし、汚染する。

「抹殺・完了(デリート・コンプリート)。わたくし、今日もナイスファイト」

 言い切るが早いか、ミラクルは足を離し、また広大な宇宙へと滑り出した。
 自己修復を始めた頭部がスパークする。

 ……人類の発展は目覚ましい。しかし、世にはびこる危険、災害、凶悪巨大猛獣。
 襲われてはひとたまりもない、これら危険に晒されながらも進化した人類はたくましく生きていく。

 人々を脅かす超宇宙的危険へと立ち向かう、ミラクルの戦いはこれからもつづく。




(宇宙魔法少女まじかる★ミラクル アリアナ基地防衛戦より抜粋)
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