マッサージ編 retry 前編


暗い部屋、黒服は本を閉じて目の前の物の方を向く。あらゆる実験のせいかボロボロになったそれを見ながら黒服は思案する。理論通りならこれでいいはずだ。だが、理論は理論。確実性を期すためにやはり多くのデータが必要となる
「クックックッ」
もう少し、もう少しで私の研究は実を結ぶ。
そう思い、黒服は笑う


「はあ…」
「ユメ先輩、最近元気ないですね」
ホシノちゃんに指摘されて私は慌てて そんな事ないよ、とかぶりを振る。情けない先輩でも心配をかけたくないのだ
「バイト先で上手くいかなかったんですか?」
うっ、鋭い…。流石ホシノちゃん

そう。この前、仕事の疲労が溜まっていた事もあって黒服さんとマッサージの話になり、お金がないという理由と何となく黒服さんの方がいいと思ってマッサージを頼んだのだ。黒服さんも私の為にと引き受けてくれた。だけど…、私は痛みで声を出してしまったのだ。涙が出る程だったけどそれでも続けて貰おうとしたら黒服さんが申し訳なさそうな顔をしてやめてしまった。それ以降モモトークに反応はくれるが黒服さんに会う機会が…依頼が来なくなったのだ
(ど、どうしよう!?ただ別のお仕事で忙しいだけだよね!?それとも怪我したとか!?それとも…わがままだししつこいからき、嫌われちゃった………とか……?)
何だろう…すごく…胸が痛いな…

ユメがまた項垂れてしまったのを見てホシノはある提案をする
「そうだ!先輩、街に出かけましょう!」

「ショッピングだなんてもったいないよ〜」
「いいじゃないですか。返済も順調なんですから少しぐらい使っても」
渋るユメを無理矢理連れ出したホシノがそう言う。服屋の前で「ユメ先輩に似合うのは可愛い系ですよね〜」とかブラックマーケットで何か掘り出し物はないか探したりした。結局、軽い昼食ぐらいしかお金は使わなかったがいい気分転換になった
(ありがとうホシノちゃん。…うん!私もいつまでもクヨクヨしてないでちゃんと黒服さんと話そう!)

ホシノちゃんと途中で別れて、私は黒服さんの所に向かう。私が傷つけてしまったならとにかく謝ってから、何もなければそれでいい。とにかく会おうと思って———足が止まった。目の前に人の姿を見つけたのだ
「すっっっっげぇ気持ちよかったぜ。また来たいぐらいだぜ?」
「クックックッ、そう言っていただけるとこちらもやり甲斐がありますね」
なんかメイクで変装してるし、いつもと違って白い服を着ていたけどすぐにわかった。
———黒服さんだった
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