四ツ目が宿る時 第4話【愛カラ産マレタモノ】


【四ツ目が宿る時】第4話
作:理緒来


(ガル・ギルシュア)
ギルシュア国王、額に三ツ目を持つ36歳、男。
表の顔は優しいが裏の顔は魔王と言われるほど恐れられている。騎士全員、それを知っている為逆らう事をしない。しくじった者を許さず、キツい罰を与える。

(ファリン・シリオル)
ギルシュア国王直近魔法騎士。
額には少し歪な三ツ目を持つ少女。
シフォンの双子の姉。
妹の事がとても大好きで大切。
シフォン以外には無表情でとても冷たい。
王の命令以外は聞かない。
水魔法に長けている


(シフォン・シリオル)
ファリンの双子の妹、ギルシュア国魔法騎士隊長。
額に二ツ目を持つ18歳。
姉とは反対で、明るく自由気ままな性格。
王であろうが、嫌な事は「嫌」と否定する。
自分のしたい事優先。
面倒くさいものが嫌いなので、魔法の訓練、アドバイスや実験のお話は聞きたくない。
触れた物を変形させる魔法に長けている。
が、ちょっと特殊な魔法も使う。

(ハツハル・グリザ)
ギルシュア国魔法騎士副隊長。
額に二ツ目も持つ。
ガル国王を崇拝している。
少し腹立つ口調で喋る。
趣味は変装魔法で人を欺く事。
天候の魔法に長けている。

騎士1(リオ)
ガルに目を付けられた男。

騎士2(ミナ)
ガルに目を付けられた女。
リオの事が好きである。





ー配役ー

♂1:♀2:不問1

♂ガル・騎士1 :
♀ファリン :
♀シフォン/騎士2 :
♂/♀ハツハル :


ーーーーーー

騎士1「やめろ…やめてくれ!この子だけは…!」

騎士2「リオ?!何を言ってるの…!アイツに話が通じる訳無いわ!早く!!この転送魔法に…!」

ファリン「…彼女だけ見逃せと?」

騎士1「…俺の足はもう使い物にならねぇ。ミナ!早く行け!!逃げろ!」(ミナを突き飛ばして転送魔法に放り出した)

騎士2「きゃあっ!!嫌!!リオーーーー!!!」(魔法に吸い込まれる)

ファリン「…これは、ガル様の命令です。今から貴方達を『削除』します」

騎士1「…ファリン。お前に意思はねぇのか」

ファリン「これは、ガル国王様の命令…です。」

騎士1「ぁあ、そうかい。お前はそういう所相変わらずだよなぁ…機械みたいでよ…気持ちの悪ぃ奴だぜ」

ファリン「『この手に宿れ……水剣(アクアグラディウス)!』」

騎士1「剣……か。お前らしいな」

ファリン「ハッ!!」

騎士1「ウッッ!……おま、え……ミナを……殺す気か…?」

ファリン「……フッ!」(突き刺した剣をそのまま横に引き裂く)

騎士1「ガアッッ!!!…グッ…お願いだ……アイツだけは……!」



ファリン「…『甘い物』など、此処に有りはしない」







(城の廊下にて)

シフォン「はぁ…やーっと終わった!訓練なんて本当につまんない!何よ、『魔法を自分の中でイメージして』とか『魔力を捏ねて(こねて)』とか…意味わかんない!何、捏ねるって!感覚でパーッとやればいいじゃなーーーい!」

ファリン「シフォン、シフォン!待って!」

シフォン「あーもー誰よアタイの名前呼ぶのはー!今は機嫌が23°斜めなシフォ…なーんだ、ファリンか。そんなに焦ってどったのー?」

ファリン「出席記録が出てない…はい、これ。今、書いて」

シフォン「えーーーー……これ毎回書くの面倒なんだよねぇ…ファリン、どぉーしても書かなきゃダメ?」

ファリン「…ダメ」

シフォン「…ダメぇ?」

ファリン「うっ……分かった…じゃあ何の属性の訓練を…」

ハツハル「よぉーっと!ただいま戻りましたぁ」

シフォン「あっれ?ねぇ、なーんか見た事ある顔の侵入者がいるんだけど…君誰?」

ファリン「チッ…」

ハツハル「おやおや〜…私は忘れられる星に産まれたのでしょうかね?ゴホンッ。ハツハルですよ、お久しぶりですねぇファリン様にシフォン隊長〜。」

シフォン「あぁ!思い出した、副隊長だ!って、ちょっと!3年以上も仕事を放り出して何してたのさ!」

ハツハル「ガル様の命により別の所で仕事をしてましたよ。別に副隊長の仕事なんて特に忙しくはないんですから大丈夫でしたでしょう?」

シフォン「そうだけどさ〜。」

ファリン「ハツハル、ガル様に報告をしに行かねばいけないのではないですか?」

ハツハル「おやぁ…ファリン様、どうなさいましたか?何やら不機嫌そうですが…あっ、お邪魔でした?」

ファリン「シフォン、私が書いておくから見回り行ってきて」

ハツハル「無視ですか?」

シフォン「本当?!やったー!!ありがとファリン!大好き!んーチュッ!」

ファリン「………シ、シフォン」

シフォン「じゃねー!!」

ハツハル「はぁ…相変わらず、ですねぇ。ファリン様はシフォン隊長に弱い。えーと…確かシスコン、というやつでしたっけ?妹大好きっ子の事」

ファリン「ガル様にハツハルが道草を食っている、と報告しに行こうか」

ハツハル「おぉ怖い。それだけはご勘弁を。私はこれでお暇致しますよ。またお話しましょうねぇファリン様」

ファリン「はぁ……愛するシフォンとの邪魔をするなど…あ、何の属性訓練受けたか聞くの忘れた…まぁいっか」

(王宮にて)
ハツハル「ガル国王様。ハツハル・グリザ、只今マリアヌ国から帰還致しました」

ガル「おおっ!ハツハル。無事で帰ってきてくれて嬉しいよ。ようやく任務が終わったんだね?」

ハツハル「はい。丁度いい人材を見つけるのに3年も費やしました…ですが、お陰様で色んな情報が得られました…流石マリアヌと言った所でしょうか…考えてる事が単純で…ふふふっ。阿呆すぎて笑ってしまいます」

ガル「ほう。ぜひ聞かせてくれ。酒のつまみにでもしよう」

ハツハル「武闘会で国を建て直したは良いものの…周りが魔法研究に力を注ぎ始めて…焦りに焦り考え出した結論が『他国への訪問』。我が国にもいらっしゃったんでしょう?マリアヌ国王様直々に。」

ガル「そうだね…まさか、敵国である私の所へ来るとは思わなかったよ。西国のペシカやザクレッシュアに行けば何でも見せて貰えただろうに」

ハツハル「敵国だからこそ調査がしたかったのでしょう…我が国は他の国よりも研究が進んでいますし…『例の研究』もあります。それにあまり賢くない国ですから…フッ。そもそも研究者自体が居ないのでは?」

ガル「ハッハッハ!あまり言うてやるな。研究熱心な国ではなかったから、今になって後悔してるんだろう。フフフッ。さっさと我が国にひれ伏すがいいものを」

ハツハル「ところで……ガル様、1つよろしいでしょうか」

ガル「何だね?」

ハツハル「そこの十字架の事なんですが……また逃亡者が?」

ガル「あぁ、コレか。前のより美しく綺麗に燃えたのでな、残しているんだ。どうだ?このライン。いつかは崩れるんだろうが、あるだけでいい見せしめにもなる。」

ハツハル「良いのやら悪いのやら分かりませんが…大分、『コレクション』が増えましたねガル様。おかげで天井がススで真っ黒……私以外で気づいて掃除をする者は居ないんですかねぇ。本当に気の利かない連中です……」

ガル「君にやって欲しくてね。他の者は雑で嫌なんだ。頼めるかな?」

ハツハル「……ガル様…はい、はい!仰せのままに、我が君…!」

シフォン「ファリーーンいるー?」(思いっきりドアを開ける)

ハツハル「っ?!なっ…」

ガル「おや?」

ハツハル「シフォン隊長……ここは王室ですよ。いきなり入ってくるなんて何を考えてるんです?!」

シフォン「あ、ハツハル〜さっきぶり〜。なぁに、君もファリンみたいに叱るのー?じゃなくて!ガル様〜ファリン見ませんでした?属性訓練、何を受けたか教えるの忘れちゃって。」

ガル「いいや。ここには来てないよ。見回りに行ったのではないかな?」

シフォン「…そっか。ありがと〜!あ、ハツハルー仕事溜まってきたから捌くのヨロ〜!じゃ!」(思い切り閉める)

ハツハル「はぁ?!シフォ…!…(ハッ)し、失礼しました、ガル様の前でだと言うのに……」

ガル「いいんだよ。本当にあの子らしい。それにしても…ファリンとシフォン。顔は瓜二つの癖に…性格が全く違う。双子とはこういうものなのかね。」

ハツハル「ファリン様にはファリン様で色々ありましたからね。仕方ないのではありませんか?」

ガル「…ふむ。ハツハル、長居させて済まないね。ここの掃除だけ頼むよ」

ハツハル「はい…お任せ下さいませ。我が君」


(研究室にて)

ファリン「……グッ……アァッ…!」

ファリン「…ハァハァハァ…何が……せいこ、う……クッ!!」(ボトルを乱暴に掴む)

ファリン「ンッンッン…」(ボトルに入ってる飲み物を飲み干す音←)

ファリン「プハッ!…ハァ……ゲホッゲホッ。
……何が成功なんだ…?何が…何が…こんなモノ…!!!!」

シフォン「よっと…!(扉を蹴飛ばす)
あーーー重いよぉお!資料なんて研究員が運べばいいじゃない!!」

ファリン「っ!!」

シフォン「隊長のやる事じゃないっしょ〜これ…どっこらせっ…!っと……ふぅ〜!疲れたァ」

ファリン「……シフォン、お疲れ様」

シフォン「あっ!ファリン!何、ここに居たの?めっちゃ探してたんだよ〜?!属性のやつ言ってなかったなーって。」

ファリン「ごめん、少し調べ物」

シフォン「へぇ〜そうなんだ。ガル様の命令かな?お疲れ様っ!」

ファリン「…うん。」

シフォン「ん、あれ?…ねねね、ちょっとこっち向ーいてっ!」(ファリンの頭を掴んでこっちに向かせる)

ファリン「むぁっ!な、何…」

シフォン「熱計るから!大人しく!」(額をくっつける)

ファリン「っ!!シ、シシシシフォン大丈夫だからっ…!」

シフォン「動かないで…ん、本当だ。熱ない。丁度いい感じかな。」

ファリン「……うん…大丈夫…だよ…」(興奮で頭がボーとしてる)

シフォン「ファリン?無理はしちゃ駄目だからね〜顔色めっちゃ悪かったし!」

ファリン「…」(シフォンを抱きしめる)

シフォン「んあっ?急に抱きついてきてどうしたの?」

ファリン「……大好きよシフォン…私の片割れ…」

シフォン「?」


(王宮にて)
ハツハル「ガル様、実験が始まってから約9年にもなりますが、ファリン様の容態はどうなんですか?」

ガル「いい感じだ。本人もそう言っていたしな。」

ハツハル「そうですか。ならば安心ですね。『例の研究』もいい結果が期待出来そうです」

ガル「ハツハル」

ハツハル「はい、何で御座いましょうか」

ガル「まだ死んではいないだろうな?」

ハツハル「えぇ。監視魔法で研究者達が見張っておりますので。確か、今回は、シフォン隊長が手伝ったのでしょう?珍しい事もあるものですね」

ガル「あぁ。おかげで言い出して来た次の日には雨が降ったよ。アイツは実験等(など)に興味はないが、眼玉(めだま)の取り出し方法には興味を示していてね。心配だったが…いやぁ、才能とは恐ろしいね」

ハツハル「初めてにも関わらず、本番1発で仕事をこなすなんて…あぁ…考えただけで震えてきました」

ガル「クククッ…私の言う事を聞かないのが残念だが」

ハツハル「ガル様…も、もしかしてですが…仕込みを途中で辞めてしまったとか…そんな事はありませんでしたか?」

ガル「あの子が仕事を最後まですると思うか?フッ…仕込みは最後までやってくれたが…途中で別の事をしだしてね。今回は…むしろそれがいい方向へ繋がったから良かったものの」

ハツハル「…どういう事ですか?」

ガル「一瞬にして娘の眼…ゲーニウスだったか。それと全く同じ物を作り、綺麗に元の位置へ埋め込む…私の命令はそれだけだったんだが、シフォンは更に手を施した」

ハツハル「更に…?」

ガル「…あぁ。ゲーニウスに細工をしたんだよ。だんだんと魔力暴走をするように…」

ハツハル「ほう…それはそれは…ですが、暴走したとして、マリアヌはただ娘を処理するだけで終わると思いますが」

ガル「いいや…ククククッ」

ハツハル「…ガル様?」

ガル「あの娘はマリアヌを潰せるほどの爆弾となったのだよ」

ハツハル「…どういう事でしょうか」

ガル「だんだんと暴走をするのは確かだ…だが、シフォンが施した魔法には、副作用というものがある」

ハツハル「副作用…そういえばそうでしたね。全く、シフォン隊長の使う魔法は独特なものが多くて覚えきれません…触れたものを変形させたり、更に多種多様な効果付属魔法…飼い主に似るのですかねぇ、魔法も。」

ガル「だからこそ、隊長に任命したのだ。ただ命令の聞かない強い騎士など、この国には必要ない。」

ハツハル「ガル様の命令を聞かぬなど言語道断でございます」

ガル「ふっ…当たり前だ。この国において、私は絶対の存在だからな」

ハツハル「それで…一体何の副作用があるのでしょう?」

ガル「…それはな」



(研究室にて)

シフォン「ファリン?ねぇちょっとファリン!」

ファリン「何?」

シフォン「なんか…どうしたの?いつもと少し違う気がする。やっぱ熱でもあるのかな〜」

ファリン「大丈夫。いつも思っている事を伝えただけよ。」

シフォン「え〜?本当に?」

ファリン「本当」

シフォン「嘘ついてない?」

ファリン「ついてない」

シフォン「…そか。まぁいいや。ファリンがそう言うならそういう事にしといてア・ゲ・ル!」

ファリン「…ふふっ。さ、戻ろうシフォン」

シフォン「うん!…あ、やっぱりちょっと待って!」

ファリン「ん?どうかした?」

シフォン「この前、ゲーニウス研究に関わったんだ〜。その結果の資料を実験室へ持っていかないといけないんだよー!忘れる所だった!」

ファリン「この前……。という事はハツハルが寄越してきた娘の?」

シフォン「そー!それ!アタイがしたいようにしちゃってさー。それは別に構わないみたいだけど、アタイの魔法って特殊でしょ?副作用が出るっていうのも書いとかなきゃダメって研究員に怒られたんだよ〜…」

ファリン「あぁ…そういう事。シフォンも大変ね…」

シフォン「今回はいつものと違う副作用にしたんだ〜!」

ファリン「私、シフォンの魔法はよく知ってるけど…副作用って選べるものなの…?普通の魔法と2つで1つみたいな物かと思ってたんだけど」

シフォン「そうだよ?一応、副作用無しで魔法は出せるんだけどねー。何かつまんないじゃん?だからアタイはいつも更に魔法をかけるの!んー…簡単に言えばトラップ魔法的な感じ?」

ファリン「なるほど…それを難なくサクッと出来るなんて流石シフォンね。今回は何の副作用を選んだの?『不安』の副作用とか?」

シフォン「違うよー。それより面白い、とびっきりの副作用だよ!聞いて驚け〜?
ドゥルルルルルッ…デンッ!
『束縛』の副作用なのだ!」

ファリン「…束縛?」

シフォン「そ!あの子、誰かに想いを寄せてた感じがしたからさー。邪魔な者を排除して、仲良い人とかを自分の物にしたくなる効果。でもこれはねー…更に副作用があるんだよね。」

ファリン「副作用に副作用って…本当にシフォンの使う魔法は予測不可能すぎて分からないわ…」

シフォン「そうかな?アタイは結構気に入ってるよ?」

ファリン「そういう事じゃないんだけど…本当に予想の斜め上を行く……で、その第2の副作用はどういうモノなの?」

シフォン「考えすぎて不安に刈られ、ゲーニウスに激痛が走る副作用!」

ファリン「『不安』とはまた違う効果ね…。」

シフォン「ま、間違って発動しちゃったんだけどねー」

ファリン「意図的ではないのね…。シフォンって本当に自由気まま…」

シフォン「意図的にしようとしたらちょこっと詠唱間違えちゃってさ。解除するの面倒臭いから放置して、更にちゃんとした魔法をかけたんだ〜」

ファリン「ふふっ……」

シフォン「ん?何??どうしたの?今笑う所あった?」

ファリン「本当にシフォンらしい…。その娘がどうなるのか、少し興味が湧いてきた…。楽しみね」

シフォン「アタイは興味ないけどねー。さってと。行こっか、ファリン」

ファリン「えぇ…シフォン」


ファリンM「この国には…この世の中には、『甘い物』など、有りはしない。人の心をグズグズと腐った果実のようにしてしまう…この世の中に。
唯一…私の心を癒すのはこの子だけ…」


(廊下にて)

ハツハル「おやぁ、ファリン様!丁度いい所に」

ファリン「用事を思い出しましたので失礼します」

ハツハル「あ、ちょっと!さっと踵を返さないで下さいよ〜!貴女様に用があって探していたんですから!」

ファリン「…私に?」

ハツハル「ガル様から、王宮の間(ま)、イーストルームへ来てくれ、と伝言です」

ファリン「イースト…東の第2の部屋か」

ハツハル「私も同席ですがねぇ」

ファリン「…チッ」

ハツハル「ファリン様、今舌打ちしませんでしたか?」

ファリン「…さっさと行くぞ」

ハツハル「はぁ…本当にシフォン様以外には冷たい方ですねぇ…
そういえば、ほかの騎士から聞きましたよ〜先日脱走者を処分したらしいじゃないですか。いやぁ、流石、冷酷ファリン様です〜」

ファリン「…」

ハツハル「真っ黒焦げになっていたので分かりませんでしたが…リオさんだったとは。あの方が脱走を図るなんて予想外でしたよ〜。ガル様万歳!って笑顔で仰っていたのに」

ファリン「…脱走したくとも声に出せばどうなるか目に見えている。仮面を被っている奴など沢山いるだろう」

ハツハル「…ふぅん。ま、人の事など分かりませんが、とっ捕まえる時に足を切り落とし脇腹を切り裂くなど、いつもの貴女らしくないと思いましたね〜。剣を使う所は、貴女らしいですが。」

ファリン「…何を言いたい」

ハツハル「私の情報網を甘く見てはいけませんよぉ?ファリン様」

ファリン「……私に忠告でもしているつもりか」

ハツハル「いいえ〜。私が言わなくともファリン様はヘマをしないでしょうし…ファリン様の気持ちはよく分かりますので…」

ファリン「っ…」

ハツハル「自分の愛でている大切な華に虫が寄り付くのは嫌ですよねぇ。何をしてでも消したく…」

ファリン「その口、今すぐ閉ざせ。切り刻んで」

ハツハル「おぉ、怖いこと…では王宮まで何も喋らない事にしましょう…首が飛びかねませんし…」

ファリン「…」




(王宮の間、イーストルームにて)

ファリン「失礼します…お呼びですか、ガル様」

ガル「あぁ。少し話がしたくてね。仕事中に申し訳ない」

ハツハル「失礼します。ふぅ…ようやく喋れましたぁ」

ガル「何だ、ファリンに叱られでもしたか」

ファリン「ガル様」

ガル「そう急かすなファリン。すぐに済む」

ファリン「はい」

ガル「シフォンからの報告書等をみてな、色々考えたのだ…そろそろマリアヌを潰しにかかろうと思うんだが…」

ファリン「…ようやく、ですか」

ハツハル「波乱の種は落とし終えましたしねぇ」

ガル「その芽がいつ出るか分からん…遅いかもしれないし早いかもしれない、という事で、だ。作戦第4部を始める。各隊の隊長にのみ内容を伝えろ。信用出来る者ならそれ以外でもいい。」

ファリン「畏まりました」

ハツハル「…そういうお話でしたらシフォン隊長にもお伝えした方が宜しかったのでは…?」

ガル「シフォンは口が軽い。この前みたいな脱走を企てる愚か者がいるかもしれないのでな。内容を知っている者を把握しておけば…誰が漏らしたかすぐに分かるだろう」

ハツハル「なるほど…そういう事ですか」

ファリン「…ハツハル、こちらを見るな。鬱陶しい」

ハツハル「酷いですねぇ…私でも傷つく事はあるんですよ…?」

ガル「クククッ…用事はそれだけだ。下がって良いぞ」

ファリン「失礼致しま…」

ガル「ファリン、君は少し残れ」

ファリン「え」

ハツハル「…では、私はお先に失礼致します。」



ファリン「……何でしょうか」

ガル「そう警戒するな。君のゲーニウスについて少し聞きたくてな」

ファリン「…そうですか。報告したように、異常ありません」

ガル「…ふむ。ならばいいのだが」

ファリン「…ガル様。私からも1つよろしいでしょうか」

ガル「何だ?」

ファリン「『この関係』、いつになれば解消されるのでしょうか」

ガル「……ふっ。さぁな。私の気分次第だ。嫌か?」

ファリン「…いえ。では、失礼致します」



ガル「……ふふ。ククククッ。容姿端麗、才色兼備、鳴き声もまたいいとくる…こんな女、手放したくないに決まっているだろう」



ファリンM「私の大切な人…唯一の片割れ。あの子を守れるならば…この命でさえ差し出そう」

シフォンM「そろそろ、か。楽しい楽しい舞台は幕を開ける。ようやく、あの城を鮮血で染め上げる日が来るんだ…フフッ。」

ハツハルM「私の全ては我が君の為に…我が君は我が君の為に…」



ガル「さぁ……始めようじゃないか」

第4話fin
お知らせ
実務でも趣味でも役に立つ多機能Webツールサイト【無限ツールズ】で、日常をちょっと便利にしちゃいましょう!
無限ツールズ

 
writening