3年/秋


傑に元気がない。
体調悪いの?って聞いても、「だいじょうぶ」って言う。でも、どう見ても、だいじょうぶじゃないよね?
「だって、顔色悪いよ」
「夏バテがまだ治ってなくて」
「それって体調悪いんじゃないの?」
「…」
隣に座る傑はうつむいて何も言わない。
「休んだほうがいいよ」
言いながら、ほんとに休めるかな?と思う。
終わりかけではあるけど、まだ夏だから呪霊がたくさん出る。傑は強いから、たくさん任務に行かされる。いやだって言えばいいのに。傑だったら、言っても怒られないと思うのに。
「あっ、夏油さんと成華先輩!」
「灰原…」
傑が顔を上げた。なにもなかったかのように、いつも通りに、傑は後輩に話しかける。疲れてるくせに飲み物を奢ってあげようとするから、私が代わりに買いに行く。自動販売機で買ったコーラと、その前に買ったポカリを持って戻ると、後輩が傑の隣に座って明日の任務について話していた。
後輩にコーラを渡すと、
「ありがとうございます!」
と大きな声でお礼を言われた。
「お金を出したのは傑だよ」
と言うと、
「でも、買ってきてくれたのは成華先輩なので!」
と言う。
傑にポカリを渡すと、
「私はいいのに…」
と言われたから、
「夏バテなんでしょ。だったら水分補給ちゃんとしなきゃ」
って言ってやると、無言で傑はポカリを受け取った。
「えっ、夏油さん夏バテなんですか!?」
「…ちょっとだけだから」
…ウソつき。
「じゃあ、明日のお土産は体にいいもの買ってきますね!成華先輩はなにがいいと思います?」
「なんでそこで榊原に聞くんだ?」
「傑それどういう意味?」
「明日の任務、成華先輩と七海とで行くんです」
「へえ、そうなんだ。あまりいじわる言うなよ榊原」
「だからそれどういう意味?いじわるなんか言ってないし。この後輩が何も知らないだけ。もう一人の後輩も知らなそうだけど」
「?七海は賢いですよ?」
「そういうことじゃなくて…」
…やりにくい。この後輩。
「何も知らないっていうのは…」
説明しようとしたけれど、足音が聞こえてやめた。振り向くと女が立っている。女は自己紹介もせずに、いきなり好みのタイプを聞いてきた。…変態?
そこに、バカ正直に後輩がタイプを答えた。
「…そういうところだよ。何も知らないっていうのは。ありえないとは思うけど、これが術式だったらどうするの?もっと疑わなきゃ。そうじゃないと、騙されて…」
「榊原」
「…なんでもない。とにかく、明日はよろしくね。じゃあ、私たちは準備があるから…」
後輩を連れて出て行こうすると、女が、
「榊原って、あの榊原?」
と呼び止める。後輩はもう部屋から出て行っていた。
「…どの榊原でしょう」
「ここに入学したのは当主の命令?」
「…知らない人にどうしてそんなこと教えなきゃいけないんですか?」
「特級術師の九十九だよ。よろしく。これで知らない人じゃないね」
「知ってどうするんですか?あなたに関係ないでしょう?それとも、あなたに言ったら、何か変わるんですか?」
言いながら、特級術師に近づく。
「好きなタイプはって聞きましたよね?私は、あなたみたいな女の人だいっきらい」
「嫉妬かい?かわいいね」
「そんなんじゃない!」
大きな声を出すと、傑がびっくりした顔で私を見た。やめてよ。そんな顔で私を見ないでよ。
呪術師のくせに。私とおんなじ女のくせに。
なのにどうして、こんなにも違うの?
「家なんて…呪術師なんて…」
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