【閲覧注意】 アレクセイ・コノエ×アーサー・トライン


「シンが艦長かぁ…そっかぁ、もう君はそんなところまで来たかぁ…感慨深いなぁ」
飲まずにはいられなかった。
あのシンが、あの問題児が、艦長となるとは思わなかった。いや、彼なら成れるだろう…と、ほんの少しの期待が現実となったんだ。ここまで来るのに、紆余曲折と過酷な運命を進んできて、彼の身も心も僕たちが気付かない内に、壊れ切っていた。それでも、僕たち、僕は見ないふりをしていたんだ。
そうでなければ、死んでしまうから…。情けない。
「アーサーさん飲み過ぎですよぉ。それ何回目ですか」
「だってさ、君はあのインパルスのパイロットで赤服で…それに、僕たちを助けてくれたヒーローが…。
あの頃は、君にばかり頼りっぱなしだったね。君を追い詰め続けたのも、僕たちだった」
「アーサーさん…もう、良いですから。俺は気にしてませんよ」
「でもさぁ…もっと余裕があれば、いやでも…僕も力不足だったね。ごめんなぁ、シン」
「いいですってば。…そう思ってくれるだけでも、嬉しいですよ」
優しいな、君は。
そこはもっとあの頃みたいに怒ってくれていいというのに。そこが、君の良さだと解っているけど、もっと怒ってもいいんだ。
「てか、よく副長を引き受けてくれましたね。ほら、その…コノエ艦長と、そんな仲でしょ。アーサーさん」
「んー、まぁ…そうだね。でも、僕は君に頼られたら喜んで副長の任に就くよ」
「…」
危なっかしい、と最後に付け足せばぶっすりと子供みたいなふくれっ面。少しばかりもう、そんな歳ではないけれど。…君の時がようやく流れたというと、嬉しいんだ。
それにしても、君に色沙汰が分かるようになるとは。
そっか…もう、艦長か。シンが任されたのはワルキュリエ級ヴェルダンディ、君らしいつくりの艦だよねぇ。攻撃に特化し、特効が最も似合う軍艦。それにこの世界では珍しいコーディネイターとナチュラルの混合部隊。
最初はどうなるかと思ったけど…シンらしく、まっすぐで熱い部隊となったなぁ。ノイマンも笑うことが多くなってきたし、マードック主任もシンの粗っぽさにドヤしてはいるけど…しょうがない、で済ますあたり慣れきっているとみる。
「そうだ、シンはもうここの露天風呂入ったかい?ほら、個室にあっただろ」
「入りましたよー、すっごく気持ちよかったです!」
「そうだろ、そうだろ。あのアスハ代表のお墨付きのホテルだからね…おっと、ごめん」
「いえ、もう大丈夫です。てか、ここって結構高いんじゃ…足りるんですか?俺結構今月ピンチなんですけど」
「ここは代表の好意だから安心しなよ。…それと君ねぇ、またバイクのパーツ買ったのかい?」
「えへへ…」
「ルナマリアに怒られても僕は助けられないよ」
「はぁい…。…あの、変なこと言ってもいいですか?」
「んー、なんだい?それと、シンはもうこっちだよ」
こと、とグラスとオレンジジュースの入ったグラスをシンの前に出す。中身を理解したようで、シンはますますさっきよりもふくれっ面となる。ふくり、と頬を膨らます様は、まだまだ子供だ。
「それ、アーサーさんだって同じじゃん。…新婚旅行、行ったんですか?」
「行ってないなぁ。行く暇がないだけだけどね」
「…えっと、すいません」
「何で君が謝るのさ。それと、君艦長権限使おうってんなら、僕にも考えがあるからね…君より歴は長いんだから」
先にくぎを刺しておく。そうでもしないと、彼はまた自分の体を酷使してまで、こちらの休みを与えようとするのだ。艦長とは確かに、クルーの面々も考慮しないといけないが、だからと言って自分を鞭打たせてまで、やるのは違う。
「シン、君はヴェルダンディのトップだ。君が酷使するたびクルーの心労を削る、学ばせる機会すらも失わさせている。
そんなことをするようじゃあ、まだまだだよ。体が資本なこの世界、休むことは誰であれ平等だ」
「うっす…、いえ、はい」
「よろしい。…ふあぁ、そろそろ戻ろうか。ルナマリアも待ってるだろ、ね?」
「むう、からかわないでくださいよ」
「まったく、若いっていいなぁ」
「あんたも十分若いでしょ…」

「ただいまもどりましたぁー、あれくせいしゃーん」
そろそろ回収しに行くか、という時にいいタイミングでアーサーが戻ってきた。顔を真っ赤にし、ユカタも着崩れ肌がのぞける。体つきは軍人らしくしっかりとしているが、赤身帯火照った体がいっそう艶めかしい。
シャツすらなにも着ておらず、下着くらいしか着ていない。もっとも、私が着付けそんな事を入れ知恵をしたんだが。うかつだったな…随分と無防備にさせてしまった。
ふらふらと千鳥足気味なアーサーを倒れぬよう、腰を抱きこちらへと寄せる。アーサーもけたけたと笑いながら背中に両腕を回す。
「定番と言える泥酔っぷりだね」
「シンってば、ほんとうに大人になってぇー。かあわいいルナマリアとイチャイチャするんですよぉ。もう、こっちがはずかしいんだぞぉ」
呂律の回っていない口で、すらすらとここに戻ってくるまでの状況を嬉しそうに話していく。本当に嬉しそうで、こちらとしても文句はなく可愛いと思えるが。
年を取ってからか、妙に感情が抑えが効かなくなってきている。とはいえ、アーサーとシンくんの関係は十分理解している。猶更、嫉妬心を沸かせるのは筋が違う。
「さ、そろそろ布団に入ろう。飲み過ぎだよ」
「はぁーい」
ふらふらとするアーサーをどうにか寝室まで誘導し、ふすまを開ける。
中央にふとんが二式敷かれており、両者ともぴったりと隙間はない。…旅館側の配慮にしては、ずいぶんと珍しいな。それに言っていないはずなんだが、…いや、まぁ…いいか。
布団へと足を踏み、柔らかな感触を感じながら膝をつき、腰を下ろした。アーサーも遅れながらも、膝をつきふとんの上に座り込む。
ずる、と浴衣がさらに崩れ、肩がさらけ出される。
「だいぶ崩れたな、そのままジッとしていなさい。整わせる」
んー、と気の抜けた返事をしながら両腕を背中から肩へと上がらせた。酔いが深くため間隔が短く、血色の良い肌に汗がわずかに流れるたび、こちらの理性、情緒を乱す。
気づけば首筋に目がいってしまう。筋がくっきりとし、つばを飲み干すたびにわずかに動く…それがどうしても、目が離せずじっと見続けてしまう。着崩れた浴衣が整い、あとは帯を締めるだけだ…それだけのはずだが、一向に手を動かす気が失せている。
「…あれくせい、さん?」
「あ、…ぁあ。すまん」
ちらり、と上目遣いでこちらを見るアーサー。薄く開いた口、頬が赤らみ目元もとろんと細く、眠たそうだ。
ジッと、こちらを見つめ何かを言いたげに見ている。やましい気持ちがあるが、そればっかりは赦してほしいと思いながら、怒られることを覚悟で見つめ返した。
ふと、彼が両肩に回していた腕をおろし私の片腕を取り、導く。
導いた先は彼の胸、手を開き押し付けるようにしながら、口を開き聞こえる程度の囁きで言葉をン並べる。

「…シませんか?」

不意打ちともいえる言葉に驚き、もう片方をこぶしに作り、胸に押し付けられた手に力が入った。
いきなりわし掴みしたため、アーサーからか細く、甘い声が上がる。
「…君、解って」
「いや、なら…良いですよ。…その、久しぶりに、…いやっ!何でもないです、それじゃあ、寝ましょう…か」
なんて顔してるんですか…。ふい、ととっさに目を逸らされ、そう呟かれた。耳が赤い、頬も赤く染めて…恥ずかしがっている様子が映る。
とっさに口元を抑える…、あぁ、自分はなんて顔しているんだ。口元を上げ、まるで嬉しいと言わんばかり。
実際嬉しいんだ、求められることが。
少しの間とともに、アーサーの顔が迫り…柔らかな感触が、唇にあたる。感触を楽しむ前にすぐに離れてしまった。
そして、ぽそぽそと聞き取りづらいが、どうにか聞き取れるくらいの言葉が紡がれる。
「…お手柔らかに、お願いします」
懇願ともいえるものだろうな。だが。

「すまない…それは、無理な相談だ」
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