絶対秘密の同居生活 第八話


「見てこれ!表紙がYUだったから思わず買っちゃったー!」


「わ~かっこよすぎ…この目で見つめられたらやばいわー」


「ほんとかっこいいよね、彼女とかいるのかなー」


「同棲中の彼女とかいたらショックすぎて殺したいかも…」




殺!?



ボキッと数式を書いていたシャーペンの芯が勢いよく折れた。




落ち着け…落ち着け私!




私はそう自分に言い聞かせながら震える手でカチカチッと新しく芯を出す。




クラスでYUUの話が出ることなんて珍しくもなんともないし。


私は綾人の彼女でもなんでもないし…同棲じゃなくて期間限定の同居だし!!





「優里ー、あと5分で昼休み終わるよ。そろそろ理科室移動しなきゃ」



「うそっ、もうそんな時間!?」




呼びに来た稟琉の声に、私はシャーペンをいつものようにシャツの胸ポケットに刺すと慌てて立ち上がった。




「珍しいよねー、優里が課題やるの忘れるとか」



理科室に向かっている途中、隣を歩く稟琉が私の顔を覗き込んできた。



「もしかして具合悪いとか?なんかさっきも顔色悪かったし、手も微妙に震えて…」


「全然!全然元気だよ!ただ昨日は気づいたら寝ちゃってて…」




綾人のことを考えていたらいつの間にか寝てて、気づいたら朝だった。


6時間目の数学の課題、結局まだ終わってないし…



5時間目の理科が終わったらすぐに教室戻ってやらないと。




「具合悪くないんならいいけどさー」




私の顔から視線を逸らして、前に向き直る稟琉。




「何かあったら言ってね?なんか優里、最近ちょっと様子が変な気がして」




ドキッと心臓が跳ねる。




「…大丈夫だよ、私はいつも通り。変わらないから」




綾人が変わっても…私は変わらない。



私は私で、自分の生活を生きるだけ。



―――…



「はーやっと授業終わった。優里帰ろー…って、何やってんの?」



床に膝をついて机の下を覗き込む私を不思議そうに見る稟琉。



「稟琉…シャーペンどっかいっちゃって」


「シャーペンって、いつも胸ポケットに刺してるやつ?」


「うん…昼休みまではあったのに」


「まじかー、理科室探してみる?」


「うん…」




理科室から戻って、さあ数学の課題やらなきゃ!と思ってシャーペンを出そうとしたら、いつの間にかなくなっていた。



理科室では使ってないから、教室で落としたか、理科室でおとしたのか…わからない。


移動する前バタバタしてたしなあ。




でも絶対に見つけたい。あれはただのシャーペンじゃないから。


だって、あれは…
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