【閲覧注意】アレクセイ・コノエ×アーサー・トライン


(コノエとハインラインでアーサー談義なコノアサ小咄。拙作のハインラインはアーサーに興味ないけど恋人の趣味悪いな〜と同情はしています。そして相変わらずコノエの愛が重いです。その他諸々捏造と幻覚をこねくり回しておりますのでご注意ください)



「彼は随分と恋人の趣味が悪いですね」
「……驚いた。お前がそんなことを言うとは」
「コノエさんとはもう8年と149日の付き合いですので」

 本当に驚愕しているらしい。その辺に置かれていた椅子で手持ち無沙汰にしていた筈のコノエがハインラインの視界を覗き込んで表情から感情を読み取ろうとするのを視線で追い払う。
 話を振ったのは本当に気まぐれである。ハインラインの仕事を中断させる為に深夜にも関わらずこうやって呼び出されてしまい、些か機嫌が悪い上官への労りというやつだ。

「奥方に逃げられてもう6年と56日ですか。随分経ちましたね」
「僕としてはそこまで正確に覚えている方が驚きなんだが」

 年数ならまだ分かるが……と、それ以上の文句は口の中で転がされたため不明瞭な響きとなり、流石のハインラインも聞き取れることは叶わなかった。
 ハインラインとしては特別思い入れのある日ではなく、単純に覚えていられるスペックがあるだけである。変な意味に取らないでほしい。
 遠いところを眺める横顔に寂寥はあれども後悔の念は無い。それを視界の端に収めながら言葉を続ける。

「『貴方のことは今も愛しているけれど、それよりも恐怖が勝ってしまった。私の為に貴方から離れることを許して。さようなら』でしたよね?」
「本当に記憶力がいいと実感しているよ……。一度しか言ったことないんだが? そうだよ。一語一句そのままだ」
「ありがとうございます」
「今は褒めてないよ」

 胡乱な目を向けられてもハインラインにはそよ風以下の圧にしかならない。そもそもこんなものは圧にもならない。
 『世間話』は止まらない。

「そして今度は14も歳下の男の部下に惚れて? 告白して? 受け入れてもらって? どうせ今も大佐の部屋にいるんでしょう」
「そうだよ。明日……じゃないな、今日の業務には支障はないようにしたつもりだが、ふむ」

 ここに居ないコノエの情人を思い浮かべる。軍人らしからぬ穏和な面持ち。一応ではあるがミレニアムにおける上官の一人。
 ミレニアムを本格的に稼働させるにあたって顔合わせした際の第一印象は『良く言えば優等生、悪く言えば能天気な男』だった。だがその日の帰路でミネルバの副長だった人物だとコノエから聞かされた時は思わず聞き返してしまったのは記憶に新しい。
 呼吸をするように人の懐に入り込み、人の輪を作る。初期の印象で頼りないと評されるが、人徳故に周囲に人が集まり自然とコミュニケーションが進む。軍艦という閉鎖環境において最も重要なポジションだろう。(ハインラインにとって必要であるかはさて置いて)
 また、本人に言うと大いに浮かれる為一生言うつもりは無いが、ああ見えて精密な並列処理を得意としている。部下からの状況報告を聞きながら対応し、正確かつ的確な戦況確認や火器統制を行えることは既に知っている。
 ハインラインが出会った人間の中で最も奇異に映る男。それがアーサーだった。
 そして恐らく、コノエにとってアーサーは初めて出逢った『同志』でもある。むしろそうでなければこの上官はここまでどっぷりと深みに嵌ることなど無かっただろう。
 二人が望むスタンスは似通っている。
 人的被害は敵味方関係なく最小限に。生きて帰るのが第一目標。よくもまぁZAFTからここまで相性のいい人材を揃えられたものである。
 ……まぁ、相性がいいとはいえコノエが早々にアーサーに手を出したのは予想外だったが。
 ミレニアムが正式稼働をして13日目の夜には艦長室に連れ込んでいたことをハインラインはよく知っている。何せ14日目の早朝に通信を入れたら明らかに情事の後といった出で立ちの上官に加えて『寝てて構わないよ、アーサー』と画面外、それも生活エリアの方へ向かって言っていたので。
 あの時は本当になんてものを見せてくれたんだと苛立ちを通り越して殺意すら沸いた程だった。あれ以来早朝と深夜の通信はチャットで通知を入れてからするようにしている。

「ハァ……」
「自分で言ってきたのに溜め息をつかれると流石に傷つくんだが……」
「これくらいで傷つくなら最初から手を出さないでしょう」
「多少は傷つくさ」

 でもまぁ形振り構ってられないのでね、と業務中なら絶対に見せるべきでない微笑を浮かべるコノエに文句を言いたかったが、生憎と今は深夜帯。つまりは業務時間外である。
 仕方無しに大仰な溜め息で返答した。やはり『世間話』を提供するべきではなかった。

「ところでいい加減作業を止めてくれないか? お前が休まないからこんな時間に開発室に来る羽目になったんだ。もう3時だぞ……」
「キリのいい所までやりたいんですよ」
「君の『キリのいい所』というのは完成という意味だろう? こちらは疾うの昔に学んでるんだ。ほら、保存しなさい」
「あっ待ちなさい! あぁ〜〜〜〜!!!」
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