行動がピタゴラスイッチ的に世界を救ってるけど自覚一切ないJK
作成日時: 2024-04-16 12:45:19
公開終了: -
ガガーン! 不穏なカミナリ光に照らされて、ブラック=ダークネス・シュバルツ博士の、恐るべき発明品が姿を現した。
「くっくっく……クークククク」
雷音ひびく、薄暗い研究室で、ブキミに笑うブラック博士。
再びカミナリが轟く、その瞬間ブラック博士が両手を広げて、「歓喜」のポーズをしてみせる。
「ついに完成したぞ! わが生涯最高の発明品……『停電なおしちゃうもんねネーター』!」
「そこまでだ! 悪の総裁、ブラック博士!」
バターン! 声と共に研究室のドアが勢いよく開かれ、仮面の女騎士が部屋へと飛び込んできた。
揺らめく白髪のポニーテールに、顔のわからぬ面鎧。目から噴きあがった冷たい炎は、彼女の怒りを現している。おお、彼女こそ!
「やはり現れたな、ナイト・ブレイカー!」
「ブラック博士、キサマの悪巧みを許しはしない! とうっ!」
肩までの髪をなびかせ、余裕顔で振り向くブラック博士。そんな彼女にナイト・ブレイカーは容赦なく、無慈悲な飛び蹴りを仕掛ける!
ブレイカーの蹴りは破壊力、数万トン。受ければゾウもたやすく、一ころだ。
「甘いわ、ばかめ!」
だが、それも当たればの話。余裕の笑みのまま、博士は即座に壁のスイッチに飛びついた。
「なにっ? あっ、これは!」
ジャキンジャキンジャキン!
部屋中、四方から飛びかかるロボット・アームにとらわれ、ナイト・ブレイカーは宙づりになる。
「ナイト・ブレイカー対策ロボット・アームだ。動くなよ」
「クッ。こんなもの──アグゥ!?」
「ゾウをも眠らせる威力の、電気ショック鉄カセだ。動くなと言ったろ」
煙がたちのぼり、黒こげになるナイト・ブレイカーの前を横断し、博士は部屋の電灯をつけた。
パッと部屋じゅう明るくなり、ナイト・ブレイカーが仮面のしたでうめく。
「なんだと。マイアミは皆、停電してるはず──」
「これがネーターの力だ。今こそ、わたしの計画を明かしてやろう」
マイアミのまちは、三日前から停電中だ。
住民と同じく、停電に苦しんだブラック博士は、停電なおしちゃうもんねネーターを開発。
はじめは悪人らしく、ネーターの力を自分だけで利用しようと考えたが……、
「しかし、わたしは思ったのだ。まちのヤツらも停電に苦しむのは同じ。ならば、あのいけ好かない市長のやつもネーターを欲しがるんじゃないか、とな……」
「そして、親切なアンタはボランティアに無償で譲っていただける……とでも言うのか?」
「皮肉を言うのはよせ! もちろん、高値で売りつけるさ。ドルじゃないぞ、市長のイスだ」
ナイトブレイカーの目が、激しい炎に燃え上がった。ロボット・アームの鉄カセが、高温に焼かれスパークをふく。
「そんなことは、絶対に許さないぞ。ブラック博士!」
「お、おい……嘘だろ。ナイトブレイカーの怒りの炎は、芯体強化チタンのカセすら溶かすのか」
「キサマのような身勝手ものに、このまちを譲るワケにはいかんのだ!」
バッキン! カセが破壊され、ナイトブレイカーの怒りが解放された。
飛びかかる女騎士に、運動は苦手なのだが、博士が仕方なく応戦する。
掴みあい、取っ組みあい。両者、転がりまくって殴り合った末、ついに騎士の拳が博士をブッ飛ばした。
「ぐわ~……! アグ! だ、誰だ。こんなトコに鉄のフーセンなんか置いたのは……はっ!」
読者の皆さんもお察しの通り、ブッ飛ばされた博士がぶつかったのは、起動中のネーターだ。
想定されてない衝撃を受け、火花を噴きあげ煙をはいて、奇妙な振動を繰り返すネーター。
「うわ~! やばい、せっかく溜め込んだ電気エネルギーがぁ!」
「観念しろ! ブラック博士!」
「行かないで! わたしの電──ぐわっ!」
上手投げをくらい、投げ飛ばされた博士に見送られて、破裂したネーターから電気エネルギーが発射された。
「うわ~! わたしの電気が、市長のイスがァ~!」
ところ変わって、アメリカ支部地球外脅威対策センター。
赤い警報音が鳴り響き、複数の職員がてんてこ舞いの真っ最中だ。
「公表すべきです! 人類の寿命を、世界は知る権利がある!」
「パニックになるぞ! そんなわけにはいかん!」
センターの巨壁スクリーンに映し出されているのは、母なる地球へ刻一刻と迫り来る、隕石だ。
「恐竜絶滅の規模です! 海に落ちて、電波が役立たずになる前に!」
「だからこそだ! 我われは今、静かな安楽死を選べる立場にある!」
再び場面が変わり、フロリダ。
宙を切り裂くネーターの電気エネルギーが向かう先、一軒家の前で冴えない夫婦が言い争っている。
「あんた! また無駄な買い物したわね。電気で動く巨大ビーム装置なんて、一体なにに使うってのよ!」
「うるさいな。セールで半額だったんだよ……」
「家にも入らないし、どうするのよ! 家のローンも残ってるのに!」
奥さんの怒りが頂点に達し、ビーム装置を手のひらで指す。そして付属の説明書を、地面に向かって叩きつけた。
旦那は困って、頭をかくばかりだ。
「これを動かすのに、まち一つを賄える電気が必要ですって? そんな電気がドコにあるのよ。都合よく電気が空から飛んでくるとでも!?」
バリバリババッ、ズガビビビビ!
飛んできた電気エネルギーが偶然、ビーム装置に命中。チャージ充填、マックス装置は天にビームを撃ち放つ。
「うそ……」
「ど、どうだ。ちゃんと装置は動いたぞ」
絶句する妻と気が動転した夫らと同じく。脅威対策センターの人々も困惑し、やがて彼らは歓喜した。
「隕石、消滅! 先の正体不明謎ビームによるものだと思われます!」
「い、一体なにが……」
「いいだろ、そんなこと! 地球は救われたんだ。俺たちは明日も生きてられるんだ、バンザーイ!」
さて、マイアミ。停電も復旧し、登校時間となったブラック博士は、さめざめと泣いている。
「クッソォ……市長にさえなれば、勉強しなくても叱られなくなると思ったのに」
「それは違う。市長になったら、宿題より厳しい仕事が増えるだけだ」
ナイトブレイカーは、ばっさりと言い、感情のない炎で博士を見つめた。
「じゃあな、今日から学校も復旧だ。宿題、ちゃんとやってこいよ」
「うるさい、キサマには関係ないわ! ばーか、ぶわ~っか!」
ベランダから飛び降りたナイトブレイカーは、メガタカイ・ビルのふもとに着地。
変身を解くと、迎えの執事がリムジンから降りてくる。
「市長、仕事もたまっております。学校から帰ったら、」
「分かってる。まったく、市長であっても女子高生の本分を忘れられる時間なんか無いんだからな……」
リムジンが朝の日差しを受けるなか、マイアミの道路を滑っていく。
若き市長の苦労の日々は、いまだ始まったばかりだ。
𝑓𝑖𝑛
お知らせ
実務でも趣味でも役に立つ
多機能Webツールサイト【無限ツールズ】で、日常をちょっと便利にしちゃいましょう!
▶無限ツールズ