愛(かな)しきは君の声


                               
                                   
                             
                                 
                                  
                                
「あ゙っ、ぁうっ、んんっ、はぁっ、ゔぁ…っ、あぁあ…っ」
熱い、あつい。
頭が痺れて、何も分からなくなっていく、この刹那。
この時だけ、日車は胸の裡に秘めた想いを吐露してくれる。
初めは、何も覚えていなかった。
何度か同じような状態になる度に、段々と記憶が残るようになった。
今ではもう、意識も記憶もはっきりと保つことが出来る。
当然なのだ。
只人の脳では耐えられぬ快楽の衝撃も、半呪霊のこの身では直ぐに適応することが出来る。
だが、これは彼には秘密だ。
全て覚えている事が知られれば、彼は二度と口にしてくれなくなるだろう。
俺への、愛の言葉を。
「……脹相、好きだ。愛してる。愛して、いるんだ……」
「んっ、あぁ…っ、ひぁあ……っ、あぅっ、あ、い…っ、んぁあっ」
快楽の狭間で聞こえる告白に、応えてしまいそうになって慌てて誤魔化す。
駄目だ。俺は今、何も分からなくなっているんだから。
喜びで流れる涙も、快感によるものだと偽って。
彼の本心に嘘でしか応えられない自身に、絶望にも似た感情が沸き起こる。
嬉しいのに、悲しい。
哀しい。
かなしい。
「……愛してる、愛してる…おれの、おれだけの…脹相……」
ああ、愛しい。
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