ここだけ黒崎一護を4等分してまとめ


ここだけ黒崎一護を4等分して
章ボスの幼少期に配布
心の傷として残るタイミングで死亡後
、原作通りに黒崎一護(1人)として生まれ直した世界

 俺は黒崎一護、十五歳。俺には前世の記憶が五つある。

 最初の記憶で俺は死神代行をしていた。ルキアから力をもらったことをきっかけに、大切なものを守るため色んな奴と戦ってきた。だけど、滅却師の親玉ユーハバッハとの決着が着いた後の記憶は途切れている。あの後、俺はちゃんと皆と一緒に生きることができたんだろうか…



白哉ルート(最終好感度117)

 二つ目の記憶は尸魂界ってとこで死神をやっていた記憶だ。俺はそこで朽木白哉と友達だった。
 出会ったのは悪戯好きな夜一さんを俺が追いかけてた時で、どうやら白哉もいじられる機会が多く親近感を覚えたらしい。
 
その日は朽木家で使うらしいオリジナルキャラを描いていたんだが、ワカメに手足を生やしたヘンテコ生物を創造していた。変わったものが好きだなあとは思っていたがここまでとは…原案のまま通りそうだったから思わずツッコミ入れちまったぜ。

 流魂街に用事があって、白哉も俺に付いて行くというから一緒に出かけたことがある。そこで具合の悪そうな女の人がいて、助けようと近づいたらルキアにそっくりで本当に驚いた。俺は鬼道がからっきしだから白哉に手当てを任せて、暫くして落ち着いた女の人はお礼を言って去って行った。あの後白哉の様子が少しおかしかったが何だったんだろうか?

 その後白哉も死神になり、護廷十三隊に入隊した。あいつは決まり事に忠実だから、俺とは合わない部分も沢山あって、実際に整の魂葬で揉めたこともある。だけど、お互いに守りたいものがあると気づけたから、俺たちは本当に理解し合える友達になれたんだ。

 それは本当に些細な罪だった。俺みたいな奴なら見逃してもらえるようなやつ。だけど、あいつは酷く気に病んで、俺はそれを見ていられなくてその罪を横から掠め取ってやった。そうしたら何がどうしてか四十六室の介入により俺の処刑が決まった。どうやらかなり前から目をつけられていたらしい。だから、これはお前のせいじゃない。

「迷惑かけて、ごめんな」

藍染ルート(最終好感度82)
 
 三つ目の記憶でも同じように尸魂界にいたんだが、どうやら俺は虚寄りの存在らしく、仮面を自由に出し入れすることができた。霊圧から虚と誤解されても面倒だし、他人とあまり関わらないで生きるようにしたんだが、あいつを見つけて無視することなんてできなかった。

 既にあの場所を知っているのかいないのか、青天井をただ真っ直ぐに見上げる子ども姿に刀を交えて触れた孤独を思い出して、つい隣に腰を下ろしてしまった。なんとなく勘が働いて、仮面を被ったままにしたら警戒されてしまった。まあ、仕方ねえよな…俺もそうする。

 それから何度かちょっかいをかけに行って、慣れてきたのか藍染から質問されることも増えてきた。俺の正体についても聞かれたが、正直今でもよく分からねえから上手く答えられなかった。あとは、どんな世界を望むか聞かれて、幽霊が虚にならない世界と答えたときは面食らった顔してたな。あれは傑作だ。

 ある日の夜、藍染が俺の寝ぐらへ訪ねてきたことがある。いつも帰る方向を覚えて霊圧を辿ってきたらしく、いきなり来たもんだから慌てて仮面を着けて外に出た。それから他愛もない話をいくらかして、いい加減子どもが起きてるには遅い時間だからと担いで送り返した。

 初対面の頃に比べれば随分と気安い関係になった頃、隠した力を誰にも明かさないのかと聞いてみたことがある。しかし、意味深に見つめられたあと適当にはぐらかされてしまった。結局、俺があいつに関わっても、あいつが本来の力を他人に明かすようになることはなかった。

 その次の日のことだ。尸魂界ではまず感じることのない、虚の霊圧が伝わった。それも多数。死神達が来る前なら戦っても大丈夫だろうと、現場にいち早く着いた俺が見たのは、夥しい数の虚に囲まれる藍染の姿。恐らくあいつの計り知れない霊圧が虚を惹きつけるのだろう。あいつの力を考えると、助けなんて必要なかったんだろうが、それでも動かずにはいられなかった。背中に痛みが走る。だが、まだ倒れるわけにはいかない。側から見れば虚から人を守ったおかしな虚なんだろうな、俺は。

「まぁ気にすんな、こういうこともあるさ」


銀城ルート(最終好感度101)

 四つ目の記憶で、俺は現世に生まれた。霊感はあるがなんの能力も発現しないただの人間として。妹が生まれてすぐに両親が亡くなり、働きながら妹を育てることにした。どうやら妹にも霊感があるらしく、たびたび霊を指さしてはしゃいでいた。俺はどんな時でも妹を守れるよう、注意深く日々を過ごしていた。

 勤めていた料理屋で修行を積んだ後、自分の店を持つことにした。時を同じくして、幸か不幸か妹が完現術に目覚めたのだ。妹の霊圧が変化したことを察知し、俺はすぐに妹の元へ向かった。既にデカい虚が妹の正面にのっそりと立っていて、妹に手を伸ばしている。咄嗟に立ち塞がった俺に虚の爪が届くことはなく、その巨体は真っ二つに切り裂かれた。その間に見たのは、俺が知っているよりも随分と若い銀城空吾の姿だった。

 その後、銀城は妹に完現術の扱いを教えるようになり、たびたび俺の店にやってくるようになった。金を取るのも気が引けるから、賄いだと適当に理由をつけて一緒に飯を食っていた。ラーメンが好きだったなと思い出し、試しに作ってみれば大好評だった。過去の記憶の事を考えると俺なんかが関わる資格はないとも考えた。だけど、若い銀城は良い奴で、俺はこいつともう一度向き合うと決めたのだ。

 銀城と喧嘩した。渾身のラーメンを俺の分まで食いやがったのだ。大人気ないと思うが俺だって腹が減っていたのだ。とりあえず銀城を追っ払い、空きっ腹で営業時間を乗り切った。その後、銀城が店に現れることはなかった。……マジでしょうもねえ喧嘩だな。
 後悔先に立たずとはよく言ったものだ。その虚は寄生型で、微小な霊圧に振り返った時には既に飛び付かれていた。俺の中で僅かに眠る力を嗅ぎつけたのか、無遠慮に体内を弄られる感覚が続いて、気づいた時には怯えた表情の妹に白い手を伸ばしていた。刹那、赤い血を撒き散らして肘から下が飛んでいく。ああ、よかった。来てくれてたのか。でも、こんなことになるなら、ラーメンくらい許してやればよかったな。なにせ、妹の命も、妹を殺そうとする兄貴の魂も救ってくれたのだ。十字架の刃が眼前に迫る。

「ありがとな」

ユーハルート(最終好感度117)

 五つ目の記憶、これは俺が知る限り最も古い記憶だ。俺は農奴として小さな畑を耕して生きていた。毎年同じ畑を使っても土地が痩せず、干ばつも豪雨もない恵まれようで、地代は重かったが食べることに困らなかった。
曇り空が広がる初夏のある日、館の一部が燃えて、当代の領主サマが亡くなったという知らせを受けた。その片付けを手伝っていた時に、俺はあいつを見つけたのだ。黒く焼け崩れた瓦礫の中、降り出した雨で濡れた手に触れると酷く懐かしい霊圧が流れ込んできて、俺の中で眠っていたそれと溶け合うのが感じ取れた。俺の半身に良く似た姿。順番的に考えると逆かもしれねえけど、助ける理由はそれだけで充分だった。

 あいつを人知れず引き取って、一緒に生活するようになってから暫く経った。食事は畑で採れたものを使って、一緒に食べるようにしていた。こんなもんじゃ足りないだろうけど、少しでも何かを返したかった。

 月の見えない夜だった。あいつが俺を置いて何処かに去ろうとしたことがある。確かに、これまで通りの暮らしは続かないだろう。土地が痩せ、天候が荒れることも多くなり、あいつの姿は出会った時よりも幼くなっていた。共に進もうとその小さな手を引いた。生きるために走り続けなければならないなら、俺はその側に居て助けてやりたい。今はまだ知らないだろうけど、あんたが俺にそうしてくれたように。僅かに、けれど確かに握り返される感触があった。
 
誰かの不安を取り除くために、あいつは自分の力を惜しみなく与えた。そしてその力が還ってくる度に、あいつは少しずつ変わっていった。俺は恐ろしかった。いつかそれが、あいつの優しさを枯らしてしまうんじゃないかと。直接話したこともあるが、止まるようなタチじゃないこともよく知っていた。なあ、あんたも同じ気持ちだったのかな。
 身体中に繋がれた医療器具は、治療というよりも延命目的のものだった。だが、それももうじき役目を終える。あいつの隣に立ち、滅却師として生きることを選んだ。仲間ができ、賛同者を集め、多くの後続を育てた。だが、そのほとんどを戦争で失くしてしまった。永い死から蘇った時、独りで泣かなければいいと願う。あいつのことは、わずかに生き残ったやつらに任せるしかない。

「……すまねえな、俺はここまでだ」
 
来世があるかわかんねえけど、もし会えるなら、雨の降る瓦礫の中じゃなくて、青空のよく見える場所が良い。そう思いながら目を閉じた。

銀城との再会
 薄暗い照明、ベタつく床、二本のマイクと廊下から漏れてくる歌謡曲、そして目の前でラーメンを啜る男。かれこれ五分はこの光景を眺めている。男は俺にラーメンを注文するか聞いてきたが断った。こちとら状況把握に精一杯なんだよ、マイペースなところは変わらねえな。

 下校中の俺を手際良くカラオケボックスに拉致した銀城の様子は落ち着いていた。恐らく以前から監視されていたのだろう、ルキアのいない今日を狙われた。死神代行になって暫く、コンのヤツが俺の体で跳ね回ったのが三日前。こんな早くに接触してくるということは、銀城には記憶がある。そして、俺が特別抵抗せず従ったことから、俺にも記憶があることは理解しているはずだ。色々問いかけたが躱され続け、届いたラーメンを食い始めてからは流石の俺も諦めて待つことにした。

「やっぱりお前のラーメンのが美味えな」

 ご馳走様でした、という言葉に顔を上げ、箸を置いた銀城に呆れ顔を向けてやる。

「そりゃどーも、暫く作ってねえけどな」

「なんでだよ、店でも開いてりゃ通ってやるのによ」

 開かねえけどそんときは金取るからな、そう返せば銀城は笑った。ぎこちない笑顔だった。いつからそんな風に笑うようになったんだろうか。不意にその笑顔が仕舞われて、間合いを詰められる。立ち上がった銀城の手元にはペンダントが握られていた。
「お前、なんで死神代行なんてやってんだ?」

 見上げた先にあった視線に息を詰める。形だけは怒りに固めた縋るような眼差しと、その奥に明滅する俺ではないものに向けられた憎しみの色。それでも目は逸らさず、真っ直ぐに見つめる。

「大方家族を助けるためとかお前らしい理由だろうけどな、虚と戦うのもその結果死ぬのも死神の責任だろ。お前が責任なんざ感じる必要ねえ。今すぐ辞めると言え。じゃねえと俺はまた、お前を殺すことになる」

 視線を遮るように、十字架の先端が向けられる。握りしめられた手は小さく震えていた。目的のためなら俺を利用するのが一番なのに、こうして止めに来るなんてな。あの日々が、俺の全てを奪って振り返らなかったお前の憎しみに、僅かでも爪を立てられたなら嬉しく思う。

「……ありがとな銀城、でも、俺はこの力を手放すわけにはいかない。これから護りてえ奴が沢山いるんだ。お前こそ気にすることなんかねえんだぜ、あの時、お前が俺を止めてくれたから、俺の気持ちは変わらず此処にあるんだ」

 白く冷えた拳に触れる。添えるように力を加えれば呆気なく逸れた。嗚呼、お前のそんな表情は初めて見たな。

「まだ名乗ってなかったな、俺の名前は黒崎一護だ」

 お前の中の俺はアイツの頼りねえ兄貴のままなんだろう。だけど、お前が俺を覚えていてくれたから、こうして話ができる。剣戟を交わす中で心を読み取る必要もない。なあ銀城、俺はお前と向き合う時間が欲しいんだ。記憶を挟まれたお前ではなく、死神への復讐心を抱えたお前と。お前の言葉を聞いても、俺の守りたいものは揺らがない自信がある。それでも、これは決して無駄なことじゃないはずだ。

「聞かせてくれよ、お前に何があったのか」
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