【閲覧注意】アレクセイ・コノエ×TSアーサー・トライン


(コノアサ♀小咄。ロマンティクス後トークにつきいつも以上に閲覧注意です。恋人から婚約者になる瞬間も最高!という気持ちを込めたつもりですが別な意味で艦長が重くなってナンデ?になってます。幻覚捏造その他諸々まぜこぜご注意ください)


 ぼんやりとしたオレンジ色の光源がベッドと……その上で休んでいる二人を照らしている。
 気を失うように眠ってしまった恋人の緑青色の髪を宝物を触るように梳く男の横顔は満ち足りたように薄く笑みを佩いていた。
 ふと、規則正しい呼吸が乱れる。間を開けずにふるり、と長い睫毛が揺れ、ゆっくりと持ち上げられた。まだ眠いのかつぶらな瞳は半分程瞼に隠されている。

「すまない、起こしたね」
「んん……大丈夫です……、……今、何時くらい、ですか?」
「2時を回ったくらいだ。まだ寝てて構わないよ」
「んー……でも、アレクセイさんと話ししたいなぁ……」
「フ……そうか。では少しだけな。次に障る」
「はぁい」

 可愛い我儘に笑みが深くなる。だが交代時間になればここを出ていくのはアーサーの方だ。それもあって『控えめ』にしたつもりだった。睡眠時間を確保してもらわなければ我慢をした意味がなくなってしまう。
 頬に軽くキスをしてから掬うように頭を引き寄せる。すっかり熱の引いた柔肌はしかし、未だしっとりとした名残りがあった。

「ん……、…ふ……」
「……、ん……すっかり慣れたなぁ」
「なにも知らないままの僕の方が良かったですか?」
「いいや? こうやって慣れの変遷を見ていると……それだけ僕が君に触れたと分かって気分がいい」
「そうですかぁ……? でも、アレクセイさんがうれしいなら、僕もうれしいです」

 へにゃ、とあどけなく笑いながらすり寄る姿は甘えたな猫を連想させた。だが、今の自分達は生まれた姿のままだ。ただでさえ情事の余韻が残っている。
 着痩せするタイプらしく、初めて目の当たりにした時に無言で魅入ってしまったところが遠慮なしにコノエに押し当てられ、つい目を細めてしまう。その形は獣のようになっているだろうというのが自分でも分かった。

「こら。こちらは君が足りないんだ」
「んん……。でも、触れていたいです……」
「……先にシャワーを浴びるか。その時に『触って』あげるから今は我慢してくれ」
「えぇー。その『お触り』は眠くなくなっちゃいますよぉ」

 そう言う割に表情は楽しそうに彩られている。
 いつの間にか隣にいた筈のアーサーがコノエの上に乗っかり、両腕を首に回してキスをせがんできた。
 特に断る理由もない。先程と違い深く口づけるとあっという間に瞳が蕩けていく。こういうところも慣れを実感しては感慨深い。

「……、ふぁ、……んん、ぁ、んっ……」
「……、ふ、……、……なぁ、今度揃って、休みを取らない、か?」
「んっ…、? ……、んー……いい、ぁ、ですよ……っ? どこか、……行きたいところがあるんですか?」
「指輪を買いに行きたくてね」
「……え?」
「君の右手の薬指に指輪を贈りたい。……駄目だろうか?」

 ずっと考えていたことだった。
 コンパスで初めて出逢い、直ぐに同じ意志を持つ者同士と知った。業務から離れた世間話から始まり、プライベートのテリトリーを少しずつ侵食し合って……真っ白のキャンバスだったアーサーを自分の色に塗り潰していったのだ。同時にコノエも彼女の色に上書きされていった。
 まるで月の引力に囚われたようだった。きっと互いに。そうでなくては真に心を通わせたとは言えないだろう。

「僕なら君が恐れる悲劇を繰り返さない。君と自分を含め一人でも多く生き残らせられる」
「……アレクセイさん」
「だがそうだな……。……万が一があればウィリアム君には悪いが、君を僕の最期に連れて行こう。君の両方の薬指には一度しか指輪をつけさせたくないのでね」
「……今までの恋人さん達に重いって言われたことはありませんでした?」

 呆れた、と言わんばかりの表情を敢えて見逃し、左手を手に取り指輪の定位置に唇を押し当てる。
 白魚のような手ではない。銃で相手を射殺できることを、機器の操作一つで戦艦を墜とせることを知っている軍人の手だ。
 自分達が決して清らかではないことを互いに理解し合っている。その上でもう誰も死んでほしくない、1秒でも早く穏やかな平穏が訪れますようにと願っているのだ。
 だからこそアーサーには伴侶になってほしい。例え理想とは程遠くとも、皆の努力で築き上げた平穏の地に降り立った時に隣にいてほしいから。

「残念ながら一度も無いな。むしろ自分はこんなに重い男だったのかと驚いているよ」
「本当ですかぁ……? 恋愛経験が無い僕でも重たいなぁって思いましたよ」
「重い僕は嫌か?」
「…………嫌だったらさっきの時点で平手打ちして部屋から出ていってますよ」

 ちゃんと着替えてからですけどね、と笑う姿は佐官らしく凛々しい。

「万が一なんて起こりませんし、起こしませんよ。プラントとオーブ、それにあの大西洋連邦が重い腰を上げたんです。それにミレニアムはハインライン大尉や設計局を中心とした技術の結晶でしょう? 希望の艦がそう簡単に墜ちてたまるもんですか」
「そうだな。僕も僕のジンクスを頼って志願『するよう』請われた以上、仕事はきっちりこなすさ」
「あ、やっぱりお願いされたんですね?」
「内緒にしてくれよ? コンパスの話が浮上した時は正直なところ懐疑的だったんだ。『そう簡単に上手くいくとは思えない』とね」
「まぁ、普通はそう思うでしょうね。積み上げられた現実は嘘をつきませんから」

 橙色の瞳が玲瓏に光る。こういう時、彼女は確かに黒服を纏う人物であると実感する。いざとなればコノエの代理として艦の指揮を執る責任の色。
 事実、経験不足がネックとはいえミネルバの副長に抜擢されたのだし、かの艦が沈むか否かの瀬戸際の際も安全に放棄できるよう優先して動いていたという。クルー達が生きて故郷の地を踏めるように。
 だからこそミレニアムにはアーサーが行くのなら、とミネルバのクルー達が多く来てくれた。彼女の指揮のお陰で若くて優秀な者達が故郷と未来を守ろうと、それぞれの経験と技術を手に支えてくれているのだ。
 暫し何かを考えていたが、やがて崩れてコノエが初めて心から愛していると思った唯一の女性へと変わっていく。

「駄目じゃない、いいに決まってます。でも、その代わり僕も婚約指輪を贈りますから!」
「それはそれは。嬉しい限りだな」
「あっそうだ。一番似合うデザインにはしないでくださいね?」
「……………こら」
「うふふ」

 負けた。目元を隠して左手で降参のポーズを取る。
 いつもはあらゆる可能性を考慮してしまうが故に選択肢を手にするまでが長いのだが、一度腹を括ると途端に豪胆になるところは本当に頼もしい。
 ……頼もしいのだが、こう先んじて言われてしまうと立つ瀬が無くなるので少しは加減してくれると有難い。特にこういう場面では。

「さぁシャワーを浴びましょう? 『触って』くれるんでしょう?」
「あぁ……」
「もー拗ねないでくださいよぉ」
「拗ねてはいないよ。情けないと思ってるだけだ……」
「えへ、こういうのは言ったもん勝ちです」
「……正式なものは僕から言うからな?」
「はい。……待ってます」

 先にベッドから降り、コノエの手を軽く引っ張って明るく『誘惑』するアーサーへ渋々といった体で起き上がる。
 せめてもの反撃として抱き寄せて肩甲骨より下くらいまで伸びた緑青色をかき揚げて項を啄むと、擽ったいとばかりに身を捩った。最近ではシニヨンという髪型をよく好んでいる。ショートボブも可愛かったが、こちらも大変可愛らしい。
 そうして二人はシャワー室へと消えていった。
お知らせ
実務でも趣味でも役に立つ多機能Webツールサイト【無限ツールズ】で、日常をちょっと便利にしちゃいましょう!
無限ツールズ

 
writening