繰り返す葬送


 大丈夫だから、と言って笑ってパートナーの後ろ姿を見送った。親友を好きだとはっきり言った声が頭の中で再現された気がした。親友を見るまなざしが温みをはらんでいるところを見て、『それ』は含みのある微笑をした気がして。
 雪に体を覆われてその冷たさに凍りつくような心持ち。こういう世界なのだ――

 彼はやにわに起き上った。まだ部屋の中は暗く、朝を迎えてはいないことを確認し、どんな夢を見ていたのか思い出そうとするも、額から汗が垂れていることに気づきそれを拭った。
 鼓動が激しい。夢ははっきりと思い出せず、見ていたのかすら怪しかった。ただ気持ちがおかしい。様々なパートナーの場面が幕無しに湧きあがって仕方がなかった。
 どうしようもない感情の行方。親友にかけるときかける声の微妙な違い、見る目の相違点。気持ちの向く先、綺麗な花のようで踏みつけられた雑草のような感情。癒すように突き刺す刃。そんな感情はすぐに溜息とともに吐き出された。もう慣れた。そう言って寝ようと目をつむる。
 
翌朝、彼は起きると夜に夢を見た気がした。なにが夢なのか、彼には分らなかった。
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