運命に出会えた日 sideユメ


「ふえ〜〜ん」
梔子ユメこと私は困り果てていた。アビドス校再建の為の借金を返済しようと頑張っているが利子を返すだけでも精一杯だ。そして、その為の仕事先も先程クビになったのだ
(せっかくホシノちゃんがいるのに…と、とにかく新しい仕事を見つけないと!)
そうして歩き出そうとして、足が止まった。街中を黒いスーツを着た人が歩いている。ユメはその人物を見続けて
「———。ハッ!いけない!早く仕事を探さなきゃ!」
我に返り動き出し、足が自然と早くなる。きっとバイトについて不安なのだろう。動悸がする


「うう…、全滅だなんてどうしよう……あれ?あの人財布落としてる!?あっ、待ってくださーい!」
財布を落とした男は気づいていないのかそのまま走っていく。私は声をかけるも気付いてもらえないので懸命に男を追いかけた。そして人通りのない裏路地に入ったところでようやく男が止まったのだ
「ハア…ハア…すみません。財布落としましたよね?」
「おお!わざわざありがとうございます!」
「いえいえ、それじゃ…わっ、なんだろうこのバイト?凄く高いや…」
「おや?我々のバイトに興味おありですか?」
「えっ?あなたの会社のなんですか?!ええと…はい…」
「そうですか。いやあ、貴女みたいな可愛らしい方に受けてもらえたら助かるね」
「か…可愛いらしいなんて…うへへ」
私は気づいていなかった。男が全身を舐めるように見ている事を。実は生徒を狙った違法な会社である事を。ここ最近ターゲットとして狙われていた事を
「ではこちらに来ていただいて契約書を書いてください」
「痛っ!あの、ちょっと…」
男が手首を強く握って引っ張るので流石に何かおかしいと思い始める
「少々失礼」
男が私を連れて行こうとした時に別の人物から声がかかる
(えっ?あの人って——)
声をかけてきたその人はユメが街中で見かけた黒スーツの人物だった
「感心しませんね。優しさに漬け込んでそのような乱暴を行うのは」
「は?なんだアンタは?関係ないならスッこんでろよ」
先程までと打って変わった男の様子に私はオロオロする
「彼女とは関係はありません。しかし、あなたとは関係ありましてね。あなたみたいなやり方をされると我々も困るのですよ」
そう言って黒スーツの人が男に近づき、何か紙を見せる。すると男は顔を青ざめて逃げるように去っていった
「……さて、ここは少々危ないですからね。人のいる場所に出ましょうか」
「——はい」

それが黒服さんと私の初めての出会い
それは私にとっての——
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