2017年入学式(カヤ視点)


四月。雪溶けが進み、春の陽気が訪れる頃。古びてはいるものの、木の温もりを感じる校舎。ポカポカした陽射しが照らす、三つ並んだ机。…の、真ん中に明らかな異物があった。春の光を反射して輝く銀紙。正確には、アルミホイルと針金に包まれた頭。これから5年間共に過ごす友の顔には到底見えない物体だった。

呪術師がどれだけ危険かはよくわかっている。いつ死んでしまうか分からないこの仕事では、友人を作るのも難しいのかもしれない。
でも、だからこそ、たとえクラスメイトが男性でも、良い人じゃなくても、勇気を出して友達になろうと覚悟して今日を迎えた。

だがここまでとは想定外だった。出来ることならアルミホイルの彼(彼女?)はスルーして、まともそうな赤髪の子に話しかけたかった。しかし、この席と赤髪ちゃんの間にはアルミの人の席がある。一番近いアルミの人を無視して赤髪ちゃんに話しかけるのは、少し感じが悪い。
出来る事なら赤髪ちゃんからこちらに話し掛けてほしいところだが、赤髪ちゃんは心此処にあらずといった感じに呆けていた。彼女もアルミの人を見て驚愕しているのだろうか。ともかくとして、赤髪ちゃんが声を発する様子がない以上、わっちが声を掛けるべきだろう。流石に真ん中にいるアルミの人を無視して端にいる赤髪ちゃんに声を掛ける勇気はないので、アルミの人を含めた二人に話し掛ける事にする。
…手脚が震える。大丈夫だ。きっと快く反応してくれる。アルミの人だって良い人かもしれないじゃないか。そう、心で念じる。怖気ついてしまわないうちにわっちは声を発した。

「ね、ねぇ。」
「あ゙?」
その瞬間、アルミホイルに包まれた口であろう部分が動き明らかに不機嫌な声がする
や、やっぱり怖い人だったよ〜
しかしもう声をかけてしまった。後には引けない。
「わっち、孕橋カヤ。皆もじ、自己紹介しない?」
まくし立てて息をつく。しかし、アルミの人はだるそうな声を上げた。
「あ〜。まぁそうなるか…取り敢えずオレはパスで。赤髪のお前。名前は?」
話を振られた赤髪の子が、雰囲気通りの小さい声で呟く
「私はロマ。」
それだけ言うとロマはすぐにそっぽを向いてしまった。人見知りなのだろうか。既にこちらを向いてはいなかったが一応声を掛ける。
「ロマっていうんだ。よろしくね。
…で、あなたのお名前は?」
アルミの人に再度尋ねると流石に観念したのか応じてくれた。
「チッ。じゃあ、オレの名前は…血洗島デッドロックで。」
明らかに今考えた名前。流石にツッコんでしまう。
「いや、絶対偽名でしょ!」
「うわ〜人の名前にケチ付けるとか良くないわ~」
え?本名?いや流石に嘘か。
どうしても本名は聞かれたく無いらしい。
…まぁ無理に名前を知る必要も無いか

それはともかくとして、絶対に聞きたいことがある。
「…で、その〜アルミホイルは?」
「ああコレ?思考盗聴対策」
「「え?」」
ロマと声が重なる。
当然だ。同級生が陰謀論にハマってるとか最悪だ。が、さらに驚いたのはここからだった。
「で、デッドロック、、それって本当?」
「「え?」」
今度はデッドロックと声が重なった。
ロマが信じてしまったのだ。怯えてる様子からして、茶化してるとかではなく本当だ。
「安心してロマ。思考盗聴とか無いから。」
「え?そうなの?」
混乱してるロマを横目にデッドロックはアルミホイルをベラベラ音を立てながら笑ってた
…あれ?なんで陰謀論信じてる張本人が笑ってるの?なんかもう良くわかんなくなってきた。
こんなんで立派な術師になれるのだろうか…
そんな心配を他所にデッドロックは笑っていた。
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