「嘘つき勇者と恋する魔王様」


題名:嘘つき勇者と恋する魔王様  作者:草壁ツノ

<登場人物>
勇者:男性 勇者のフリをしている酒クズ。嘘をついている時の好青年と、ゲスな内面の二面性
魔王:女性 魔族の王様。2000年以上生きている。見た目は若いがもう結婚適齢期。

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<役表>
勇者:男性
魔王:女性
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■注意点
・勇者、魔王共に一部叫ぶようなシーンがあります
・一部のセリフに顔文字が演出として使われています
・シーン名が記載されていますが、そちらは読む必要はありません
・勇者側でハンバーグ師匠の台詞がありますが、忠実に読むかアレンジされるかはご自由にどうぞ。
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■利用規約
・過度なアドリブはご遠慮下さい。
・作中のキャラクターの性別変更はご遠慮下さい。
・設定した人数以下、人数以上で使用はご遠慮下さい。(5人用台本を1人で行うなど)
・不問役は演者の性別を問わず使っていただけます。
・両声の方で、「男性が女性役」「女性が男性役」を演じても構いません。
 その際は他の参加者の方に許可を取った上でお願いします。
・営利目的での無許可での利用は禁止しております。希望される場合は事前にご連絡下さい。
・台本の感想、ご意見は Twitter:https://twitter.com/1119ds 草壁ツノまで
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*魔王の玉座

魔王:「よくぞここまで来た、勇者よ」
魔王:「褒美に世界の半分をお前にやろう。どうだ?」
勇者:「いえ、他に欲しいものがあります」
魔王:「おおそうか。なんだ?なんでも言ってみろ」
勇者:「あなたの人生の半分をください」
魔王:「……( ^ω^ )?」
魔王:「もう一度言ってみろ」
勇者:「はい、あなたが好きなので、あなたを妻にしたい」
魔王:「ふええっ!?」
勇者:「私と、結婚を前提にお付き合い願いたい」
魔王:「はっ、はわわわわ!そんな、ダメだよお~~~><」
勇者:「わたしは料理も出来るし、家事も得意です」
魔王:「ふええ、万能だよお」
勇者:「好きな人とは生涯共にしたいし、あなた一筋です」
魔王:「ロマンチストだよお」
勇者:「そして子供が出来た暁には、子供に恥じない勇者となってみせます!」
魔王:「父親の鏡だよお~~~~~!!!!」
魔王:「そ、それに、私はもう2000年は生きているお婆ちゃんなんだよぉ!ダメだよぉ!」
勇者:「年齢など些細な問題です」
魔王:「そ、それに人間と魔族がけ、けっけっ、結婚だなんて……大問題になるよぉ!?」
勇者:「二人の愛の前では種族の壁など、些細な問題です!!」
魔王:「人格者だよぉぉぉ!!!」

勇者:……うまく言った。
   昔から俺のこの甘いマスクと相手を信用させる巧みな嘘で、俺は今まで数多くの女を手玉に取ってきた。
   なりふり構っちゃいられない。俺は今絶賛国から追われている身であり、何よりも借金で首が回っていない状況だ。
   モチのロン、勇者なんてのも口から出まかせ、真っ赤な嘘っぱちだ。

魔王:ど、どっどっど、どどどどうするの私~~!? た、確かに最近は深刻な魔王後継者不足ではあるし、
   そ、それに私も……今まで戦いしかしてこなかったから、ある意味これは、千載一遇のチャンス……?って、
   な、何考えてるの私のバカっ!そ、そりゃあ?た、確かに?確かに??目の前の、勇者君は今まで見た中でも、
   ダントツで好みのタイプの顔だけど……

勇者:それにしても偶然転がり込んだのがまさか魔王城とは......魔王城って、こんなに寂れた城なのか?まぁそれはいいとして、
   目の前の魔王、と名乗ったこの女。本当に魔王かどうかは怪しいところだが、どうやらこの手のやり取りには免疫がないと見える。
   ふっふっふ......それなら俺がやる事はいつもと同じだ。
   相手に甘い言葉を囁きその気にさせ、最後は自分が欲しいものを貰ったらはい、さよなら。
   それに考えようによってはラッキーかもしれない。見てくれは悪いが曲りなりにも魔王の城だ。
   値打ちが物があちこち転がっているかもしれない。そうと決まれば、うまい事言って金目のものだけ盗んでとんずらしよう。
   もしかしたら、国に献上できるような上物があるかもしれないしな。

魔王:れ、冷静に見極めるのよ!私!本当に、目の前の勇者君が私のことを、真剣に、考えて、くれて……いるのか……(キュン)
   んんん、いけない。いけないわ。れ、冷静に。冷静になるのよ......。彼の真意を確かめるの!それからでも遅くないはずよ…!
   彼が奥さんを大事にする人か、ちゃんと奥さんのために働く人か、嘘をつかない人かどうか、この目でしっかり見極めるのよ……!

勇者:「ふふ…」
魔王:「ふふ…」



勇者:「おお、これは」(魔王の背後にあるを見つける)
魔王:「? どうしました?」
勇者:「いや……すいません。思わず見惚れていました。これほどまでに美しいものがこの世にあるなんて」
魔王:「ええっ!?な、なにを言ってるんですか?!いきなり!」
勇者:「これ程までの芸術品はこの世で滅多にお目にかかれない......」
魔王:「ちょっ、ほ、褒めすぎですっ、駄目ですう!私なんて子供の落書きですっ」
勇者:「…? 何を言ってるんです?」
魔王:「ほ、ほら!次行きましょう!ね、ねっ」
魔王: 勇者君は人を褒めるのが上手なのね…油断ならないわ……



魔王:「……ところで、勇者君、好き嫌いはあるの?」
勇者:「好き嫌いですか?いや特には…腹さえ膨れれば最悪草でも......はっ」
魔王:「くさ……?」
勇者:「あ、あぁーいや! えー、くさ...草の上で寝転がって食べるサンドイッチが大好きなんですハハハ」
魔王:「そうなのね……あっそうだ!えっと……あのね、もし良ければ、なんだけど、私の手料理を食べていかない?」
勇者:「手料理ですか?いやそれは嬉しいな。生憎、ここ何日かは、まともな食事を取れていなくて」
魔王:「そう!それは嬉しいわっ、腕によりをかけて作っちゃうから!ちょっと待ってて!」



勇者:数分後、出てきた目の前の紫の塊はブシュブシュと煙を上げている。
勇者:「あの…これは?」
魔王:「ふふ♡人間の世界の料理で”ハンバーグ“って言うのよ」
勇者:「ハンバーーーーーーグ!!」
魔王:「えっ!?び、びっくりした……そ、そんなに嬉しかった?」
勇者:いや嬉しいなんて感情じゃない!こ、こんなもん、口の中に入れた日には間違いなく体に異変が起こる!
   俺の身体中の細胞が「ソレハヤメテオケー」と叫んでいる!し、しかし…!
勇者:「い、いいい、いただいても?」
魔王:「ええ、勿論♡」
勇者:「……南無三っ」

勇者:口にした瞬間走馬灯が駆け抜ける。
   酒代をツケ続け、最後には出禁にされた酒場の女マスター、メアリー。
   親が8人亡くなったと嘯(うそぶ)いて金を用意させた、ジェシー。
   ホイミだけ使わせ続け、MPが切れたら砂漠に捨てた、僧侶のナンシー。
   みんなに。みんなに今は......謝りたい……そんな気持ちが脳裏を駆け巡った。

勇者:「ゲボアァッ!」
魔王:「あぁっ!勇者君!死んでしまうとは情けない!」
勇者:魔王の魔法でなんとか一命を取り留めた。
勇者:「あ、ああ……ああ……危うく、本当に死んでしまうところだった......」
魔王:「ごめんなさいごめんなさい…知らなかったの......まさか人間には毒だったなんて……!」
勇者:「いやもう全ての生物に毒だと思うが……」
魔王:「うう、折角美味しい手料理を食べて貰えると思ったのに。駄目ね、わたし……シュン」
勇者:「は、はは……な、なーに!料理は時間をかければ腕前は自然と上がりますよ!これから練習していけばいいじゃないですか。
    そうすれば、何とでもなりますよ」
魔王:「え……?ゆ、勇者君......また、私の手料理……食べてくれるの……?」
勇者:断言しよう、嫌であると!!
勇者:「も、勿論です!!」
魔王:「う、うええ……優し"い"……私、もっと精進しゅる……」
魔王:勇者君、優しい…!奥さんのこと大事にしてくれそう…!



*軽い雑談

魔王:「ねえ勇者君。勇者になる前は、国でどんな仕事をしていたの?」
勇者:「ギクっ」
魔王:「ぎく?」
勇者:「えっ、あ、いや~~~ハッハッハ。そうですね、国では――あ、王宮に仕えていて、主に王の周辺の警護に従事しておりました」
魔王:「まあ、王様の……立派なお仕事をされていたのね......すごいわ」
勇者:本当は無職でタダ酒飲み、女遊びが大好きなクズ、という事実はなんとしても隠し通さなければならない。
勇者:「そうですね。城下町でトラブルがあった時にはすぐさま駆けつけて、暴れている不埒ものを取り押さえるなんて事も……日常茶飯事です」
魔王:「まぁ、それは大変ね」
勇者:「ええ。中には昼間から酒場を飲み歩いて、周辺住民とトラブルを起こす厄介なやつも居て…」
    何を隠そうこのオレである。
魔王:「まあ、そうなのね……」
勇者:「とは言っても今は勇者として、各地の魔物を沈める旅に出ているわけですが」
魔王:「なるほど……でも、勇者君、大丈夫なの?さっきも聞いたけど、人にとって希望であるあなたが、魔族の王であるわたしと、
    けっ……スーーー、よろしくするなんて、もう元の生活には戻れなくなるわよ?」
勇者:「そうですね、確かに、ここに来るまでは、勇者として魔王を倒し、世界に平和を取り戻す勤めを果たすつもりでした。でも、今は」
魔王:「……でも、今は?」
勇者:「出逢ってしまったのです。私にとって、人生で、命の次に大切なあなたという存在に。
    あなたの姿を一目見た瞬間から、私の勇者の使命はもう過去のものとなってしまいました。
    今の私の願いはただひとつ。魔王様。あなたを私の物にしたい。
    あなたと共に残りの生涯を歩んでいきたい。人間の世界と魔族の世界。
    その果てにある幸せな未来を、あなたと共に築いて行きたいのです」
魔王:「……」
勇者:「……ま、魔王様??」
魔王:「もう駄目」バタッ
勇者:「ま、魔王様!?」
魔王: ......もう駄目じゃあ、無理じゃあ!勇者君尊いんじゃあ......!!好きじゃあ......!
魔王:「ご、ごめんなさい。ちょっと…持病の立ちくらみが……」
勇者:「大丈夫ですか、少し休まれた方が…」
魔王:「え、ええ……大丈夫よ」
魔王: ふふ……勇者君、働き者である上に志が立派だわ…非の打ちどころが無い…



*衣装部屋のような場所、様々な装飾品が置かれている

勇者:「おお、これは見るからに高く売れそうだな……」
勇者:大きな宝石があしらわれたネックレスを見つけた。これは幸先がいいぞ。期待が持てそうだ。
魔王:「え?勇者君、それって…」
勇者:「!! あ、いやこれは!」
魔王:「そんな所にあったのね! 私のネックレス」
勇者:「……え?あ、はい。ハハ…その辺に落ちているのをたまたま見つけて」
魔王:「わあ、ありがとう……失くしたと思っていて……それ、すごく大事な物なの」
勇者:「大事な……」
魔王:「ええ。……今はもう亡くなってしまった、母がくれたネックレスよ」
勇者:「そうなんですね……」
魔王:「……もし良ければ、だけど。そのネックレス、勇者君、貰ってくれない?」
勇者:「え?でも、大事なものって」
魔王:「……そうね。それは守りのまじないが込められた特別なネックレスなの。私が初めて魔王になった時、
    心配したお母さんが私にくれたもので、何度も私が危ないところを守ってくれた……でも、今はもう、
    人間一人の身を守る程度にしか力が残っていないの。だから、私が持つより、あなたがが持ってくれていた方が、
    きっと役に立つと思う。そ、それに…」
勇者:「それに?」
魔王:「あ、あなたはその……わたしの……大切な……人だから……」
勇者:「……キュン ぐうっ!?」
勇者:な、なんだこの胸の痛みは!? まさか、さっきの毒バーグがまだ効いているのか?
魔王:「? どうかしたの?勇者君、突然胸を押さえて......」
勇者:「あ、あぁいえ。何でもありません……」
魔王:「そんな事言ったって、顔が赤いわ、熱があるんじゃないの?」
勇者:「だ、大丈夫です!大丈夫ですから!」

勇者:…? 魔王の言葉は人の精神を操ると聞いた事がある。それでか......?そう考えると、魔王と会話をするのは
   得策ではないのかもしれない......

勇者:「……」
魔王:「あの、勇者君。どうしたの?急に無言になって...」
勇者:「……」
魔王:「そんなに眉間に皺を寄せて...」
勇者:「……」
魔王:「でもそんな顔もかっこいいですよ」
勇者:「ゴッホ!ゲッホ!」
魔王:「ゆ、勇者君!? だ、大丈夫?」
勇者:「あ、あぁ、大丈、夫......っと(会話をしてはいけない......)」
魔王:「あ、また黙っちゃった......」



魔王:「あの、勇者くーん?」
勇者:「……」
魔王:「......あ、そうだ。勇者君。このお城、3階にバルコニーがあるの。今から行かない?」
勇者:俺は声に出さずに頷いて、魔王に着いていく。



*3Fのバルコニーから外に出て景色を見ている

魔王:「見て! すごく綺麗でしょ!」
勇者:「……」
魔王:「どう?...... ふふ、このお城、外観はちょっと、前魔王だったお父様の趣味でおどろおどろしいけど、
    ここから見える景色は私とっても好きなの。ほら、遠い地平線と、空が溶け合って......」
勇者:確かに、綺麗だな、と言葉には出さずに思う。
魔王:「......勇者君は、今喋れないのよね? 理由は分からないけど......」
魔王:「......そっか。じゃあ、好きに喋っちゃうね。ふふ、ほんとはね。私、人間が怖かったんだ」
魔王:「私、そもそもそんなに強い魔王では無いの。前魔王のお父様は強い人だったけど......
    私の代では全然ダメ。そりゃあ勿論、魔族の中では強い方。でも、ここに来る勇者っていうのは
    私がやっとの思いで追い返せるぐらい強い人ばかり。城の住人達もそんな私に愛想つかして、出ていっちゃった」
魔王:「そんな時にね、勇者君が来たんだ。ふふ、初めはびっくりしちゃった。だって本当に勇者が来たと思ったもの」
魔王:「でもね......うん、これはごめん。本当はね、私、こう見えても魔王だから。なんとなく、その人がどれほど
    強い力を持っているとか、分かっちゃうんだ。だから...... 君が勇者じゃない事も最初から分かってた」
勇者:「え"っ」
魔王:「あ。喋っちゃった。ふふ、もうお終い?」
勇者:「......勇者じゃないって、分かってたなら何で?」
魔王:「なんでだろ。うーん...... ちょっとした、興味?かな。私にとって、人間って、私の命を奪いに来る...
    まぁ、宿命の相手というかそんな感じだったから。あなたみたいな人間って初めてで」
魔王:「騙しちゃってごめんね。でも、何だろう。勇者君に興味があったのはホントだよ。
    悪い人じゃないなっていうのも、何となく感じたし」
勇者:「……なァんだ、最初っから全部バレてたってわけか」

勇者、腰に下げた小瓶をぐっ、と飲み干す。口から僅かにアルコールの香りがする。

魔王:「勇者君?」
勇者:「ぷはっ。ははは、ははははっ! それじゃあ、もうこんなクサい芝居する理由は無くなったって事だな。はぁ、肩凝った」
魔王:「勇者君......」
勇者:「それ! あー、その呼び方辞めてくんねーかな。オレがそんな大層なタマじゃないってのは、もう分かっただろ?」
魔王:「私にとっては、初めて会った時から勇者君は勇者君だし、君が悪い人じゃないのは知ってるよ」
勇者:「あぁ、もう。イライラすんなぁ......!」

*勇者が魔王を壁際に追い込む。

勇者:「お前が......俺の何を知ってるって言うんだ? なぁオイ、男のガワだけしか見てない魔王サマ!
    生憎と俺はなぁ......女なんてモノとしか見ちゃいないんだよ。 自分以外の誰かのため? はは、嘘くせえ。
    そういう偽善者みたいな台詞を吐くやつが俺は反吐が出る程嫌いなんだよ!」
魔王:「勇者君……」
勇者:「それにしても......ははっ。あんた、よくそんなんでこれまで魔王やってこれたな、お人好しにも程があるんじゃないか?」
魔王:「……」
勇者:「……どうだ、見損なったか? あんたが惚れた男が、こんなどうしようもないクズでさ」
魔王:「......ふふ」

*魔王が少し力を加えると、男はバルコニーの床に倒れ、その上に魔王が覆いかぶさる。

勇者:「ぐっ!」
魔王:「勇者君。あなたこそ何か勘違いしてるみたいだから、教えてあげるね。
    あなた、自分が思ってる程ぜんぜん、クズじゃないよ。私からすれば、子供の悪戯みたいなもの。
    私が伊達に何年、何十年、何百年魔王やってると思ってるの?」
勇者:「あぁ?」
魔王:「それこそ、口には言えない程、酷い勇者は過去沢山見てきたわ。貴方たちの国で、彼らがどう語られているかは
    知らないけど......けど、そんな私から言わせれば、あなたは善人すぎるほどよ」
勇者:「ま、魔王の定義で良いとか悪いとか、言ってんじゃねぇよ!」
魔王:「あら、だって私は魔王だもの。私の物差しでしか測れないわ。それに......、私があなたに送ったネックレス、
    あれ、本当はなんだか知ってる?」
勇者:「ね、ネックレスがどうしたんだよ」
魔王:「そのネックレスに守りの力があるのは本当。でもね、本当は別の側面もあるの。それは私に敵意を持っている、
    危害を加えようとしている者から私を守る力なの。つまり......
    あなたが私に少しでも悪意を持っていれば、そのネックレスは反応して、貴方を攻撃していた」
勇者:「......俺が悪人なのはもう知っているだろ?」
魔王:「表面的にはね。でも根っこの所で貴方はきっと善人なのよ。
    私の作った料理を無理して食べたり、大切といったネックレスを、はじめ受け取る事を拒んだ。
    それは私に対して引け目を感じていたからでしょう? 悪人が、そんな事にいちいち悩んだりしないわ」
勇者:「......お前も、大概嘘つきだったってことか」
魔王:「ふふ、じゃないとこんな魔王なんて、荷が重い責務やってられないもの」
勇者:「......違いない」
魔王:「でね。これは別の話になるんだけど」
勇者:「なんだよ」
魔王:「私、そろそろ結婚適齢期なのよね......で、あなたも勇者じゃないし、そろっと心の中読んだんだけど」
勇者:「おいしれっと読むなよ!」
魔王:「ふふふ。あなた、お金に困ってるそうじゃない? 私と一緒になれば、もうお金の心配はしなくてもいいよ♡」
勇者:「ヒモを作る天才みたいな女だな......」
魔王:「もちろん。私と一緒になったら、魔王の務めは色々手伝ってもらうけどね」
勇者:「あぁ―――どうしようかな......」
魔王:「ふふ、あなたは断れないわ」
勇者:「……なんでだよ」
魔王:「だって、あなたの脈拍、体温、顔の紅潮......見ればわかるもの。あなた、私に恋してるでしょ?」



勇者:「なあ......本当にやるのか?」
魔王:「もちろん。こういうのは有耶無耶にしたらダメなのよ?」



魔王:「よくぞここまで来た、勇者よ」
魔王:「褒美に世界の半分をお前にやろう。どうだ?」
勇者:「いえ、他に欲しいものがあります」
魔王:「おおそうか。なんだ?なんでも言ってみろ」
勇者:「......あなたの人生の、半分をください」
魔王:「ええ~、どうしよっかな♡」
勇者:「......わたしと、結婚を前提にお付き合い願いたい」
魔王:「突然そんな事言われても困っちゃうなぁ♡」
勇者:「ぐっ......わたしは料理も出来るし、家事も得意です」
魔王:「ふふ、嘘ばっかり。料理の腕は私とそんなに変わらないし、家事もろくにした事無いクセに」
勇者:「......好きな人とは生涯を共にしたいし、あなた一筋です」
魔王:「......そこだけは信じてあげようかな?」
勇者:「そして子供が出来た暁には、......子供と、お前に恥じない父親になってみせるよ」
魔王:「ふふ。しっかりしてね、私の勇者様」


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