no title


「あのねっ!今朝もだけど!芸能界ではこういうの常識なのかもだけどっ!私は一般人なんでっ!そんなギョーカイ人みたいなノリで接してくるのやめてっ!!」



「は?ギョーカイ人みたいなノリって…こんなこと優里以外にはしないけど」



「そ、そーゆうのもだよっ!そーゆうこと言ってからかうのやめてよ、もう!!」




綺麗な女優さんやモデルさんにモテモテであろう綾人とは違う、私は人生でまだ一回も彼氏いたことないんだから…!刺激が強すぎる!!




ふ、と綾人が余裕そうな笑みを浮かべた。




「もしかして優里、照れてるの?かーわい」


「かかかかかわっ…」




日本全国各地にお住まいのみなさーん!!


私今…今…異性にはじめて“かわいい”と言われました…しかも誰よりもかっこいい人気俳優に!もちろん冗談ってことは百も千も億も承知ですけど…!!




「だからそーゆう冗談はやめてって……、っ!?」



そのときチョロ…と、視界の端に黒く動くものを捉えた。




見ると、黒い蜘蛛がそろそろと部屋を横断していた。しかも割と大きい。





「わっ…蜘蛛!」



「…え?あ、ほんとだ」





采斗は全然驚いた様子もなくそう言うと、ティッシュを取ってさっさと蜘蛛をつまんで、ササッと窓の外に逃がした。



あまりにテキパキとした一連の動作に唖然となる私。




だって、私が知っている綾人は、蜘蛛とか虫全般が死ぬほど苦手な男の子だったのに…







「……がう」



「え?」



「違うっ!こんなの、綾人じゃない…」





チャラくて女の子が喜びそうなことばっかり言って気軽にキスして、料理諸々完璧で、虫も苦手じゃなくて…



「私の知ってる“綾くん”じゃないっ!!」



「ちょっ…優里!?」





自分の部屋に飛びこんで鍵をかけた。





あれは綾人じゃない。


どっかのただのイケメン俳優だ。




私が知ってる綾人は…大好きだった綾くんは




一体どこにいってしまったんだろう。









わたしと、綾人。



ママ同士が高校時代の親友で、家も近所で、偶然、同じ日に生まれた。



必然的に、物心ついたときにはすぐ隣に綾人がいた。




綾人は小さい頃は女の子みたいで、すごく気弱で泣き虫だった。



転んでは大泣きして、虫がすっごく苦手だったから、道を歩く蟻にすら怖がってた。




でも……とても優しい男の子だった。



小2の頃、パパとママから誕生日にもらったおもちゃの指輪をなくした。



どんなに探しても見つからなくて、すごく落ち込んだけど、もうどうせ見つからないって諦めていた。



だけど綾人が、雪の積もった公園の中から探し出してくれた。



雪をかきわけ、真っ赤になった手で指輪を渡してくれた綾人の笑顔を、私はたぶん、一生忘れない。



それから中学生になって急激にかっこよくなった綾人は物凄くモテはじめて、中2で芸能界に入ってからはどんどん遠い人になって…



もう一度、一度でいいから




あの頃の綾くんに会いたい……


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私結構こういうすれ違い(?)系好きなんですよ((誰得

いつも読んでくれてありがとうございます!

読んでくれた方は一言でもコメント入れてくれると嬉しいです…笑←
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