ペットを飼いたい


題名:ペットを飼いたい 作者:草壁ツノ

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<登場人物>
客:ペットショップを訪れた客。厨二病の末期患者。
店員:ペットショップの店員。
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<役表>
客:不問
店員:不問
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■注意点
特に無し
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■台本の規約について
 過度なアドリブ×
 一人称の変更×
 作中のキャラクターの性別変更×
 人数変更×
 不問→演じる方自身の性別を問わない役、という意味
 両声の方→男性が女性役、女性が男性役を演じる〇
 (その際はほかの参加者の方に許可を貰った上でお願いします)
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客:ウィーン(自動ドアが開く音)

店員:いらっしゃいませ。

客:あ、すみません、ちょっと買いたい生き物がいるんですけど。

店員:はいはいはい、どのような生き物を?

客:ちょっと珍しい生き物なんで、もしかしたら置いてないかもしれないんですけど。ちょっと探してみて貰っていいですか?

店員:あー大丈夫ですよ。うちはある程度珍しい生き物も用意してますので。ちょっと探してみますね。

客:ありがとうございます。

店員:ちなみにどのような生き物か伺っても?

客:はい、この、右腕に飼えるぐらいの生き物探してて。

店員:はいはいはい、右腕の......ん?

客:中々見つからないんですよね。

店員:えっと......すみません。右腕......ぐらいの大きさの、生き物?

客:あ、違います違います。この、右腕に飼いたいんですよ。

店員:右腕に。

客:はい。出来たらそうですね、封印されてた系の生き物だと嬉しいんですけど。

店員:封印。

客:そういうのってここ置いてますかね?

店員:はぁ……どうでしょう……ちょっと聞いて見ないと……田淵くーん? ウチって、封印されている系の生き物、置いてたっけ? ......ああ、そうだよね。無いよね、ごめんねー。......ちょっと置いてないみたいですね。

客:そうですか......

店員:ちなみに一応お聞きしますが、それってどんな生き物なんですかね?

客:そうですね。蛇とか竜が多いですかね。

店員:竜は無理かなあ。

客:悪魔とかでも大丈夫なんですけど。

店員:悪魔も無理かなぁ。あ、でもウチ蛇なら置いてますよ。

客:本当ですか?

店員:ええ。

客:それって、腕に飼うこと出来ます?

店員:いやだから腕に飼うってなに?

客:お兄さんもののけ姫とか見たこと無いんですか?

店員:いやまぁ、昔一度ぐらいは。

客:その主人公が呪いを受けてこう、力を発揮する時に、腕の周りからニョロニョロって蛇を出すシーンがあるんですよ!

店員:ああ、あれですか。

客:そうそう、それがやりたいんですよ!

店員:なるほど、ようやく分かりました。

客:いやあ、分かって貰えて良かったです!

店員:でもさ。

客:え?

店員:そのために飼われるペットの気持ち、考えたことあるかな?

客:えっ、急に真面目な話……

店員:こういう店で働いてるとさ。嫌になるよ。

客:なんか語りだした。

店員:高い金出してペット買っていく客。時間が経ったら捨てられるペット。そのためにペット育ててる俺ら。ハッ、一体なんのためにこの仕事やってるんだろうって。時々空しくなりますよ。

客:で、でも、オレ。右腕に封印された生き物飼ったら、絶対大事にしますよ!

店員:本当に?

客:本当ですって!

店員:本当かなぁ?

客:本当ですよ!

店員:餌とかちゃんとあげる?

客:あげますあげます。当たり前じゃないですか。

店員:無理やり封印解いて、生き物に無理させたりとか、しない?

客:しませんよそんなこと!

店員:封印のための包帯とか、毎日取り換える?

客:取り替えますよ!

店員:いきなり「真の力を解き放つ!」とか、しない?

客:(長い沈黙)......多分。

店員:じゃあ駄目ですね。

客:いいじゃないですか! 右腕の封印された力を解き放つのは、男の子のロマンでしょ?

店員:若いなぁ。うーん、分かった! それじゃあ実際に飼う前に、飼った時の予行演習をしましょう!

客:予行演習ですか?

店員:そうです、実際に飼ってみてイメージと違った、っていうのはよくある話なので。

客:あー、それは確かにそうかも。

店員:それじゃあ、実践してみましょうか。はい、これとりあえず。君の右腕と同じぐらいの大きさの蛇。持ってみて。

客:はい。うおー、意外と重い。餌は何食べるんですか?

店員:そうだなぁ、虫とかラットとか。

客:ラット?

店員:餌用の死んだネズミ。こういう瓶に入ってるの、見たこと無い?

客:うわっ、結構見た目キツイですね。

店員:そういう人は結構いるね。けど、蛇をペットに買うならこういうのに慣れないと難しいかも。

客:マジですか......「人間の負の感情」とか食べさせるだけじゃ駄目なんだあ......

店員:駄目だね。君はちょっと一般常識も学ぶべきだね。

客:うーん、なんかもっと餌やり簡単な動物居ないですかね?

店員:それだったらハムスターとかはどうですか?

客:いやいや、右腕の封印解き放って、ハムスターが「チューッ!」って出てくるの格好悪すぎるでしょ。

店員:女性受けは期待出来るかもしれませんよ?

客:女性受け.......(長い沈黙)うーん。

店員:真剣に悩んでる。

客:いやでもやっぱりハムスターはどうかと思うんですよね。

店員:慣れてくると可愛いもんですよ。大人しいし、飼育環境整えるのもそんなにお金かからないですし。

客:うーん、そう言われると......でもなぁ......

店員:でもよく考えてみて下さい。某ポケットの中のモンスターだって、相棒はネズミじゃないですか。

客:はっ。そう言われれば確かに......!

店員:でしょう? つまり、大事なのはそのペットの見た目なんかじゃなくて、あなたがそのペットに、どれだけ愛情を注げるかなんですよ!

客:ああっ......! 確かに、その通りですね。そんな簡単なことさえ気付けないなんて、なんて愚かなんだ自分。

店員:いいんだ。君みたいに若い子は、見た目の良さだけでなんでも決めてしまいがちなんだ。そういうものさ。

客:ありがとうございます。俺、ここに来てなんだか、人生において大事なものを教えてもらった気がします。

店員:フフッ、そう言って貰えて良かったよ。さ、どうする。ハムスターの種類は他にも色々――。

客:プルルルル、あ。すいません、ちょっと電話が......

店員:ああ、どうぞどうぞ。

客:はい。もしもし.......え? 予約待ちだった悪魔が入荷した!? ほんとですか?

店員:うん?

客:はい、はい。えっ、飼います! 是非是非! いやあ嬉しいな。僕ずっと悪魔を飼ってみたかったんですよ。

店員:あの、もしもし?

客:え? 今からですか? 行きます行きます。あの、悪魔の飼育方法なんですけど......え、「人間の負の感情を食べさせる?」やっぱりそうですよね! さすが、よく分かってる! 今からそちらに向かいます!

店員:えっ、ちょっ、ちょっとお客さん? お客さぁーんッ!

<終>
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