ペットを飼いたい
作成日時: 2022-12-18 12:42:25
公開終了: -
題名:ペットを飼いたい 作者:草壁ツノ
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<登場人物>
客:ペットショップを訪れた客。厨二病の末期患者。
店員:ペットショップの店員。
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<役表>
客:不問
店員:不問
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■注意点
特に無し
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■台本の規約について
過度なアドリブ×
一人称の変更×
作中のキャラクターの性別変更×
人数変更×
不問→演じる方自身の性別を問わない役、という意味
両声の方→男性が女性役、女性が男性役を演じる〇
(その際はほかの参加者の方に許可を貰った上でお願いします)
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客:ウィーン(自動ドアが開く音)
店員:いらっしゃいませ。
客:あ、すみません、ちょっと買いたい生き物がいるんですけど。
店員:はいはいはい、どのような生き物を?
客:ちょっと珍しい生き物なんで、もしかしたら置いてないかもしれないんですけど。ちょっと探してみて貰っていいですか?
店員:あー大丈夫ですよ。うちはある程度珍しい生き物も用意してますので。ちょっと探してみますね。
客:ありがとうございます。
店員:ちなみにどのような生き物か伺っても?
客:はい、この、右腕に飼えるぐらいの生き物探してて。
店員:はいはいはい、右腕の......ん?
客:中々見つからないんですよね。
店員:えっと......すみません。右腕......ぐらいの大きさの、生き物?
客:あ、違います違います。この、右腕に飼いたいんですよ。
店員:右腕に。
客:はい。出来たらそうですね、封印されてた系の生き物だと嬉しいんですけど。
店員:封印。
客:そういうのってここ置いてますかね?
店員:はぁ……どうでしょう……ちょっと聞いて見ないと……田淵くーん? ウチって、封印されている系の生き物、置いてたっけ? ......ああ、そうだよね。無いよね、ごめんねー。......ちょっと置いてないみたいですね。
客:そうですか......
店員:ちなみに一応お聞きしますが、それってどんな生き物なんですかね?
客:そうですね。蛇とか竜が多いですかね。
店員:竜は無理かなあ。
客:悪魔とかでも大丈夫なんですけど。
店員:悪魔も無理かなぁ。あ、でもウチ蛇なら置いてますよ。
客:本当ですか?
店員:ええ。
客:それって、腕に飼うこと出来ます?
店員:いやだから腕に飼うってなに?
客:お兄さんもののけ姫とか見たこと無いんですか?
店員:いやまぁ、昔一度ぐらいは。
客:その主人公が呪いを受けてこう、力を発揮する時に、腕の周りからニョロニョロって蛇を出すシーンがあるんですよ!
店員:ああ、あれですか。
客:そうそう、それがやりたいんですよ!
店員:なるほど、ようやく分かりました。
客:いやあ、分かって貰えて良かったです!
店員:でもさ。
客:え?
店員:そのために飼われるペットの気持ち、考えたことあるかな?
客:えっ、急に真面目な話……
店員:こういう店で働いてるとさ。嫌になるよ。
客:なんか語りだした。
店員:高い金出してペット買っていく客。時間が経ったら捨てられるペット。そのためにペット育ててる俺ら。ハッ、一体なんのためにこの仕事やってるんだろうって。時々空しくなりますよ。
客:で、でも、オレ。右腕に封印された生き物飼ったら、絶対大事にしますよ!
店員:本当に?
客:本当ですって!
店員:本当かなぁ?
客:本当ですよ!
店員:餌とかちゃんとあげる?
客:あげますあげます。当たり前じゃないですか。
店員:無理やり封印解いて、生き物に無理させたりとか、しない?
客:しませんよそんなこと!
店員:封印のための包帯とか、毎日取り換える?
客:取り替えますよ!
店員:いきなり「真の力を解き放つ!」とか、しない?
客:(長い沈黙)......多分。
店員:じゃあ駄目ですね。
客:いいじゃないですか! 右腕の封印された力を解き放つのは、男の子のロマンでしょ?
店員:若いなぁ。うーん、分かった! それじゃあ実際に飼う前に、飼った時の予行演習をしましょう!
客:予行演習ですか?
店員:そうです、実際に飼ってみてイメージと違った、っていうのはよくある話なので。
客:あー、それは確かにそうかも。
店員:それじゃあ、実践してみましょうか。はい、これとりあえず。君の右腕と同じぐらいの大きさの蛇。持ってみて。
客:はい。うおー、意外と重い。餌は何食べるんですか?
店員:そうだなぁ、虫とかラットとか。
客:ラット?
店員:餌用の死んだネズミ。こういう瓶に入ってるの、見たこと無い?
客:うわっ、結構見た目キツイですね。
店員:そういう人は結構いるね。けど、蛇をペットに買うならこういうのに慣れないと難しいかも。
客:マジですか......「人間の負の感情」とか食べさせるだけじゃ駄目なんだあ......
店員:駄目だね。君はちょっと一般常識も学ぶべきだね。
客:うーん、なんかもっと餌やり簡単な動物居ないですかね?
店員:それだったらハムスターとかはどうですか?
客:いやいや、右腕の封印解き放って、ハムスターが「チューッ!」って出てくるの格好悪すぎるでしょ。
店員:女性受けは期待出来るかもしれませんよ?
客:女性受け.......(長い沈黙)うーん。
店員:真剣に悩んでる。
客:いやでもやっぱりハムスターはどうかと思うんですよね。
店員:慣れてくると可愛いもんですよ。大人しいし、飼育環境整えるのもそんなにお金かからないですし。
客:うーん、そう言われると......でもなぁ......
店員:でもよく考えてみて下さい。某ポケットの中のモンスターだって、相棒はネズミじゃないですか。
客:はっ。そう言われれば確かに......!
店員:でしょう? つまり、大事なのはそのペットの見た目なんかじゃなくて、あなたがそのペットに、どれだけ愛情を注げるかなんですよ!
客:ああっ......! 確かに、その通りですね。そんな簡単なことさえ気付けないなんて、なんて愚かなんだ自分。
店員:いいんだ。君みたいに若い子は、見た目の良さだけでなんでも決めてしまいがちなんだ。そういうものさ。
客:ありがとうございます。俺、ここに来てなんだか、人生において大事なものを教えてもらった気がします。
店員:フフッ、そう言って貰えて良かったよ。さ、どうする。ハムスターの種類は他にも色々――。
客:プルルルル、あ。すいません、ちょっと電話が......
店員:ああ、どうぞどうぞ。
客:はい。もしもし.......え? 予約待ちだった悪魔が入荷した!? ほんとですか?
店員:うん?
客:はい、はい。えっ、飼います! 是非是非! いやあ嬉しいな。僕ずっと悪魔を飼ってみたかったんですよ。
店員:あの、もしもし?
客:え? 今からですか? 行きます行きます。あの、悪魔の飼育方法なんですけど......え、「人間の負の感情を食べさせる?」やっぱりそうですよね! さすが、よく分かってる! 今からそちらに向かいます!
店員:えっ、ちょっ、ちょっとお客さん? お客さぁーんッ!
<終>
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