大柄なあの人の日記


以下は押収した日記の内容である。

 ポメラから文字をおしえてもらった。読み返すと何がかいてあったのかわからない。
 だが、こんなものだとポメラはにがわらい。慣れてくれば綺麗になりますよ、とはげましてくれた。
 エドワードが若干ふき出していた。もしかするとこれはおもしろい文字なのだろう。
 そういうのはよくないです、とポメラはおこっていた。そういうものではないらしい。
 ざんねんだ。

 ごいがふえるとかべんきょうの楽しみがどうこうとだれかが言っていたのを思い出した。
 なるほど、こういう気分か。これはいい。
 こんど本でも読んでみようと思った。

 晴れた日には農作業をし、雨の日には本を読む。刑務所にいた頃よりもかなり穏やかな暮らしが続いている。
 だが、たまに何かを忘れているような、おれがおれでいる何かが抜けてしまったような、そんな違和感が頭に残り続けている。
 エドワードに訊いてみたが、忘れたほうが良いこともあると言ってそれ以上は言ってくれなかった。
 今度はポメラにも訊いてみよう。

 ポメラに訊いてみたが、ポメラは顔を青くしたと思えばひどく怯えてしまった。かと思えば鳴き出すような、怒るような、そんな感じになっていた。きっと忘れてしまいたいことなのだろう。
 おれの考えが甘かったのかもしれない。もう、忘れてしまおうか。

 最近ポメラが布団の中に入り込むのが多くなった。
「きっと他人の体温を求めてるんだろうな」とエドワード。
 よく分からなかったが、求めているのならば差し出そうと思う。娘みたいなものだから。
 むすめ?
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