僕と白い猫


僕は心の中でずっとさまよっていた。
ダメなことだと分かっていたのに…。

僕は今、刑務所にいる。
とても美味しいとはいえないご飯。
きつい訓練、作業。
誰かが怒鳴りつけている声。
夜、1人寂しくうずくまりながら声を殺して泣いている声。
もう、同じことをを何回繰り返してきただろうか。

ある日、1つの出来事で僕は変わった。
その日は空が寂しく泣くようにしとしとと雨が降っていた。
いつものように布団から出ようとした時だった。
「にゃー」
どこからか声がした。
猫か?そう思った。
見ると部屋の隅に雪のように白い猫がいた。
一目見ただけで僕はその猫に心を奪われた。
こんなに白い猫がいるなんて。
僕は思った。きっとこの猫はこんな僕とは違い、とても心が白いだろうな。
僕はこの時ある決心した。
「僕はこの猫のように心の白い人になる」
こんな真っ黒な僕が白くなるなんて無理だとわかっていた。
けどなぜかこの猫のようになりたいと思ったんだ。
僕はその猫に名前を告げた。
「僕の名前は白玖だ」
真っ白な猫は
「にゃー」
と鳴くと窓の細い隙間から外に出ていった。
その日から僕はきつい訓練も全力でやるようになった。
あの猫のように心の白い、優しい人になるために。

あの日から1年ほど経った。
僕はついに刑務所から出ることができた。
心もだいぶ綺麗になったと思う。
僕はまたあの猫に会うために毎日いろんな所を歩いた。
朝も昼も夜も探し続けた。
なんでこんなにあの猫に執着してるのか自分でもよくわからなかった。
でもなぜかもう一度会わなければいけないと思うんだ。

追い求めていた夢は不意に実現した。
いつものように歩いていた時だった。
目の前に真っ白な猫が現れたのだ。
その猫は確かにあの時あった猫だった。
僕は息を呑み、その猫に言った。

「僕の名前を覚えていますか…?」

春風が気持ちよく吹いている日だった。
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