息が止まる


「…っぷはっ」

息が限界の合図。

彼の背を叩くと、彼は唇を離す。

本当は離したくないのに、この身体は酸素を欲する。

いつまでも繋がっていたいのに。

もう、身体の奥の奥まで彼に、彼にだけはさらしたのに、埋まることの無い乾き。

もっと知って欲しい。

もっと知りたい。

触れる度に思う。

私の全てが彼の知るもので満たされればいいのにと思うのに、彼の未知でいたいと願う。

知れば飽きて捨てる人ではないとわかってるのに。

彼にとって未知でありたいと願うのは女なら誰もが抱く浅ましさなのか、彼に骨抜きにされた私の愚かさなのかはわからない。

「恥ずかしいよ」
「ごめん。でも、もう少し」

彼が優しい、けれど目を逸らすことを許さない瞳で私を覗き込む。

彼のこの目で見つめられると私は逆らえない。

「…マジで好きだな…俺」

何がとも、誰をとも聞かない。

彼の目に映るのは私しかいないと、この瞬間はわかるから。

だから私はこう答える。

「私も」

くしゃりと、無邪気に心から嬉しそうに笑うと、彼は私を抱き寄せる。

私を見つめる貴方の瞳が大好き。

きっと、貴方もそうでしょ?
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