青き海に思いをはせて


「水族館に行きたい?」
ある日のカルデアの休日、マスターは珍しい人物からの相談を受けていた。
その相談者、小惑星探査機「ハヤブサ」は何時もの通り生真面目そうな顔で話を続ける。
「ああ、カルデアのシュミレーターで水族館の再現は出来るのかな」
「うーん。どうだろ。みんないろいろ好き勝手してるけど水族館はどうなんだろうなあ」
いくら古今東西の英霊たちが集うカルデアでも水族館に縁がある英霊なんてのは流石にいない。
一応娯楽設備としても使用されているシュミレーターだからあるのかもしれないがマスターは把握していなかった。
「にしてもどうして水族館なの?」
「ん、ああ…。イトカワがラッコが見たいと言っててね。ほら、以前の水着の時は結局ラッコじゃなくてカモノハシだったろ?」
「ああ、そうだったね…」
イトカワとハヤブサが出会ったとき、ハヤブサはイトカワがラッコのような姿だと言われていたことを伝えたらしい。
そしてそれを覚えていた彼女はある特異点に降り立った際「モフモフしていて」「自分の姿によく似ている」「可愛らしい」「水辺に棲んでいる生き物」としてラッコと勘違いしカモノハシを引き連れていたのだ。
「で、しっかりとしたラッコが見たいらしいんだ」
「なるほどなあ…」
うーむ、と腕くみしながらマスターは考える。
ラッコが見たい、というだけならば図鑑でも事足りるのかもしれないが…。そう思ったがすぐにそれは違うな、と思い直す。
実際のラッコを見に行くのと図鑑のラッコを見るのでは天と地の差がある。ならば出来ればかなえてあげたい…。
「あ」
「おや、何か策があるのかい?」
マスターの上げた声に少々難題を言ってしまったかと気に悩んでいたハヤブサが顔を上げる。
「ラッコが見たいならシュミレーターでラッコがいるあたりの再現をしてもらうとかなら何とかなるかも」
例えば北海道とかである。
「なるほど、確かにそうだ。そっちならデータが…「ダメよダメダメ!そんなのダメよマスターさん!」て、テンペル?」
二人が納得しようとしたときドアをこじ開けて突入してきたのはイトカワやリュウグウと同じく宇宙からの来訪者であるテンペルであった。
「な、なにがダメなんだい?」
「何がダメって…、そんなのわかりきってるじゃないの!」
はて、何がダメなのだとマスターとハヤブサは視線を合わせる。
「いい、マスター? イトカワちゃんはラッコが見たいわけじゃないのよ」
「え?」
違うの?とハヤブサに目で聞けば「そんなことは無いと思う」と目で帰ってくる。
「ラッコといえば水族館、水族館といえば…」
テンペルは腕を組み胸を張って言葉を紡ぐ
「水族館デートに決まってるじゃない!!!!!」
「失礼マスターに後輩。テンペルが邪魔をしたな」
「いつもの発作だからあんまり真に受けないほうがいいよ」
「いいことマスター!?水族館デートよ!?そのあとは海辺でロマ…」

…テンペル係である「ディープインパクト」と「スターダスト」の二人にテンペルが連れていかれるのを見送ったマスターとハヤブサは二人して顔を見合わせた。
「なんか、こう、そういわれると確かに水族館デートになるのかな?」
「いや、その、そんなつもりではないと思うんだが…」
「ま、まあ、うん、少し技術部のみんなにも相談してみるよ」
「す、すまないね。マスター」

ーその後ネモ以下海洋に縁のあるサーヴァントたちが音頭を取りシュミレーターのなかで再現された水族館をハヤブサとイトカワは楽し気に満喫していたのだという。

礼装「カルデア水族館」
イトカワが発した「ラッコが見たい」という要望にカルデア技術部とネモ、ジャンヌなどが乗っかった結果完成したシュミレーターの中にある水族館
古今東西の魚や水生生物が展示されており時折サメ兵士が混じっていることもある。
一番人気はジャンヌのイルカショー。 たまに宝具のクジラが飛び出してくることも…?
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