幸せな夢を


眠気に襲われて死んだ。
どうやら最近の眠気はタイヤにコンクリ詰めて防弾性を上げて機関銃積んだピックアップトラックで襲ってくるらしい。
自分でも意味が分からないがとにかく死んだ。
そして異世界に転生することになった。
眠気に襲われて死んだという縁でチート能力として睡眠や夢を操る力を貰ったのだ。
そして現在自分は――

「寄ってらっしゃい見てらっしゃい! 最近流行りの眠り屋さんだよ!」

雇った呼び込みさんが大きな声を張り上げている。

「なんとここの術師さんは夢を操る! そんで皆さんに幸せな夢をプレゼント!」

「一晩幸せな夢を見て朝にはパッチリお目覚め、最高の一日の始まりだよ!」

そう、異世界に転生した自分は商売を始めていた。
ほとんど呼び込みさんが言ってしまったが簡単に言ってしまえば「幸せな夢を見せてお金を貰う」という商売だ。
夢の中ではなんでも叶う。
これが当たった。
それこそもう金に埋もれて寝られるくらいウハウハの大当たりである。
毎日行列だ。
異世界の人達疲れすぎだろう、と思ったが転生前に世界でも大儲けできた気がするので深く考えるのは止めた。

だが、そんな儲けられる商売は無粋な奴らも寄ってくる。
脅して金を巻き上げようとするくらいならまだいいが、中には拉致しようとする輩もいる。
しかし、そんな奴らには容赦なく「目が覚めない幸せな眠りに落とす」で即座に無力化する。
大抵は寝てる間に兵士に引き渡すが、やろうと思えばそのまま衰弱死もさせられる。
必殺技である。
最近の必殺技は必殺具合が足りない。見習ってほしいものである。

そんなこんなで一生を送って、老衰で死にそうなっているのが現在の自分。
最近は能力を使うこともせず稼いだ莫大なお金で悠々自適な生活を送っていた。
いい人生だったと思う。
だがしかし、そんな人生にケチが付きそうになっている。
結婚して子を儲け、孫たちもすくすく育った。
だが、すくすく育ちすぎてお金に汚くなった。
そう、遺産争いである。

そしてついに一線を越えたものが現れた。
遺言書を偽造して、自分を殺そうというものが現れたのだ。
だから仕方なく久しぶりに能力を使って無力化しようと思った。
が、しかし。
久し振りすぎて力の制御を誤った。
自分を含めて世界全体に「目が覚めない幸せな眠りに落とす」を使ってしまったのだ。
ごめん、世界。
おやすみ、世界。
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