看守JA【悪役刑務所】


 十二次元刑務所の廊下。そこで一人の少女が歩いていた。サド・ケンドウ。元男。
 サドは看守服を身にまといながら、上機嫌に鼻歌を歌っている。
「何してんだよサド」
 不機嫌そうに後ろから声をかけるのは、同じく看守のジョナサン・アーク。看守Jという通称で呼ばれることもある。
「随分と機嫌がいいじゃねぇか、ええ? 見回りの当番、俺の次お前だったよな? 今までどこにいた」
 サドがジョナサンの顔を見上げれば、怒り一色に染まっていた。元々背の高いジョナサンだが、サドが女になりより一層背の差があいた。
「へへ、荒くれ者がいたんでな。少しお楽しみを」
 嬉々としてジョナサンに言う。それを聞いたジョナサンはため息をつきその場にしゃがみ込んだ。
「変わんねぇなぁお前は。文句言おうにも暴れた囚人の沈静化をしてたってんなら言えねぇな」
 ジョナサンは立ち上がる。それから、サドの頭に手を置いた。
「まあいいや。交代だ」
 面倒だなぁ、とサドは言いつつ警棒を手に持って見回りの準備をする。去り際にジョナサンが少し恥ずかしそうに声を絞り出した。
「それから……ボタンはしておけ。……む、胸が見える」
 何を恥ずかしがってるんだアイツは、と不思議そうにして、サドは見回り業務を始めた。
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