ツァワーバ
作成日時: 2026-08-23 08:04:06
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(この記事はスタブです。)
ツァワーバまたはチャワーバは、セントキーナス諸島北部の先住民チュアムリ人がおよそ1世紀から半世紀ほど前まで話していたチュアムリ語の言語変種である。病気や怪我を被ったり、儀礼を執り行ったりする際に用いられた。ツァワーバは「治療する(ツァウ)声(ワーバ)」もしくは「声の治療」を意味する。(セントキーナス諸島の諸言語は前置修飾・後置修飾ともに許容する。)
以下の記述はすべて、C. Sigridが1889年に出版したThe Islanders of Saint Quinasに基づく。
セントキーナス諸島とチュアムリ人
セントキーナス諸島は16世紀後半に英領植民地となったが、前世紀に地盤沈下により水没しており、当地のチュアムリ人はインドネシア・オーストラリア・フィリピンなどに移住後、近隣の民族と同化したと考えられている。同化の過程を記録した研究はなく、チュアムリ人のその後について詳細は明らかでない。しかし、オーストラリア東部の都市伝説に、ツァワーバを思わせる言葉を話す幽霊がいるので、移住後も使用は部分的に残っていた可能性がある。
チュアムリ人は、ポリネシア系の民族だったらしい。ポリネシア人としては小柄で、成人男性でも150cm台の人が一定数いた。とはいえ、体型はがっしりとしていた。肌は褐色で、髪は細かくカールしていた。諸島内でチュアムリ人の主要な集落は5つあったが、シグリッドの調査時にはそのうち3つが放棄されており、人口規模も150人程度になっていた。諸島内の他の民族とは通婚しなかったが、家系図にはしばしば諸島外の者(商人など)がいた。
チュアムリ語の単語の記録は、いくつかの親族名詞以外ほとんど残っていない。チュアムリ語の調査ができなかった理由についてシグリッドは、「諸島一帯の共通語はムラユ語 (Bahasa Melayu) である。(…)(チュアムリ人は)異邦人の前でムラユ語とツァワーバ以外の言葉を話したがらなかった。」としている。
ツァワーバの体系に関する主な調査記録は、C. Sigrid (1889)によるものしか現存しない。晩年の自伝によると、シグリッドはその10年後にセントキーナス諸島で再度調査を行っているが、そのときの記録は現存しない。
チュアムリ人の儀礼
人生の大きなイベントは、結婚式と葬式である。誕生時には特にお祝いはしない。結婚は子供と大人を分かつ出来事であり、初めての結婚式は成人式と同一視される。離婚には寛容で、年配者の中には5回以上離婚経験を持つ者が6名いた。初婚年齢は10代が多い。
結婚はケガレを伴うものと考えられている。このケガレのことをツァワーバでは「海の息」(nǂoi nǀin)と言う。ここでいう「海」は海洋神のことで、「海の息」とは要するに神霊のことを指す。神霊が人々の体の中に「入る」(nǀisi ke nǃua)と、生まれる子が奇形になったり、家族が病気になったり、漁で魚が撮れなくなったりするため、このケガレが結婚生活の過程で増えないように、結婚式で予防しなければならない。結婚では、夫・妻、およびその親たちが参加する。茨状の枝を持つ特別の植物(ツァワーバでの名称は不明。タブー語らしい)を親指に刺し、出てきた血をその植物の葉で拭う。全員の血が重ね(la wa nǃaka)、その血を覆うように、薬草やバナナなどを混ぜて作ったペーストを塗る。葉はタロイモ畑の端に埋める。初婚の場合、夫はその後、半日かけて背にイレズミを入れ、半年にわたる割礼の儀式を行う。
ツァワーバの概要
ツァワーバは回避発話 (Avoidance speech) の一種と思われる。次のようなときに使われた:
本人または家族が病人・怪我人であるとき。
結婚式や葬式などの儀礼。
薬草を取りに森へ入るとき。
異民族のそばで話すとき。
ツァワーバは、チュアムリ人の先祖の長老が作った言葉と言い伝えられていた。語彙は300程度の単語から成り、婉曲的な表現を好んだ。
ツァワーバに限らず、自然言語の回避発話ではレキシコンが著しく縮小することがある。日本語の敬語で、「もらう」「食う」「飲む」の謙譲語がすべて「頂く」に集約するのに似ている。
回避発話としてはかなり珍しいことに、ツァワーバは日常のレジスターとは異なる文法を持っていたと考えられる。語順はSVO-NA型で固定されている。孤立語であり、受動態以外に語形変化はない。受動態では、動詞に接辞-birが付く。
特筆すべきは、内容語の語頭が必ず吸着音で始まることだ。すべての吸着音は鼻音であり、/nǀ nǃ nǂ/の3つが主である。/mʘ/はmʘelu(豚)の1語にのみ現れる。
語形は基本的にアプリオリで、周辺の諸言語と似ても似つかぬものが多い。
語彙の例
nǃaku 取る、食べる、飲む(〈取る〉と〈食べる・飲む〉を明確に区別したいときは、「手でnǃakuする」「口でnǃakuする」のように言う。)
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