とあるセブンスターズの独白 第一部


自分は恵まれて生を受けたと言えるだろう
家柄に 裕福さに 実力に
友にも恵まれたと言えるだろう

唯一の不満は自身の属する組織くらいだろうか?

ギャラルホルン

祖先の代から自分が属すことが決まっている治安維持組織。
父上や母上から聞いていたのに比べて随分とマトモとは言い難い組織と言うことは所属してから2〜3年も経てば嫌でも理解できてしまった。
300年も続いた組織は既に腐り果て、汚職による利益追及、政治干渉。上げればキリがない程だ。

私はいつしか育ちの良さもきっとあったのだろう。
この組織を自分が内側から改革してやろうといつの間にか考えていた。
友も同じ様に考えてくれていたのは俺の支えになっていた。
友とは家族絡みの関係にもなった。共に組織を変え、支えて行くと誓った。

しかし組織は 俺は、私は侮ってしまっていた
世界が 人々が抱いてしまった
憎悪に恐怖してしまった

第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦

戦時中継で俺は友と共にそれを見ていた
地球連合が再び手にしてしまった核という禁断の兵器が、一つの要塞に何十発と撃ち込まれ消滅する瞬間を

プラントのザフトが持ち出した兵器から放たれた光が、一瞬で艦隊を消し飛ばす瞬間を

ジャックした通信から響く双方の互いを憎悪する怨沙の声に
俺は震え上がった。
ナチュラルとコーディネーター達の戦争の始まりとなった事件である血のバレンタイン。
その折り、ギャラルホルンは連合に向けて政治的制裁を行う為、プラントに手出し無用を通告したが彼等の憎しみがそんな事で止まることは無かった。
プラントが核を抑止する装置を地球全土に投下した事で深刻なエネルギー不足が発生してしまい、一億の人々が餓死する大惨事を引き起こしてしまった。

戦争は始まってしまったのだ。

最初、我々は数で勝る連合が勝利すると疑わなかった。
いくら薄汚いコーディネーターが能力で勝っても、数的有利を覆せ無いと。連合が勝利した後が我々の出番だと。

ザフトがまさかギャラルホルンにしか開発出来ない筈の
人型兵器 モビルスーツを投入するまでは。

彼らはリアクターを用い無い、新たなモビルスーツを投入し数的不利を呆気なく覆してしまったのだ。
当時のギャラルホルンは大混乱だった。
自分達のアドバンテージをほぼ失った様な物だったのだから。
結局、他の保守派の尻込みによってギャラルホルンは序盤の戦争介入のチャンスを失ってしまい、我々の存在意義すら疑われる事態になってしまった。
最終的に終盤に両成敗を行おうとしたが、既に種族間の絶滅戦争にまで至ってしまった戦争は我々とは別勢力の介入により、双方のトップの死亡、大量破壊兵器の全損により停戦。

我々はその事後処理と条約締結の仲介人という立場だけが残る結果となってしまった。

俺の中には組織や自分自身への不満や情け無さからの鬱憤が溜まっていった。こんな情けない役目しか果たせ無い組織を、友と共に何としても変えてやると、俺は自分にそう誓った。

それから2年 C.E.73年
ブレイク・ザ・ワールド事件により再び地球とプラントの戦いが始まろうとしている中
友の護衛という立ち場で
俺達は 火星にいた

鉄華団

火星からの新興組織がクーデリアを護衛し、地球へ向かおうとしている事を確認した俺達ギャラルホルンはその追撃を行い、クーデリア捕縛の為戦っていた。何度も何度も宇宙ネズミ達を追い詰めてもスルリと逃げらてしまい、自分自身の情け無さに反吐が出そうになる。
が、自分には新しい出会いもあった。
アイン・ダルトン
上官 クランク・ゼント二尉達の仇を討つべく追撃に志願して来た新米パイロット。
俺の部下として引き取る事になったアインに俺のグレイズを託し、俺は家が保管していたキマリスを駆り共に鉄華団相手に戦いを繰り広げることになった。
火星人と地球人のハーフである彼は他の心無い上官から差別を受けていたが、俺にはそんな些細なことは関係ない。
ギャラルホルンに身を置き、命を懸けるもの達は、皆平等であると考えてる俺には関係無く大切な部下なのだ。
アインや友と共に奴らを撃ち、治安を取り戻し、家の、ギャラルホルンの誇りを守るため、いつしかギャラルホルンを改革する為に

しかし此処から俺の 
私の認識していたものにズレが出始めたのは?
アインがおれを庇い致命傷を負ってからだろうか?
其れとも、腕の中でカルタが死んでからだろうか?
アインを救う為に阿頼耶識手術を行うと決断した瞬間だろうか?
其れとも


マクギリスと俺の改革が全く違う物だと気付いた瞬間だっただろうか?

俺の目指す内部改革では無く、マクギリスが求めていた改革は、崩壊したギャラルホルンに代わり現れる新たな組織と共に治安維持を目指すという物であった。
新たな現代のアグニカ・カイエルと共に俺達の目指したギャラルホルンを新たな組織で実現すると語った。
最初からそのつもりだったと答えた。
父親、イズナリオへの復讐の為でもあると語った。
俺は声を上げ、キマリスをぶつけ、マクギリスに問い掛ける

アインを利用したのか?! 君が選択した事と返って来た。
カルタの死を利用するのか?! 彼女が自分で勝手に追い詰められて死んだだけだ。と返って来た。
俺達の友情は偽りだったのか?! 半分真実であり、半分偽りだと返って来た。
それは何故だ?!問い掛けると、
マクギリスは「何故なら、俺はイズナリオに拾われたコーディネーターだからだ」と、回答が返って来た。

頭が真っ白になった。
マクギリスがギャラルホルンが禁忌としたコーディネーターなどと信じられなかった。
しかし、思い返せば、アークエンジェルを護衛した時に出会ったコーディネーターの少年に対し俺やカルタは距離を取ったが、マクギリスはに彼対して別れるまで相談に乗ったりしていた。
俺は少年に対しどんな対応をした?確か、コーディネーターとわかった時、自分の手をハンカチで拭いた筈だ。
嫌悪する様に。カルタも同様だ。それが当たり前だからだ。
しかし、その時のマクギリスに俺達はどう映った?
自分達が野蛮なブルーコスモスと同類にしか映らなかった筈だ。
あくまでも同胞だと思っていたからの友情だと。
だからこそ、先程の質問の回答だと。嫌でも理解できてしまった。

ぐちゃぐちゃになった感情のまま、斬り合いながら俺は再び問い掛ける。

カルタをどう思っていたのか?! 鬱陶しかったと返って来た。
お前を思っていたんだぞ?! 元から私にそんなつもりは微塵も無かったと返って来た。
アルミリアはどうなる?! 彼女は関係無く、命に替えても必ず幸せにすると返って来た。
アルミリアとの子はどうなるんだ?! どういう事だ?と返って来た。
ハーフコーディネーターを産んだらアルミリアも子も迫害されるぞ?!
と、言おうとしたらマクギリスの機体からの攻撃が激しくなった。
それをさせ無い為にギャラルホルンを壊すのだ‼︎と、反論して来た。凄まじい殺意が一刀ごとに乗って来た。
ズタボロにされ、キマリスが動かなくなる。

言い忘れたが彼女は全て知って、解ってくれた。
私がコーディネーターなど関係無いと言ってくれた。
彼女は承知の上で私と同じ道を歩む覚悟が有ると言ってくれた。私の目的も全て知っている。
私は彼女が必要だから愛するのでは無く、わたしも彼女の言葉に、決意に救われたから愛するのだ。と、付け加えて来た。

少し、安心してしまった。間違い無くマクギリスはアルミリアを護ってくれると、愛し合っていると、幸せにしてくれると、確かに確信出来てしまったから。
そして、コーディネーターである事を抜きにしても、俺からお前への友情は間違いなく本物で、俺にとって唯一無二の親友だった。
正直、分け隔て無く接されるアインが羨ましと感じてしまうほどにな。と、マクギリスが語った瞬間マクギリスの機体がキマリスを貫き、俺の意識は闇に落ちた。
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