どっかの聖杯戦争でモブ魔術師♂俺に召喚された史実シラノ


モブ魔術師♂×史実シラノ

※史実シラノをキャスターと仮定


「おお、俺の真名を問うか。では答えよう。哲学者、物理学者、詩人、剣士、音楽家。月の果てまで行く予定の旅行家、舌先は魔性の如くと来たり。そう、我が名こそは──サヴィニアン・ド・シラノ・ド・ベルジュラック!」

──最悪だ。ダンボールに詰めて燃やした過去が、形をとってうやうやしくお辞儀をした。

◇◇

「第一の疑問として、この俺がどうしてこんな影のみの姿で召喚されたか」
「こっちが聞きたいんだが?!」
「……俺が座に刻まれるきっかけに関係があるらしいが詳しくは分からん」
「ええ〜……まあ分からないなら仕方ないか。でもお前ほどの知名度があるなら心配ないな。
よろしくな、セイバー」
「えっ……ああ! こちらこそ頼むぞマスター!」
「なんか変な間なかったか???」

◇◇

「なんっっっでまともに戦えないんだよ!」
「この姿を見てまともな戦闘ができるサーヴァントだと思うなら眼医者にかかった方がいいと思うぞマスター!」
「じゃあそれ今弓射ってきてるアーチャーに言ってこいよぉ!!!」
「話して聞くような相手じゃあないだろうなぁ!!!」

◇◇

「どうしてこんな羽目になるかな?!」
「我が騎士道にもとる事はしかねる!」
「だああああクソが!」
「そら嘆いてる暇があれば合わせろマスター! 騎士道万歳!」
「ちきしょうこうなりゃヤケだ! 騎士道万歳!」

◇◇

「……セイバー陣営を何とかいなして拠点に戻ることができた俺たちな訳ですけど」
「……」
「なんでセイバーがいるんだセイバー」
「……(パチッ)」
「電気消すな逃げるな真名で呼ぶぞ!!!!!」

◇◇

「キャスターならそう言えよお前戯曲の方じゃないってそれは最初に言っとけよお前お前お前お前〜〜〜〜!!!!」
「先にセイバーと呼んだのはそっちだ!!!!」
「訂正しろよ違いますって言えよ〜〜〜!!!!」
「……君が」
「え?」
「君が嬉しそうだったから……」

◇◇

「自分で提案しといてなんだが正気か?」
「正気じゃないとこんなことできなくないか? いや逆か?」
「……君は拒むと思っていた」
「拒んだ方が良かったか」
「そういう訳ではないが……君はその、私のことをそういう目で見れるのかとかは……いやなんでもな」
「……正直、恋とか愛とかそういうものがあるかは分からない」
「……そうだよな」
「でも、お前のことを信頼してるし、好きだって思うよ」

◇◇

「…………」
「…………」
「『心配するな、俺は男色家だ』」
「わーー!!わーー!!わーー!!」
「いやまあうん、わかるよ。挿れてるこっちですらこうなんだからそっち側ならああもなるわな。相性ってあるんだな……」
「殺してくれ……」
「お前が死んだらこっちの死に直結するので嫌ですぴっぴろぴ〜」
「現代にピロートークの教本があるとは思えないが学んだ方がいいと思うぞマスター。君のような不躾で無遠慮で無神経な男でもこの先どんなご婦人と共寝できることになるとも分からないだろう」
「ガチトーンだな。てか、ベッドで他のやつを抱く未来の話するのは無神経に当たらない訳?」
「……」
「僕は傷つきました」
「……すまなかった」
「うん」
「だが、俺は君がこれから生きていくうえで、誰かを好きになって欲しいと思っている」
「うん」
「恋をして、苦い経験をするのもいい。しかし最後には、柔らかな愛を知って欲しい。愛し、愛される生活をして欲しい」
「うん」
「そのためならば、俺は命だって賭けることを躊躇わない」
「……ずっる〜〜。カッコよすぎだろ。戯曲書いたやつ誰?文句言ってやる。お前がモテなかったのは嘘だ」
「そう言ってやるな。私も物書きだったから分かる。あれは名作だ。後世に残るのも頷ける、美しい作品だ」
「お前さ、どっかで戯曲の自分に勝てないって思ってるだろ」
「……」
「僕を助けたのも、僕が好きなのも、誰でもないお前だよ」
「……」
「それくらい、信じてくれよ」

◇◇

「令呪をもって命ずる! キャスター!

シラノ・ド・ベルジュラックの、騎士道を示せ───!」

「うけたまわった!!!」

命をやりとりする局面に、一秒を千にも万にも引き伸ばしたような感覚がふと訪れる場面がある。
右手に残った令呪の最後の一角が消える。
その向こう、影の背を見ながら、彼の騎士道とは何だったのかと思う。

──それは、シャルルマーニュ十二勇士のような、華やかな伝説でなく。
──それは、ラ・マンチャの騎士のような、途方もない敵に挑み続ける幻想でなく。

彼がふと、こちらを振り向いた。そして、笑った。
影だけだけど、絶対にそうだと分かる。

──そう、それは。
  愛する者の幸せを願う─────

◇◇

「ところがどっこい生きている!」
「あの状況から生きて帰れたのは奇跡だろ。──って、そりゃ僕もかあ」
「マスターも深手を負ったな? まあどうにか治りそうなそっちと違ってこっちは霊核にヒビが入ってるから、消えるのも秒読みだがな!」
「ここまで来てもよく回る舌だこと」
「そりゃあそうさ!今から手紙の朗読だってしてやってもいい!」
「だーかーらー、お前は戯曲の方じゃないんだろ? 
いいよ。僕の負けだ。いい機会だから話してやるが、僕は騎士の物語が好きだった。大好きだった。でも家はそんなものを読むのは許してくれなかったから隠れて読んだ。それでも魔術師になって家を継ぐと決めた日に、自分でそれらをダンボールに詰めて燃やした。そんな僕の目の前に現れたのがあのシラノ・ド・ベルジュラックって聞いたら、誰だってセイバーだって思うだろ?」
「………」
「影しかないし、毒舌家に見えて卑屈だし、挙句の果てに戯曲のシラノじゃないなんて言う。
でもさ、お前は立派な騎士だった。僕の憧れの騎士そのものだった」
「……そうか」
「だから、手紙の朗読なんてするな。心意気だなんて死んでも言うな」
「それなら、俺と君の別れの言葉は、あれに限るな」
「まあ、そうなるか」

そうして僕たちは、白んできた空を見上げて思いっきり息を吸う。

「「──騎士道万歳!!!」」

声は夜明けに溶けていった。視線を落とせばあいつが消えてしまっていると分かるから、上を向いたままでいた。上を向いたままなのに、どうしてか、泣けて、泣けて、仕方なかった。



◇◇


シラノを召喚して魔力供給の名目でえっちしてえな〜〜〜と思ったけど一夜限りの関係にしかならないしシラノは絶対にモブ俺を生かすためにどたばた頑張ってくれるからそれに応えてえよおと思ってだらだら書いてたら死ぬほど脱線した。殺してくれ
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