KOTY2020据置 総評案5.2


KOTY 2020 据置 総評案5
米国からのリアル黒船と謳われた「デューク ニューケム フォーエバー」が
日本で発売されたのは2012年3月のことだった。

本作が「日本よ、これがクソゲーだ!」と言わんばかりのクソっぷりを見せつけてKOTY(クソゲーオブザイヤー)に現れて以来、
「ヘビーファイア」「赤サブレ」「ランボー」…
様々な海外製ゲームたちがKOTYに襲いかかり、スレを盛り上げてきた。
しかし、彼らの全てが、日本産のクソゲーの前に大賞を阻まれ、惜しくも敗れ去っていった。

そんな中、2019年のKOTYに現れた中国からの刺客「サマースウィートハート」は、
「虚無なのに投げ出すことを許さぬ終わりなき苦痛」を醸し出した点が評価され、
見事海外製ゲーム初となるKOTY据置部門における大賞を勝ち取った。
本作に出演した女性の一人が「これを買うなら私の写真集を買え」とまで言い出す始末であり、彼女たちに対する涙を禁じ得ない。

そして時はゲーム界に於いてもすっかり国際化が進んだ2020年。
奇しくも去年の海外勢によるKOTY制覇に続く形で、
5本の海外製クソゲーがスレを襲ったのであった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

今年の門番が姿を現したのは4月のことだった。
Nintendo Switch/PS4/Xbox One用DL専売ADV「Kentucky Route Zero : TV Edition」(通称:ケンタ)である。

…この名を聞いて、疑問に思う者もいるかもしれない。「そんな馬鹿な」「ここはKOTYであってGOTYではない」と。
実際に、スレ住民の中にはプレイ報告を疑う者さえいた。

そもそも本作は米国から2013年から2020年にかけて5章に渡ってSteamで分割配信されていた
「Kentucky Route Zero」シリーズを家庭用に総括した作品であり、
その独創性溢れる世界観が好評を博し、海外では数々の名誉ある賞にも選出されるほどの高い評価を受けている。

最終章であるAct5の発売と同時に家庭用移植版であるTV Editionが配信を開始し、
Nintendo Switch/Playstation4/Xbox Oneの3機種版発売、
原語である英語以外にも7つの言語に対応、と
その評価に相応しい販売体制で、英国では2020年アカデミー賞のゲーム部門においても入賞を果たしている。
当然日本でも、この魅力溢れるADVが高い評価を博す…はずだったのだが、

Switch版の発売日があの「スベリオン」と同じ1月28日であること、
タイトルに「ルートゼロ」と冠しているなど、
2010年に於いて並み居るクソゲー達を退けたあの2大門番を思わせるようなフラグにより呪われる運命にあったのか、
本作は高く評価されるどころかKOTYに選評が届いてしまったのであった。

…では、何故本作がKOTYという不名誉な賞の候補に名を連ねるようなことになってしまったのか?
選評者が挙げた問題はただ1つ、「日本語訳の質が酷過ぎる」ことである。

大量の誤字脱字などはまだ序の口、口調や文体、人物や地名の表記も安定しておらず、
例として主人公の名前は原語だと「Conway」なのだが、
日本語での表記が「コンウェイ」「コンウェー」「コーウェイ」だったりというブレ具合である。
この他にも「watch(見る)」が「腕時計」、人名の「Cliff」は「崖」、「still(蒸留器)」も「まだ」などと直訳感たっぷりの翻訳、
挙句の果てには訳されてすらいない箇所が散見されるなどと、
挙げ出したらキリがないほど悲惨なレベルで誤訳が多い。

そもそもこのような誤訳は、これまでのKOTY候補においても何本か見られた。
これは特に海外インディーゲームのローカライズにおいて顕著に見られる。
前年王者「サマスイ」で見られた「はい!義母になる!」「記憶の中の匂いを掻いた」などは記憶に新しいことだろう。

だが、これまでは誤訳があったとしても、それを理由に選評が届いた作品はこれまで存在しなかった。
しかし、本作のジャンルはADV。つまり、「文字で綴る」ということを前提にした物語が繰り広げられるジャンルである。

そうなると、もはや原作の世界観ぶち壊しで
「これの翻訳者は原語版をちゃんとプレイしてねーだろ!!」と嘆きたくなるくらいに
壊滅的な誤訳は致命的な問題と呼ぶに十分と言える。

おまけに、このような誤訳のせいで、本来なら評価点になり得た他の要素が全く活かされていないのだ。
本作には一期一会の情趣を醸し出すためにログ・スキップ機能は搭載されていない。
だが、これはかつて2007年大賞作「四八(仮)」などのクソADVが証明したように、
一歩間違えれば「読み返すのも面倒な不親切なシステム」になりかねない。
本作の日本語版はただでさえ誤訳があるために
「話のわけが分からないのに読み返しにくい」という状態なのだ。

また、想像力を阻害しないために本作のグラフィックはわざと抽象的になっているのだが、
日本語版では「文章が意味不明だからグラフィックから想像を膨らませ脳内補完するしかないのに、
そのグラを見ても何が起こっているのか分からん」という有様である。

そして、この余りにも酷過ぎる惨状であったため、7月14日にアップデートが実施された。
選評者も「アップデートで誤訳が直ったら選評は取り下げる」という旨の発言をしており、
これでやっとまともに楽しめるようになり無事に日本でも良作と称えられる…と思われていた。

確かに、このアップデートの恩恵で、流石に支離滅裂な機械翻訳は減ってはいる。
しかし、「十分おかしいが壊滅的ではない」程度の誤訳は放置されたままである。
これでは選評者に「明らかに目立つ部分だけ、やっつけで処置したんだな」と切り捨てられても仕方がないことである。

一応は読めるようになり、「明らかに破綻した翻訳のせいでろくに読めない」状態ではなくなったものの、
今度は「読めたって結局わけが分からない」と、別種の業が深いクソゲーになったと言えよう。
選評者も「これだけでクソゲーから脱却できたとは言えない」と、選評を取り下げることはなかった。

「元は名作だが誤訳だけで全てが台無し」という前代未聞のクソゲーの登場にスレでは扱いに揉めたものの、
「日本語版がクソならクソゲー」と判断され、結局本作はKOTYに於ける令和初の門番となったのであった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

そして7月。KOTYに向かって、立て続けに2本の夏の怪物がやって来た。

まずは7月1日、PS4のDL専売ソフト「Dreaming Canvas」(通称:ドリキャン)の登場である。
このゲームは、「目的地を自由に選択し、風景の回りに散らばっているキャンバスを見つけ、絵を描く」という内容のもと発売されたソフトである。

では早速プレイを開始して、マップの中に4つほど設置されているキャンバスに向かってみよう。
なるほど、キャンバスの位置には目印となるように光の柱が立っていて分かりやすい。
さぁ絵を描いてみよう。…おや、絵を描こうとしたが何かがおかしい。
絵を描こうとしてもそこにはフィールドの風景が何故か自動で写し取られ、
プレイヤーに出来ることは、彩度や輝度などの5つのゲージを調整するだけ。

そう、何とこのゲーム、お絵描きゲームであるはずなのに自分で絵が描けない。
「は!?」と思うかもしれないが無情にもこれは事実である。
これだけでもゲームとしては十分論外と言えるが、それ以外の要素も見ていこう。

まず、このゲームのマップにはプレイヤーの他にも何人かの旅人が存在する。
だが彼らに話しかけることは出来ず、ただひたすらにそこに立っているだけの「風景」に過ぎない。
そして、そんな彼らを見つめることで何故かトロフィーを獲得することが可能である。
しかしそれらの名前は「Dadaism」「Realism」「Fauvism」といった芸術思想の名前で、
キャラとの関連性が皆無である。

また、マップ内には名だたる芸術家たちの名言が各所に見られるが、その内容が
「絵を描くのは方法がわからないときは簡単ですが、行うと非常に困難です」
「私は再び立ち上がるすべてにもかかわらず、私は私の大きな落胆なために私が捨てた鉛筆をとり、私は自分の絵を続けます」
「すべてのアーティストが最初にアマチュアでした」
などと、門番の「ケンタ」を彷彿とさせる直訳感溢れる翻訳である。

「絵描き要素」「旅人との交流」「名言」と、あらゆる点が壊滅的な本作で出来ることは、
はっきり言って「マップをうろつく事」くらいしかない。

2017年の「SHOOT THE BALL」、2018年の「GEM CRASH」、2019年の「球兄弟」に続いて現れた、
もはや毎年恒例になりつつある低価格の虚無ゲーは、総評では作中に出てくる名言(?)を借りて
「自然からの絵画はオブジェクトをコピーすることはありません」と言わしめ、
「面白さを感じる部分は一つもない。絵を描く達成感もなく、描き終わったあとする事もない。本当に何もない。」
「Steamの『Goat simulator』の良いところとヤギを抜いてキャンバスを置いただけのゲーム」
という感想をスレ住民が残すなど、これまでに大賞を取った虚無ゲーにも劣らぬゲー無ぶりを見せつけ、
本年度の夏の怪物として話題作入りを果たしたのであった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

続いて、ドリキャン発売の翌日に、次なる夏の怪物が控えていた。
それは3年前の「Operation 7」と同じく、お隣の韓国から日本海を越えてやって来た、
Nintendo Switch用DL専売アクションRPG「ファイナルソード 英雄の誕生」(通称:ファイソ)である。

本作は2019年にスマホゲームとして販売したものを家庭用に移植した作品で、
とても令和の時代とは思えないPS1初期レベルのグラフィックなどから、
発売前から「見えている地雷」としてKOTYスレに限らず、ネット界隈において話題になっていた。

そして7月2日に満を持して発売されると、何と『ゼルダの伝説 時のオカリナ』からの音楽パクリ疑惑が発覚。
当然任天堂もこれを許すはずがなく、7月6日に本作を販売停止にしてしまい、
スレでも本作の扱いに揉めていた。

どちらにせよ、購入可能な期間が4日間しかなかった本作を検証するのは、
そもそも購入者が絶対的に少ないため非常に困難である。
そのような状況において、検証を行い選評を書くことのできる住民はいるのか?
配信停止になった作品の扱いはどうするのか?

スレでもファイソの話題で大いに盛り上がり、Wikiもアクセス過多でダウンしてしまう事態に陥った。
…だが幸いにも、こうした状況においても、僅かな販売期間の間に購入し、選評を提出した勇者が無事に現れた。
では、本作の問題点を紹介していこう。

まず1つ目は、理不尽な「戦闘バランス」である。

普通にプレイしていたら目的地に辿り着いてもレベルが適正値に全然届かないのは序の口、
「ちゃんと命中しているはずなのに敵がやられていない」といった当たり判定の雑さ、
ボスがやたら硬い上に攻撃力は高い、
攻撃を食らったあとの無敵時間がないため、ダウン状態から起き上がったらすぐ追撃を食らいハメられる、
しかもダウン状態ではアイテムの使用が封じられるため、どれだけ回復アイテムがあったとしてもハメられたら最期…。

等々、本作は戦闘のゲームバランスに多くの難を抱えているのである。
多くの人はこの理不尽さに耐えかねて投げ出してしまうことだろう。

2つ目は、各所に見られる「調整不足」である。

本作は制作者の技術不足もあってか、全体的に調整不足な点が見られる。
例を挙げると、敵から手に入るお金の量に対してショップでの商品価格が高すぎる、
メニューを開こうとすると少し遅れてメニュー画面に移る、
アイテムは1種類につき20個まで持てるが、10個以上持っていると在庫切れで商品が買えなくなる、

といった、「ここはもうちょっと改善できなかったの?」と思えるような細かい部分に至るまで調整不足が見られる。
これが先述の理不尽さに拍車をかけていると言えるだろう。

そして3つ目は、もはや本年のお約束である「翻訳文」である。

本作には「ケンタ」や「ドリキャン」のような誤訳とは言えないものの、
意味は通じるが直訳感を感じてしまうような文章や、
不自然を感じるような文章がところどころに見られる。

では、例として、OPにおける主人公と両親の会話シーンを見てみよう。

『父さん、モンスターの襲撃が激しくなっています。
「大変な事になったな。村の外には出ずに気を付けろよ。
『母さんを治す薬を僕が必ず手に入れてきます。
「だめだ、お前にはまだ危ない。私がすぐに行くから出ていくなんて考えるなよ。
『でも...母さんが。
『母さんはすぐに良くなるから。もう少しだけ辛抱なさい。
「私の事は放っておいて絶対に危ない事はするなよ。

別のシーンでは、

「ここはビールがめちゃくちゃうまい
「小僧、俺がどこに住んでるのか知っているか?
『2階の家クリムおじさん、わからないんですか?
「そう、俺はおおらかなんで門を閉めて外に出ない
「でもこっそり入るな...
「時々泥棒が入ってる気がする

レベルアップ時には「LEVEL Up」と画面の上部に大きく表示された後に、

「防御力が2上昇します」
「攻撃力が3上昇します」

…というように、不自然な台詞や文章が各所に見られる。
ユーザーからの指摘を受け、流石にこれは直そうということになり、
一部の台詞は後にアップデートで修正された。

この他にも様々な迷言が「ファイソ語録」としてまとめられ、
見事に見た者をたちまち笑いの渦に巻き込んだのであった。

この他にも、類い希なる「ネタ性」も忘れてはならない。

先述のクソ要素もさることながら、本作には様々なネタ要素が含まれる。
冒頭で述べた「BGMのパクリ疑惑」や先述の「不自然な会話」だけに留まらず、
某所にて登場する、移動する足場では何故か慣性の法則が働かず「リフトだけ移動し主人公が落ちる」、
主人公が池に入ると「沈んでしまい、いきなり視点が変わってそのままゲームオーバー」、
ゲーム序盤で手に入れた母親のために持ってきた薬草を「剣を持っている手で、飲ませるのではなく渡すだけ」
偽者の国王が正体である魔王に戻り、いきなり「主人公を突き飛ばし走り去っていく」、
というように、本作には挙げ出せばキリが無い程のツッコミたくなるようなネタ要素を抱えている。

本作がここまでネットを騒然とさせただけあり、本作のクソゲーとしてのインパクトは
KOTYに取り上げられるにも十分であると言えよう。
先述のように配信停止となっていたため扱いには揉めたものの、
結果として本作も夏の怪物として話題作入りを果たしたのであった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ほぼ同時に現れた2本の夏の怪物を乗り越え、時は11月。2020年も年末が迫ってきた時である。
キャラゲー界に、とある問題作が姿を現していたのだった。

Nintendo Switch用RPG、「爆丸 チャンピオンズ オブ ヴェストロイア」(通称:爆丸)である。

そもそも爆丸とは、かつてKOTYにおいて、2007~11年までの間、
5年連続でノミネート作を出し続けた古豪「タカラトミー」が販売を手掛ける変形玩具で、
本作はそんな爆丸を題材に米国のWayForwardが開発した作品である。

そう、本作には「玩具ゲー」「キャラゲー」というこれまでKOTYにおいてクソゲーフラグとなっていた要素に加え、
本年の他の候補作からも分かるように「翻訳ゲー」という新たなフラグを兼ね備えていた本作は、
やはりスレでも検証前から見え見えの地雷として出来を危惧されていた。

また本作は、本年の候補作における唯一の「フルプライス」且つ「パッケージ販売」の作品となっている。
なお2019年にはこのいずれも一本も候補入りしておらず、
クソゲーもDL専売が当たり前の時代になったことが窺える。

年が明けてその存在をとあるスレ住民が呼び掛けたところ、
早速有志たちは2年振りに現れたフルプライスの地雷に飛び込み、早速検証を実施した。

まず、『理解困難なストーリー。』

本作のストーリーを簡単に説明すると、
主人公たちがサッカーをしていると主人公が落ちていた爆丸を拾い、
そこからいきなり企業との爆丸バトルを繰り返す。

というような一本道型となっている。
これだけならまだいいのだが、何故かタイトルにある爆丸はストーリー中盤まで一切説明がないという始末。
購入者は爆丸を知っている前提であるためそれ自体は致命的な問題点ではないのだが、
例え原作を知っている者であったとしても、理解不能に陥りかねない要素があった。

それが次の問題点、もはや本年の候補においては標準搭載のクソ要素となる『翻訳文』である。

本作の翻訳問題は大きく3つに分かれる。
1つ、「日本語として不自然な訳語」。
例として、
「秘密こそ、この黄金社会を束ねる糊さ」
「君が最後の参加者だから、問題ないさ。腹が減るってどういうことかわかるだろう、作業がつらくなる。」
バス停なのに「地下鉄の営業が再開したぞ!」

これ以外にも、女性キャラの一人称が普通に「僕」や「俺」になっているジェンダーレス状態、
爆丸の名前がアニメでは「マクサドン」だったのにゲーム版では「マックソドン」など、
安定しない表現が目を引くのである。

2つ、「誤字脱字」。
「うごく楽しかった!次はいつだ?」 
「この爆丸コントローラーがあれば、麦芽は大人より子供の言うことをきくものさ。でも、やっぱり変だ。」
何とタイトルである「爆丸」までも誤植するという噴飯物の失態を犯す始末である。
「流石にこれくらいは気付けよ」と思われても致し方ないだろう。

3つ、「そもそも訳していない」。
「I once found Bakucoins on top of a trashcan, isn’t that weird?」
「〇〇、我可以加入你的隊伍嗎?」

先述の杜撰な翻訳の前では「もはやこっちの方が意味が分かる」と思えるかもしれないが、
こんな中途半端な翻訳は決して許されるものではない。
このように、「ケンタ」にも匹敵するようなクソ翻訳のせいで、
例え原作ファンであっても混乱してしまいかねないのである。

最後に、『RPGとして見た時の問題点』だ。

「アビリティの効果説明がない」
「補助・回復技の意味が皆無」
「アビリティを発動するのに走り回ってエネルギーを集める必要があるが、単調な作業で時間がかかる」
「80種類の爆丸が使えると言っておきつつ、それは色違いで実質16種」
「一応属性相性があるけどそのバランスも崩壊している」
という有様で、結局高火力のアビリティに頼ればいいという
戦術もヘッタクレもない戦闘バランスになってしまっている。

この出来では、「こんなんでいいだろ」という魂胆を持ちやっつけ仕事で作った作品と言われても仕方がなく、
ファンアイテムとしても微妙な出来と言わざるを得ない。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

そしていよいよ12月。爆丸に先立って、スレでは本年の年末の魔物と思しき、見えている地雷が発見されて、処理に取りかかっていた。

Nintendo Switch DL専売テニスゲーム「テニス オープン 2020」(通称:庭球)である。

本作のPVを確認すれば分かるように、
「不自然なボールの軌道」
「全体的に手抜きなグラフィック」
「何か選手の動きが変」
と、PVからして香ばしさを醸し出しており、
検証の結果、さらなる香ばしさに満ちていたことが判明した。

何と本作のキャラは自動移動で、プレイヤーにできる操作は、
ただ左スティックを動かしてボールの方向や勢いを調節するだけ。
そのため返されたボールの位置や、本作に見られる当たり判定の不備のせいで
状況によっては絶対に返すことが出来ないなど、
公式が謳う「本格テニスゲーム」とは言い難い、
簡素過ぎて虚無な内容だったのだ。

公式も「プレイヤーの移動は自動なので、ボールの方向、ドロップやミドルレンジショットなどを選択するのみといった、とてもシンプルな操作方法。」と公言しているため、
一応開発側が目指そうとしたものは成立している。

だがそのシンプルさを売りにしようと追求しすぎた結果、
本作はテニスゲームの魅力を悉く潰した失敗作となってしまった。

選評者も本作を「ただ左スティックだけでボールを打ち返すだけのゲーム」とまとめ、
「ただただつまらない」と嘆かれるような始末であった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

以上5本が、本年の大賞候補となった作品である。
誤訳、虚無、システムの不備…国際色豊かなクソゲー達が勢揃いした2020年のKOTY。
2012年や2013年を彷彿とさせる世界規模のウォーゲームは、一種のクソゲーオリンピックとも言えるだろう。
そんな中、大賞という名の金メダルを授かるに相応しいと認められ、見事17代目の王者に輝いたのは…



「ファイナルソード」である。



本年の候補は殆どの作品が「翻訳」における共通の問題を抱えており、
中には「これだったら2016年の「TORO」のように翻訳すらない方がマシ」と思えるような作品もあったほどである。

しかし、どの作品も決定的な理由となる要素に欠けており、議論が難航していた。
埒が明かない審議が続く中、
「もうどれが大賞でもいいよ」
「今年は大賞なしでも良くないか?」
「ここまでグダグダならわざわざ決めなくてもいいだろ」
「いっそのこと全部大賞にしてしまえば」
といった意見もスレ内で散見された。

実際に、本年には「庭球」以外の4本のいずれかを大賞とする総評が1つは届いていたものの、
それぞれが決め手になる要素などの面から不十分であることが指摘され、選考は完全に停滞してしまい、
あるスレ住民はこの状況を「作文コンクールのスレ」と揶揄した。

だがそんな中、「ファイソ」は、他の作品にはない特殊な性質を持っていた。
「数多くのクソ要素を持ちつつも、それらを笑いや面白さに昇華させる『笑えるクソゲー』」であることだ。

これまで我々が大賞に選出してきたクソゲー、
特に「四八ショック」以降の大賞の多くは、
「つまらない、ただただ理不尽、達成感が無い、苦痛、虚無」…
そのような理由でまともに楽しめない、所謂「負のクソゲー」であった。

特に2012年の「嵐」は、あまりに難解なゲームシステムと、
どれが仕様でどれがバグか分からないというカオスっぷりから、「ゲー霧」、
2015年の「アジノコ」は、その余りにも理不尽極まるバグと劣悪なUIから、
拷問と言っても差し支えないような苦痛を醸し出し、「賽の河原」と称されるまでに至った。

本年の他の候補も
誤訳のせいで読み返すのも苦痛となってしまった「ケンタ」、
まともに出来ることがない究極の虚無「ドリキャン」、
杜撰な出来栄えでファンを失望させたクソキャラゲー「爆丸」、
簡素過ぎて楽しめなくなってしまった「庭球」、

と、これまで我々が扱ってきたような負のクソゲーであったと言える。

そんな中、「ファイソ」は、
「戦闘面における理不尽なシステム」「全体的にチープな造り」「理解不能でこそないが不自然な訳語」といった難点を持ちつつも、

「やられた後の復帰が楽」「数々のネタ要素」「戦術性や演出への手の込み具合」などの点が評価された。

その理不尽な内容、技術不足からクソゲー扱いされながらも、
独特のネタ要素やゲーム性が一部のゲーマーを魅了し、
開発側も問題を素直に認め、獲得したファンへの期待に応えようとするゲーム。
そんな本作から我々は、過去の同じような特徴を持ったあるクソゲーを思い出したのではないか?

そう、1990年代を代表する伝説のクソゲー「デスクリムゾン」…
本作もファイソと同じように、多方面に数々の問題点を抱えながらも、
そのチャレンジ精神や独創性が評価され、ファンを獲得した。

ファイソもまた、同じような経緯で人々の話題を攫い、一部では「令和のデスクリムゾン」と称する者もいる。

「ファイナルソード」は、端的にまとめると「粗は多いが笑える」タイプのクソゲー。
我々は、今までの楽しめない負のクソゲー達のせいで忘れかけてしまった、
かつての笑えるクソゲーを思い出す事が出来たのだ。

我々はそんな懐かしの笑えるクソゲー達を思い出させてくれた貴重な存在として、
2020年のクソゲー大賞を「ファイソ」に贈るものとする。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

2020年は国際色豊かなクソゲーが揃う一年だったが、日本でも動きがあった。
2008年から2017年にかけて据置・携帯・エロゲーの3部門で
延べ13本の次点以上を記録し、内4本の大賞という記録を達成した、
クソゲー界の名門「システムソフト・アルファー(SSα)」がゲーム市場から撤退、
ゲーム部門を日本一ソフトウェアの子会社である「システムソフト・ベータ(SSβ)」に継承して再始動を果たしたのである。

SSαがスレに登場して以来、「文字通りα版同然の作品」など様々な問題作を世に送り出した彼らに対して、
過去のスレでは「早くSSβに進化しろ」と言い放つ者もいたが、そんな皮肉は遂に現実になったのである。

彼らがこれまでの反省を活かし、これからも最後まで信じ続けたファンを
喜ばせるような作品を作り上げることを、スレ住民一同より心から願いたい。

また、大賞を受賞した「ファイナルソード」も、配信停止から約半年後の
2021年1月21日に「ファイナルソード Definitive Edition」として無事に配信が再開された。
HUP Gamesにはこれからも技術を磨き、人々を楽しませるような作品を作り上げてもらいたいものである。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
それでは、見事大賞を受賞した「ファイナルソード」の販売・開発元であるHUP Gamesに向け今後の期待を込めて、
同作の某シーンにおける魔王との会話になぞらえた、
我々がファイソによって受けた衝撃を示しつつ本年を締めくくりたいと思う。

 「これまでの負のクソゲーばかりで窮屈だった!!!クアアア!!!
 しかし貴様、まさかわしに笑えるクソゲーの存在を思い出させるとは...」
お知らせ
実務でも趣味でも役に立つ多機能Webツールサイト【無限ツールズ】で、日常をちょっと便利にしちゃいましょう!
無限ツールズ

 
writening