先生、お見合いするってよ2


拝啓お母様、いかがお過ごしでしょうか。
私は学園都市キヴォトスで先生をやっています。
毎日様々な問題が起きるほど大変な職場ですが、可愛い生徒達に囲まれて幸せです。
そんな私は今日、お見合いパーティーに出席することになりました。
ですがーーー
黒服『先生と結婚したいかぁ〜〜〜!!??』
みんな「「「「「「ウオォォォォォォォォォォォ!!!!」」」」」」
先生(なんか思ってたんと違う〜!!!)
話は少し前に遡る。
〜〜〜〜〜
先生「ハァ、とうとう着いちゃったよ……」
シラトリ区の一角に聳え立つ摩天楼を見上げながら私は大きなため息を吐く。
なぜならば、今日このホテルで黒服主催のお見合いパーティーが行われるからだ。
それも私をダシにしたパーティーだというのだから腹立たしいことこの上ない。
そもそも、私自身が結婚する意思もないのにお見合いパーティーに参加する意味があるのとか、お金を払ってまで参加してくれた女の子たちに初めから断る前提で会いに行くのはどうなのとか、先生以前に人としての問題が既に発生している気がしないでもないのだが……
(いや、それでも一度やると決めたからには最後までやり通すのが大人としての姿だ)
そんな覚悟にも似た気持ちで気を引き締めていると、背後から聞き慣れた声が耳に入ってきた。
???「おーい先生〜」
後ろを振り向くとそこには、私もよく知る生徒であるふにゃふにゃボイスが特徴の女の子、小鳥遊ホシノが立っていた。
しかも、その服装はいつものアビドスの制服ではなく、ピンクを基調とした白のフリルや水色のレース等の装飾が目を引く可愛らしさ全開のひらひらとしたドレスだ。
腰には白の大きなバックリボンが付いており、足には白いヒールを履き、首からは彼女の好きなクジラを模したネックレスを下げている。
加えて、ボリュームある髪もポニーテールにしているため、普段の彼女とはガラリと変わった印象を受ける。
先生「ホ、ホシノ!?どうしてここに……!?」
私が色んな意味で驚きの表情を浮かべる中、ホシノはいつものようにとろんとした眠そうな表情をしている。
ホシノ「やぁやぁ、先生。こんなところで奇遇だね〜。……なんて、先生の目的は知ってるよ」
先生「じゃあホシノもお見合いパーティーに?」
ホシノ「えへ〜、恥ずかしながらおじさんも女の子だしさ〜。それに3年生だし、そろそろ永久就職先を決めるのもアリかなって思ってね〜」
条件はもちろん私を養ってくれる人だよ〜とホシノは続ける。
ホシノがお見合いなんてものに興味を持つのが意外だが、このパーティーはそもそも黒服が私をダシにしたパーティーだ。
つまりここに来るということは……
ホシノ「……だから、今日はよろしくね。先生♪」
そう言うとホシノはホテルへと軽快に駆けていった。
その頬はほんの少しだけ朱色に染まっていた。
先生「……マジ?」
〜〜〜〜〜
ホテルへ着くとロビーの受付でパーティー会場の場所を教えてもらい、会場であるホテルの最上階の宴会場へと足を運ぶ。
黒服「お待ちしておりました、先生」
エレベーターから出ると宴会場へと続く大きな扉と受付があり、そこで私を迎えてくれたのは黒服だった。
と言っても、その服装はいつもの黒スーツではなく、白のワイシャツにカーキ色のベスト、黒の蝶ネクタイというホテルスタッフの制服姿である。
先生(認めたくないけど、コイツスタイル良いから何着ても似合うんだな……)
それと同時に黒い服を着てないのに黒服とは?という疑問が一瞬頭に浮かぶが、それはすぐさま那由多の彼方へと消えていく。
黒服「おや、私が黒い服を着ていないのに黒服とは?というツッコミをされると思いましたが……」
先生「私の頭の中を読まないでくれる?」
黒服「クックック、先生の思考を当ててしまいましたね。これは私がより先生への理解を深めたという証ーーー」
先生「そういうのいいから。はい、招待状」
黒服「……確認いたしました。ようこそいらっしゃいました、先生。本日は当パーティーをご存分にお楽しみください」
黒服はペコリと丁寧なお辞儀をすると宴会場への扉を開く。
先生(あぁ、どうか何も起こりませんように……南無三!)
〜〜〜〜〜
パーティー会場へと到着するとまず目に入ったのはその広さだった。
ホテルのフロア丸ごと宴会場として使っているだけあり、とにかく広い。
1000人規模でも簡単に収容できそうな会場には高級ホテルの名に違わない見惚れるほどの装飾があちらこちらに施されていた。
床に目線を落とせば、金色の幾何学模様のようなものが描かれた高そうな紺色の絨毯が床いっぱいに敷き詰められ、天井を見上げれば無数のシャンデリアに加え、高名な画家が書いたのであろう聖書の一場面を模したような緻密な天井画、会場の左右を見ればゴシック建築でよく見るあの謎アーチ風のガラス窓が全面に並んでおり街を一望できる造りになっていた。
先生(なんかとんでもない所に来ちゃった感があるなぁ……)
そんなどこを見ても自身の給料では手の届かないような高級品がふんだんに使われた会場を前に私は一瞬だけ場違いな雰囲気を感じ取る。
けれど、その萎縮はすぐに消し去られることになった。
???「あっ、先生〜!」ドンッ!
先生「おう……」
明るい少女の声と共に私のお腹へドンと衝撃が響く。
誰かが私のお腹へダイブしてきたようだ。
視線を下にやると明るい金髪に小さなツノと羽と尻尾を生やした少女がそこにはいた。
丹花イブキ。
万魔殿の一人であり、ゲヘナ学園でもアイドル的な存在である女の子だ。
そんな彼女が着ているのは、少し前にゲヘナで行われたパーティーで着ていたものと同じ黒いドレス衣装だ。
11歳と幼いながらもそのドレス姿は彼女を大人っぽく演出させている。
イブキ「先生、こんにちは〜!」
先生「あいたた……や、やぁ、イブキ。こんにちは」
イブキは私の腹に頭をスリスリしたかと思うとにっこりと笑顔で挨拶をしてくれた。
マコトがくびったけになるのも理解できる可愛らしさだ。
先生「こんな所で会えるなんてね。……えっと、今日は誰かの付き添い、だよね?」
イブキ「ううん、イブキはねーーー」
???「イブキ、勝手に走っちゃ危ないわよ」
そして、イブキを追いかけてとある少女がやってきた。
綺麗にまとめた白髪、大きなツノと蝙蝠のような羽、そして私が選んだ星々の輝く夜空のようなドレス、間違いようがなかった。
そこにいたのはゲヘナの風紀委員長、空崎ヒナその人だった。
イブキ「あ!ヒナ先輩〜!」
イブキは私から離れ、トテトテという擬音が似合うような足取りでヒナの下へ行く。
先生「ヒ、ヒナ!?!?」
驚きというか驚愕、仰天というかビックリ。
あの生真面目なヒナが、風紀委員長であるヒナがお見合いパーティーに来るだなんて。
ヒナ「せ、先生、驚きすぎじゃない……?」
先生「あ、いやごめん。まさかこんな所でヒナと会えるなんて思わなかったからさ……」
ヒナ「……///」
気まずい沈黙。
私は愛想的にはははと笑うも、ヒナの表情はどこかソワソワとして落ち着かないものだった。
頬もいつもより赤みが強く、羽もしきりにパタパタと動いている。
それもそのはず、ここにいるという事自体が彼女の目的を声高に証明しているからだ。
先生「そ、その、ヒナ。ええと……」
ヒナ「……せ、先生っ!私、その、今日は“そういうつもり”で来たからっ……///じゃ、じゃあ後でっ。……行こうイブキ」
イブキ「はぁーい!それじゃあ、またあとでね先生〜!」
ばいばーいと手を振ってヒナと共に会場の奥へと行くイブキ。
風紀委員長がお見合いパーティー来ていいのとか、11歳のイブキがお見合いはおかしくないのとか、色々あるけどもう既になんかヤバい気がする。
(もしかして、このパーティー知り合いしか来てないとかないよね……?)

つづく
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