雨に唄えば、?
作成日時: 2021-07-11 11:41:37
公開終了: -
昔っから私は雨に唄えばが好きだ
同級生でも知っている人は一人も見たことのない、
かなり古いミュージカル。
だが、傘を差してレインコートに身を包み
満面の笑みで踊っている様子を無心で見ていた。
その時間は何かに包まれているような感覚がした。
やさしい
なにかに、
いつも、
いつも。
-----------プロローグ-----------
ピピピッ
無機質な電子音を奏でる目覚まし時計の音が部屋に響く
「うぅ、、」
その音に起こされた私は重い頭を押さえながら起き上がる
バシンッ
目覚まし時計を止めようとしたその手が目標物ではないものに当たった。
「痛った、、。ん、?」
高校2年生の春、梅雨の暮れに
私の人生は終焉を迎える。
これは確定した未来だ。
それまでの物語をいま紡ぎ出す。
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哭目悠戯 (コクメ ユウキ)
女
高校一年の春
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いつもなら重苦しい体も、
いつもなら締め付けるような痛みの頭も、
その日の朝は不思議なことにならなかった。
そう、今日は待ちに待った高校の入学式だ。
私はついさっきまで電子音を奏でていたスマホを手にしTwitterを開けた
__義務教育完了済__
その文字を見て思わず花が開くように微笑む。
「悠戯〜はやく朝ごはん食べなさい〜」
親に呼ばれていることに気付き慌てて階段を降りた。
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いつもは家にいない母も、仕事で忙しい父も、今日は居る
「今日の朝ごはんはあんたの好きなきゅうりだからね〜」
と、とても朝ごはんと言えないような料理が食卓に並ぶ
でも好きな食べ物なので問題はない。うん。
「そーいえば時間は大丈夫なの?」と母が言う
思い出したように時計を見ると
現在8:40
“入学式9:00”
「やっばぁぁぁぁぁぁぁあっ!!!!!!」
家が揺らぐほど大きな声で叫ぶ
. .
学校は徒歩30分の所にある。自転車通学でもできるが、うちの自転車はあれなので使ったことはない
「えぇ早めに起きたはずなのに、、」
初日から遅刻とは、、
最悪だ。
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私が入学する学校は
私立万江伏高等学校(シリツ マフエ コウトウガッコウ)
元男子校で
今は共学だが最近なったばっかりで女子の割合が少ない
比率で言えば男7対女3である
県で1、2を争う程の有名進学校。
大学合格率98%
こんなすごい学校だが一つ問題がある、
それは
かなりの問題児揃いということだ。
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そんな学校をなぜ志望したのか?
その理由はこれまで受けてきた虐めが原因だ。
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小学校5年
梅雨
哭目悠戯(コクメ ユウキ)
の
カコ
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もともと人付き合いは苦手な方だった。
それでも、わたしには一人の友達が居た。
その子だけが心の支えだった、
「ゆーきちゃあーん!!」
その朗らかな声色にいつも励まされている
その子の名前は、
蘇兎舞 ミホ(ソウマ ミホ)
いつもミホちゃんと呼んでいる。
今日は何の用なのかと彼女の話に耳を傾ける。
いつも世間知らずのわたしには十分に面白い話をしてくれるのだ。
「あのねあのね〜ゆーきちゃんって“アメニウタエバ”って言うみゅーじかるって知ってるー?」
一瞬心がえぐられる様な痛みが走った
何この気持ち、
もやもやしている、、
と言う思考に走っていると
「んー?ゆーきちゃんどしたの?」
と現実に呼び戻された。
「あっ、なんでもないよ、」
「ならよかったっ!それでねそれでね〜、、。」
その時は分からなかった。この気持ちを、
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その日はずっとさっきのモヤモヤした気持ちを胸に下校した。
「ただいま、」
もはや使っている人間は私だけの家に入る。
誰もいない所為か私の思い込みが家がひんやりと感じた。
「はあ」
この家には私しかいないのに誰かに聞かせるような大きい声で溜息をつく
家に帰ってまず手洗い、うがい。
帰り道に買ったドーナツを食べる。
「ん、おいしい、」
これが日常
でも今日は、ちがう
家に帰って手洗いうがい、これは一緒。
そのままリビングに行かず父の書斎に。
いつもと違う日常。つまり「非」日常
書斎の真ん中のまるで砦のように構える机
椅子に座ってその机の真ん中にあるパソコンに手を伸ばした。
手慣れた手つきでパスワードを解除しミホちゃんの言っていた
“アメニウタエバ”
んーを検索するつもりだった。
つもりだった。
急に頭痛が来た
これまでに感じたことのないような鈍痛が走る
「なに、っこ、、れ、?」
今起こっている状況が飲み込めず思わず涙が流れた。
そのまま私の意識は闇の中に入った、、
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【砦】
戦うための場所ではない。
砦は守る為の場所、
それは何を守ろうとしたのだろうか
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起きると周りは真っ暗だった。
さっきの痛みを引き継ぐように頭がじんじんと痛み出す。
「なんだったの、?さっきのは、、、」
思わず首を傾げる
「そういえばなにしてたんだっけ、、?」
あっそうだ、
と思い出す。さっき私は“アメニウタエバ”を検索しようと思っていたのだ。
痛む頭を抑えて立ち上がり、パソコンの前に座った。
もう一度“アメニウタエバ”を検索しようとする。
必要な文字を打ち、Enterキーを押す。
今回はなにも起こらない、。
さっきのはなんだったのだろうと不思議に思っていると、急にパソコンから音が流れ始めた。きっとマウスを間違えて押して動画が流れ始めたのだろう。
その動画の内容はミュージカルだった。
ミホちゃんの言っていた“みゅーじかる”、。
題名は
「雨に唄えば」
次々に現れる人
色とりどりの傘、
沢山の人の笑い声、
私は惹かれていった。
その動画が終わるまで、私は食い入るように画面を見ていた、。。
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