【閲覧注意】 アレクセイ・コノエ×アーサー・トライン


目の前には、まぁ…随分とくつろぎやすそうな一室と変わっていた。大の大人が三人ほど入って余裕と言えるほどの広さで、小さめの本棚には青少年が好む書籍に家庭用ゲーム機を繋いだ小さめのテレビ。折りたたまれた雀卓、床に積まれた雑誌は成人向けのやつだ。さらには小型の家電に、まさかアレは…ルンバかぁ…。
ちらり、と隣で随分と静かな副長を見やれば、普段通りの人当たりの良い笑みを浮かべている。
しかし、雰囲気は反対にひどく冷たいものだ。彼はつい先ほど、アスカ大尉をはじめ苦手とされたキラ准将にさえ、げんこつ入れるほど怒っていた。弁解させてもらうが彼もこの状況を理解する心の広さはある、だが…さすがにここまで大きく改造しさらには今回は三度目。仏の顔も三度まで…今後、彼を怒らせたくはない。
今回もあのアルバートも関わっていた。ここらに設置している家電のほとんどは、アルバートが片手間に関わっている。
あの小僧が、いい歳であろうに。今年は三十歳だろう…。
「はいはい、それではアスカ大尉たち…撤収するように」
「うぇ、うぇ…お、俺たちの秘密基地ぃ」
「シン、手を動かせ…うう」
「おい、シンとレイ…副長、血管出てるから黙ってくれ」
三度目の撤去作業をすればさすがに慣れてきたのだろう、手際が良いが…。この調子なら、またやらかすだろうな。とは言え、せめて監査が来る前にやってほしいのだが…今回はそのギリギリまで撤去しないでいる、監査まであと一週間。
彼が怒るのも無理はない。

ガン、と少しばかり撤去したものが入った段ボールを乱暴気味な置き方をし、艦長室に荒んだ声が響く。今日はいつにもまして荒れている。
「もう、あれだけ監査来るよって言ったのに!」
「スクランブルが多かったからな、撤去も難しいのは解るが…」
「甘やかさないでくださいよっ…あ、し、失礼しました」
「いや、私もちょっと甘やかしすぎたとは思っているよ」
確かに、私自身もあまり酸っぱく言わないでいたのも要因だ。艦長である以上、ここの責任者は私だ。副長にここまで言われては、立つ瀬が無いし反論が出来ない。
それは、それとして…すまん、ちょっと君の怒った反応が新鮮過ぎて、口元が緩みそうだ。
押収した物品たちを分類わけし、さらには家電の方もまとめて艦長室の端においておく。段ボールは後、五個ほど使用されており…前回より多い。
「…えっふん、まったく…シンたちめ、それに…ぉ、ぉお…えっぐ」
段ボールの中を整理していると、副長が引き気味の声を上げた。気になり振り返ると、そこには成人向け雑誌をまじまじと見て、顔を赤らめている副長が居た。まぁ、彼も男なのは充分に知っているし、鼻の下を伸ばすのは理解できる、と言っておこう。
だが、いただけん。
「副長、手が止まっているぞ」
「あ、はい!……」
返事をそこそこに、作業を再開する。
黙々と作業を進め、ようやく終わりの目途がついて…終わった。肩が張るし、首も凝る…まったく、アルバートも随分と余計なことを。
「ふう…これでいいか。あとはアプリリウスでこの押収品を倉庫に放り込まなければならんな」
「そうですね。…はぁ、まったくあいつらは……」
ちらちら、とまとまった雑誌に視線をやる副長。
…そんなに気になるか、あの雑誌が。確か、あの趣向は…以前見たことがあるな。フラガ大佐だった気がする。ラミアス艦長にでも報告しておくか、…別に、うちの片翼の興味を引かせているなんぞ思っていない。
いや、雑誌ごときで嫉妬するとは呆れるな。しかし、どうも写真の女に負けるのは、癪に障って仕方ない。
「あ、アレクセイ…さん」
「なんだ」
「……その、やっぱり何でもないです」
「なんでもなくはないだろう」
…少し、不機嫌なのが自分でも理解できる。
副長、アーサーは意を決したかのようにまとまった雑誌の中の一冊を手にする。先ほど、あの反応を見せていた雑誌だ。
パラパラとページをめくり、あるページのところで手が止まる…そうして、深呼吸を数回繰り返しこちらを向いた。
「僕は、女じゃないです」
いつになく真剣な顔だ。それに、ごく当たり前なことを話しだす。なんだ、…確かに私も大人げなかったが。
「…うん?そうだな、君は男だ、な」
「でも、ちょっと趣向を変えた方がマンネリ解消すると思うんです」
「……うん??待ってくれ、なんの話だ」
待ってくれ、マンネリ?なんの話をしているんだ…せめて、主語を話してくれ。
こちらが混乱しているのをよそに、アーサーは手にしていた雑誌を私に向け差し出す。そこには…うん、私でも引くぐらいのえぐい下着を着た女性たちの特集があった。これってほぼ紐だけじゃないか、こんなの裸体と言ってもいいぞ。
まさか、女性を交えて…絶対に嫌だ。情事の時に私以外のまがいものを混じらわせたくない。彼が女を欲すると言うなら、…許すつもりはないんだが。
「ど、どれがいいですか?」
「アーサー、私は」
「どの、下着が良いですか?」

は?

「した、ぎ?」
「お、男の下着だとつまらないでしょう?ちょっと、女装っ気もあったら…なんて」
「……は?」
ま、まさか…マンネリって情事のことを言っているのか?それに、情事で着る用ってことは…アーサーが、この下着を身に着けるという事だろう。…本気か?そんな事すれば、私の理性が吹き飛んで外に、人前に出させない自信がある。君が嫌がっている痕も存分につける気でいるし、所有印はハッキリとしたほうが良い。
いや、まぁ…アーサーはガタイが良いし、筋肉が薄いわけじゃない。鍛えられた成人男性の背格好で、あの雑誌に載っていた女性用の下着は、いささか…と言える。
それでも、こちらの飽きを起こさせないようにするなんて…随分と健気でいじらしい。
「き、気持ち悪いですよね!?やっぱり何でもないです!!忘れてください!」
私の反応がダメと判断したのか、ぐるっと勢い良くこちらに背を向け雑誌を元に戻し、艦長室を出ていこうとする。
「アーサー」
「は、はいいっ!」
「…ここだけの話、ラミアス艦長とフラガ大佐は大分イイ趣向をしていてな。こういった下着は、フラガ大佐は着衣済みだ」
「はえ?…え??」
「この、雑誌だったな」
私は無雑作に一番上に置かれた雑誌を手にする。ぱらぱらとめくり、目に留まったページを開きアーサーに見せる。そのページはアーサーが見せた先ほどのより大分控えめながら、デザインが凝っていて上品な刺繍が施されたものばかり。特に、このページは花をコンセプトにしたデザインで、サクラやリンドウ、それにスイセンなどあしらわれている。
あの紐も良いが、私はこっちがいい。私の好みが大きいが、アーサーに着さすならこちらのほうがあの過激さを半減してくれる。
「え、あ…」
顔を真っ赤に染め上げ、言葉に表せていない。まさか、反応するとは思っていなかったようだな。

「私は、これならどれでもいい」



「フラガ大佐、これをお返ししますよ」
「お、おう…あっちゃー、向こうにおきっぱだったか」
「今後の管理はしっかりしてください」
「了解っと…コノエ艦長、これいります?」
「いいえ、それはあなたのでしょう。フラガ大佐」
「そりゃあ、失礼……(ほぼ半分ほど付箋張ってマーク付けるほど、気に入っているくせに)」
「そうそう、ラミアス艦長が気に入っているものも入っているので、ご参考までに(フラガ大佐“が”着る用ですが)」
「へぇ…マリューがねぇ」
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